第拾話 クラス編入
「ふう」
学園への入学手続きを済ませたウツギは、男子寮の自室にあるベッドに正面から倒れこんだ。
ウツギに用意された寮の部屋はウツギが平民であるにも関わらず、個室であった。その理由はウツギが
ウツギはゴロリと寝返りをうって自室の天井を見つめながら、ツバキに再開した時のことを思い出す。
「ツバキ、怒っていたな……まあ完全に僕が悪いんだけど」
ツバキがウツギに向けた目は完全にウツギのことを見下している目であった。しかしながらウツギの呼びかけに反応したところを見ると、ウツギのことを意識しているということでもある。
「う~ん、どうやったらツバキと仲直り出来るのかな?」
ツバキは単純だからプレゼントとか送ったら許してくるかもしれない、はたまた逆にツバキを煽って反応を見てみるか?
ウツギの頭の中はツバキのことでいっぱいになる。それはまるで恋する乙女の様――いや、そこまでロマンチックなものでもないが。
「やっぱり素直に謝るのが筋だよね」
そう結論付けたウツギは眠りについたのであった。
◆
翌日の朝、ウツギは自身が編入されたクラスの教室前で深呼吸をしていた。
ウツギが編入されたクラスは2年S組、通常であれば学園へ入学した者は皆1年生からスタートするのであるが、ウツギはどういうわけか2年に編入されていた。
そのことをウツギも疑問に思いアカネに訊いてみたのだが、アカネからの返答は
「ウツギ君の保有スキルを鑑みた結果です」
と、あまり要を得ない返答であった。
「担任の先生は呼ぶまでここで待ってろって言ってたけど……」
そうウツギが呟いたその時であった。
「編入生!入っていいぞ」
男性の担当教諭からの呼びかけがあり、ウツギは恐る恐るドアを開けて教卓の前まで歩いて行く。
「こいつが今日からこのクラスに編入したウツギだ。ウツギ自己紹介しろ」
「はい!今日から皆さんと同じクラスになる。ウツギと言います。角は無いですが一応鬼人族です。皆さんどうぞよろしくお願いします」
そう自己紹介して深々と礼をするウツギ、そうするとまばらな拍手がウツギの耳に届いた。
あれ?あまり歓迎されてない?
そう思いながらウツギが頭を上げると、その目に教室全体が目に入る。
「あれ?人が少ない」
ウツギの目に写ったのは生徒が10名ほど、思ったよりも少ない生徒数にウツギは困惑する。
すると、困惑するウツギをフォローするように担当教諭が言う。
「このクラスは特待生だけで構成されてるからな。生徒数が少ないのはそのためだ」
「なるほど」
ウツギはクラス内を見回してみる。生徒は鬼人族が半数を占めているが獣人族や人間族の姿もある。
そしてその中にはツバキの姿もあった。ツバキは窓際の席に着いており、頬杖をつきながらつまらなそうに窓の外を見ていた。
「先生、僕はどの席に着けばいいのですか?」
「開いてる席は腐るほどあるからな、好きな席に着いていいぞ」
「わかりました――」
ウツギはまっすぐとツバキの横の席を指差す。
「あそこの席が良いです」
「な!?」
ツバキが驚いた様にウツギの方を見る。すると担当教諭がツバキに向かって語りかける。
「どうしたツバキ?ああそう言えばお前らは同郷だったな。だったらツバキがしばらくの間ウツギの面倒を見てくれ」
「どうしてあたしがこんなヘタレの面倒を!!」
「なんだお前ら仲が悪いのか?」
「「いいえ(悪い!!)」」
「どっちだよ」
「「悪くありません(だから悪いって!!)」」
ウツギとツバキの正反対の反応に、担当教諭はため息を一つ吐く。
「面倒だからあまり問題は起こさないで欲しいんだけどな。なあウツギ他の席にしないか?」
「いいえ、あの席が良いです」
「どうしてもか?」
「どうしてもです」
「ツバキはどうだ?」
「ぜっっっったい嫌だ!!」
担当教諭が再び長い溜息を吐く
「お前ら、どうしても譲る気はないんだな」
「「はい!(おう!!)」」
「こういうところは意見が一致しやがって――だったら二人には鬼人族らしく決めてもらうしかないな」
「鬼人族らしく…ですか?」
ウツギが担当教諭の方を向いて言葉の真意を尋ねると、担当教諭はニヤリと怪しい笑みを浮かべながら言う。
「鬼人族と言えば決闘だろ」
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