第98話 共同戦線(上げ直し)
ミスって消しちゃったんで、上げ直しっす。
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「———全く……お前もやっぱり馬鹿だな」
俺は、少し前で剣を構えつつキッと教皇達を睨む蒼炎の鎧に身を包み、真紅と蒼炎の入り混じった翼を背中に生やしたエレスディアを眺めて苦笑を零す。
ハラハラと幾百もの炎の羽が宙を舞い……その1つをそっと手に取った彼女は俺と同じく苦笑を零して肩を竦めた。
「貴方の隣に立てるなら……もう馬鹿で良いわ」
「お、言うじゃん。それなら———ようこそ、こちらの世界へ———とでも言っておこうかね? 歓迎するよ」
「嫌な歓迎ね。でも……嫌いじゃないわよ」
そうクスッと無邪気な笑みを浮かべたエレスディアだったが……直ぐに表情を一変させて教皇へと挑戦的で不敵な笑みを浮かべた。
「ごめんなさい、貴女の誘いだけど……お断りさせてもらうわ」
「……フフフッ、フフフフフ———面白い。まさかこんな展開になるとはな。私の見立てではお主の再起は有り得ないと思っていたんだが……」
心底可笑しそうに不気味な笑い声を上げつつ口元を袖で隠す教皇。
予想外だと言っておきながらこの落ち着き様からして……どうやらよっぽど自分の力に自信があるらしい。
ただ———復活したウチの相棒も負けていなかった。
先程までの姿は一体何処に行ったのかと思わず聞きたいくらいに強気な姿で堂々と教皇に相対すると。
「貴女は年を取りすぎたのよ。誰が1番危険か、誰を1番この場に引き寄せてはならないか……それを見誤った貴女はね」
「……言うようになったではないか、エレスディア」
「あら、知らないの? 子供は成長が早いのよ? それに……私は貴女と違ってまだまだ若いもの。それこそ無限の可能性を秘めているのよ」
笑みを止めて少しつまらなそうに言う教皇へ、小馬鹿にした様子でいつも通りとんでもなく鋭い口撃で強襲するエレスディアの姿に———先程から終始黙っていたスラングがボソッと呟いた。
『……あの女、本当にさっきまで泣いていた女かァ……? あれはどう見ても別人じゃねェかよォ』
『フッ……分かってないな、スラング。吹っ切れた時はな、テンションとか恐怖心とか人間が死なないために必要なモノがバグるんだよ』
『ケケケッ、テメェと同類が完成したってわけか』
『ま、そういうこった』
何てスラングと胸中で会話を繰り広げたのち、俺は気を引き締める。
ここからが正念場だ。
事実として、エレスディアが加わった所であのクソ野郎と序列1位に勝てる見込みはまだまだ低い。
教皇の強さは言わずもがな、序列1位も俺が本気を出してやっと渡り合えるレベルなのが痛い。
「ま、もしもの時は何とかするか」
『アレはしたくねェな』
「それな」
俺は今後のことを思って顔を歪めたのち、直ぐ様表情を切り替えつつ軽い足取りでエレスディアの隣に並んで肩に手を置いた。
「ほら、憂さ晴らしはこんくらいにして終わらせようぜ? 俺、着々と制限時間来ちゃってるのよね」
「そうね、さっさと終わらせるに限るわ」
その言葉が———戦闘再開の合図だった。
同時に飛び出す俺とエレスディアの身体が風を切り、空間を跨いで一息に教皇達との距離を縮めると。
「「———【一刀両断】ッッ!!」」
俺達は、刹那の間に2人を挟み込むように左右から剣を振るった。
真紅の炎と蒼炎に装飾された銀に輝く刀身が教皇の首を狙い、漆黒と白銀のオーラが纏われた鈍い光を放つ刀身がおっさんを狙う。
二振りの剣はまるで吸い込まれるかのように目標へと向かい———。
「【空絶】」
———スパッッッッッ!!
………………は?
俺は、思わず目を疑った。
直撃すると思ったその瞬間に———剣が腕ごとバラバラに切断される光景が目の前に広がっていたのだ。
しかも俺だけではなくエレスディアまでもが腕を輪切りにされていた。
「くうぅ……ッ!? 見えなかった……!?」
直ぐ様腕を再生させつつ、明らかに動揺した様子で目を見張るエレスディア。
どうやら彼女の姿からして、腕と剣を斬られた瞬間が見えなかったのは俺だけではないらしい。
「チッ……今度は不可視不感知の攻撃かよ……とことんクソゲーだな、くそったれ」
「ゼロ、剣ってあるかしら!? 私の剣が斬られちゃったわ! お気に入りで、手入れまでしていたのに!」
「……お前、意外と余裕そうだな。ホントさっきまで泣いてた奴とは思えんね」
幾つものブロックに切り分けられた剣を指差しながら涙目で嘆くエレスディアの姿に、俺は呆れとも尊敬とも呼べる何かを向ける。
ただ、これくらい気負わない方が良いのかもしれない。
「さて、俺もいっちょ頑張りますか」
当の本人が軽い様子なのに肩透かしを食らった俺は小さく笑みを零したのち、着地と同時にグググッと足を曲げる。
更に一点に身体強化を重ね掛け、足のバネを使って一気に跳躍。
———ドゴンッッ!!
爆発したかのような轟音が聞こえたが———既に遥か後ろ。
俺の身体は既に序列1位のおっさんの眼前に迫っていた。
更にいつの間にか俺の右手には白銀の剣が握られている。
「【空ぜ———」
「させるかよ……ッ!!」
———【閃剣】。
俺はおっさんが言い終わるよりも先に、既に準備していた剣技を開放。
横一文字に一条の閃きが瞬き、おっさんの口元を掠める。
その際、おっさんの表情が気怠げな表情から驚愕一色に染まり切っていた。
「……っ、もう気付いたの? 俺が唱えないと使えないって……」
「や、別に。俺が一瞬で気付くわけ無いじゃん」
俺が立てた対策はただ1つで、何なら全く捻りの欠片もない対策とすら言えない代物でしかない。
「お前が何かする前に、その行動を封じれば良い。簡単だろ?」
「……はっ、とんだ小僧だぜッ……バケモンだな」
「テメェに言われたかねーな」
俺は乾いた笑い声を上げるおっさんへと間髪入れず、剣を閃かせる。
しかし不可視の攻撃は防げたものの、此方としても倒す手が無いし———
「———フフフッ、さっきまでの威勢は何処に行ったのか聞いてもよいか? 私の袖にも触れられておらぬではないか?」
「くっ……うっさいわね……!!」
何よりエレスディアの方がヤバそうなのだ。
現にエレスディアはある一定の範囲内に一向に入れないでおり、教皇に良いように弄ばれている。
「もうっ……一体どれだけ攻撃手段があるのよ……!!」
エレスディアが背中の翼をはためかせると共に、幾十もの炎の羽が無差別に解き放たれると、その8割が教皇の下へ一直線に飛翔するが———まるで何かに阻まれているかのように速度を落とし……やがてポトリと地面に落ちて真っ赤な炎柱を上げる。
教皇へは1つも届いていない。
……てかそんな強そうな攻撃出来たんだな。
何て相変わらずなエレスディアの天才具合に呆れていると。
「———【空絶】」
『下がれ』
「!?」
再び凶悪な技名が俺の耳朶を揺らすが……その時には既に時遅し。
何とかスラングの言葉で飛び退いたものの、顔面の一部と足の脛部分までが音もなくバラバラに斬り刻まれる。
「チッ……」
「よそ見なんかしてるからそうなるんだよ〜」
『ケケケッ、面倒な力だぜェ』
俺は空中で半回転しつつ、地面に手を付き足が再生すると同時に足で地面を捉える。
直ぐ様キッと前方を睨めば———おっさんの顔が目の前にあった。
「少し眠ってて貰うぜ?」
ニヤッと無精髭の生えた顔が歪む。
しかし、同時に俺も笑みを浮かべた。
「———お前がな」
そう言いながらガシッとおっさんの口を左手で掴むと、困惑の色を灯すおっさんへ答え合わせをするかの如く、何の前触れもなく唐突に顔をズラす。
それと時を同じくして耳元にヒュッと風を切る音が奏でられ———おっさんの眉間に蒼炎の羽が突き刺さった。
———ゴォオオオオオオオオオッッ!!
俺に口を塞がれたおっさんは例の技も使えず、羽がチリッと音を立てた瞬間に一瞬で人の身体など消し炭にしてしまう程の火力を持った蒼炎の柱が天に昇る勢いで噴き上がり、そのままおっさん諸共呑み込む。
こうして、代行者最強たる男は油断という強者の天敵によって自ら身を滅ぼすこととなった。
もちろん口を塞いだ俺の腕も。
「あぢぇええええええええ!?!?」
「ちょっ、何で手を離さないのよ!?」
身体進化に更にスラングの漆黒オーラで腕を保護しているにも関わらず腕から伝わる強烈な熱さと痛みに俺が絶叫を上げ、羽を飛ばした張本人であるエレスディアが驚いた声を上げるが……俺は涙目で叫んだ。
「いやだって離したらあの技使われるじゃん! それだったら意味ないじゃん!」
「だからって……」
呆れた様子で眉間を揉むエレスディアと相変わらず叫ぶ俺へ、蚊帳の外だった教皇が一気に魔力を膨れ上がらせ———。
「よそ見は禁物———」
天より今まで見たモノの数倍は広範囲の蒼白の雷撃が迫るが———。
「「———して
そう声を張ると同時に剣を振るい———【飛燕斬】を放つ。
俺は右手に持った白銀の剣で。
エレスディアは左手に持った真紅の炎で形作られた剣で。
———ズシャアアアアアアアアッッ!!
放たれた白銀の斬撃と真紅の炎の斬撃が空中で蒼白の雷撃にぶつかる。
一瞬の拮抗の後、どちらも爆散。
爆風が辺りを掃除するように吹き、少し遅れてスパークと火の粉が降り注いだ。
「うっ、うっ……腕が消し炭になった……」
「……わ、悪かったわね……まさかアンタまで巻き込まれるなんて……でも———」
俺が先程味わった強烈な痛みを思い出して顔を歪めて言えば、エレスディアが気まずそうに謝罪の言葉を口にすると。
「———これで後はアンタだけよ、教皇」
雷撃と俺達の剣技がぶつかったところを呆然と眺める教皇へと視線と剣の切っ先を向けた。
同じく俺もクソ野郎へと顔を向ける———と同時、突然、教皇が顔を手で覆ったかと思えば。
「フフフッ……フフフフフフフフフッ……!!」
必死に抑えようとしたが漏れてしまったというような不気味過ぎる笑い声を上げ始めた。
その様子に俺達は眉を顰めるも……直ぐに全身を強張らせた。
———教皇から膨大な灰色の神力が溢れ出したから。
彼女の身体から発せられる神力の量は……嘗て戦った姉御の比ではなかった。
灰色の神力がこの武舞台どころか見える範囲全てを覆い、まるでこの空間の空気を支配したかのように重くする。
「おいおいマジかよ……こんなんチートだろ……」
「…………」
俺はあまりの壮大さに乾いた笑みを零し、エレスディアが更に眉間に皺を寄せ、ギュッと剣を握る手に力を込めた。
そんな俺達へと、教皇が笑みを深める。
「フフフッ、御遊びは此処までにしようか。これからは———世界最強の力をその身に味わうとよい」
そう言ったと同時———俺の耳に1つの言葉が聞こえた。
———【神体降臨:
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どうもあおぞらです。
まず1週間弱の間お待ちいただきありがとうございます。
それと1つ報告なのですが、これからは2日か3日置きに投稿しようと思っています。
まぁ書籍化も決まっている手前、更新を途切れさせることはしません。
なので、これから投稿頻度は減りますが……今後ともよろしくお願いします。
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