第20話 講談1・お力(19)

一葉の真の宝と云えばこれら文学仲間や歌塾・萩の舎における歌人仲間であったと見ます。それであるのにその生甲斐とも云うべき彼らとの関わりを損なうことは果して彼女、一葉にとってはどれほどの痛みであったでしょうか。暮らし行く金銭を得るためだったとは云え、かかる不本意な事態の出来によって人望を損ない(魂の?)理想境とも見ていた職業作家への指向も色褪せ、心も萎えてしまったことでしょう。これを順番に並べますと現実・魂・心となり、この3つがすべて崩壊しかねなかったのです。先に掲げた目指すべき〝魂と心と現実の一致〟が不本意にも、魂が持つ光と陰の2面のうち陰の側で結実しかねなかった。そしてこれが、実にこのことが、先に掲げた〝さらなる失意〟が必要だった…という事態に当たるのではないでしょうか?これはその…貧しさに歯を食い縛って生きて来た一葉の全人生をすべて否定されるような大失意であった分けです。つくづく一葉は「ああ、わたしという女は…」という失意のドン族に落ちたことでしょうが、しかしわたしはまさにこのとき、一葉の魂の光の面が不死鳥のように甦り、剰え陰を消し去って心に、現実世界に、その溢れるばかりの光を浸透させしめたのだと、そう確信しております。えー、なぜかと云うに、そのう…分を弁ぬ大逸れた話で恐縮なのですが、実は、この卑小極まるわたくし奴が、その折のことを〝体験〟しているからなのです。その折り、一葉女史の身体が感涙に咽び、震えているのを今でもこの両手がしっかりと記憶しております。はい。ンな馬鹿な…と思われる方が大方でしょうが、まあ、そうおっしゃらずに、ひとつ、次なるURLをご確認願えないでしょうか。(次ページへ!)↓

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