第16話 夜は、寝れない……
裏路地の奥は凄惨な光景だ。首の跳ねられた男の死体が二体。
飛び散った血で周囲は赤黒い液体に濡れている。
「そんでもって、この状況どうするよ……」
明らかに事件があったのがバレてしまう。
しかも、この手口から言って一番疑われるのはニコラに違いない。
と言うか、推理の必要もない。だって本当に犯人はニコラなんだもの。
「ああ、大丈夫。領主はアンデッドの魔石さえ回収してあればそういうのは気にしません。こういうのは日常茶飯事ですもの」
モディはあっけらかんとそう言いだした。殺人事件よ?
私は乱暴されかけて、お金も取られたんだけど?
しかも、一度本当に死んだみたいだし。
むろんこの光景で私はげぼった。血生臭いもう帰りたい……
「街中にアンデッドが出なければこの世界の人間はそんなことには関心はありませんよ。自分の身に危険さえなければ他所の心配をしていられるほど余裕がないのです」
落ち着きを取り戻しつつあるニコラは私を抱きしめたままそう言う。
「自己防衛は基本ですよ。街中で殺しをしてしまったら衛兵に言うのは規則ですが殺しそのものにはそこまでの罪はありません。
「おう、この町も相当に狂っていやがる」
「これに懲りたら一人にならないことだね」
モディの言葉に思わずうなずく。
賊たちは首を切ってるのに体だけがモゾモゾ動いてニコラに寄っていく。
とてつもなく、きもい。即座に
「魔石化させると死体も灰になるのか。完全犯罪だな……」
私ぐらいの小さい女の子でも遺体の処理に困らないのだ。
アンデッドの処理にさえ困らなければ平気で殺しができてしまう。
でも、この世界ではこれが普通。恐ろしいことだ。
「さてと。一応衛兵には伝えて帰ろうか?」
モディは何事もなかったように歩き出す。
裏路地は血まみれのままだけど、それは衛兵に任せていいらしい。
ニコラは私を抱きしめながらとぼとぼとついてくる。
「これはこれは剣姫……」
「ど、どうされました。血がついているようですが?」
衛兵の詰め所に行くと中にいた兵士の人たちが慌てだす。
ニコラは今日は珍しく返り血にまみれている。
見る人みんながぎょっとしていた。
ニコラが怪我を負ったと思えば皆が戦々恐々だ。
自分たちの敵う相手ではない。そう、自分が一番大事な世界。
今日のニコラの様子は明らかにおかしい。
調子が悪そうなのはチャームの影響下にあるだけじゃない気がする。
「はあ、なんかすっごく疲れた。でも寝られそうにないな……」
今宵も多分、
それぞれ思うところを胸に秘め家路についた。
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