しあわせ

 わたくしの縁談がまとまらないことに

 鬱積をつのらせていたのは、

 どなただったのでしょう?


 かように奇特な方がおみえになったと致しますれば、

 わたくしに何をさせたかったのでしょう。


 女の幸せは契りを交わし 子を生み育てることとお思いなのでしょうか。


 かの「光の君」さまは、

 女の幸せは男に愛されることだとおっしゃったとか……



 わたくしは、

 母の顔も知りませぬから、その正解がわかりませぬ。

 

 父の居場所も存じておりませぬ。


 それでも、

 かように何不自由なく暮らしていけることを感謝こそすれ、

 誰かからうとまれた存在であるとは

 露とも思いはしなかったのですわ。






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