第11話 暖かな日々
日常が戻りつつある学園で、ウイルスの危機から立ち直った後も、宮本と斎藤の間には特別な絆が生まれていた。学園の桜が満開を迎えた頃、暖かい陽射しが校庭を包み込み、青春の香りが漂う季節が訪れた。
宮本は、毎日が新しい発見と学びの連続であったが、特に斎藤との時間が貴重であることに気づいていた。二人は時折、校内のカフェテリアで軽食を共にしたり、放課後に散歩をしたりすることが多くなっていた。
ある日の午後、宮本は校庭の桜の下で斎藤を待っていた。斎藤は約束の時間に少し遅れることが多かったが、それも彼の忙しい日常の一部であると宮本は理解していた。しばらくして、斎藤が小走りでやってきた。
「遅くなってごめん、宮本くん」斎藤は息を切らしながら笑顔で謝った。「予想以上に手術が長引いてしまって」
「気にしないでください。それより、今日も桜がとてもきれいですね」
宮本が指さす先には、満開の桜が広がっていた。斎藤はその景色に見入った。
「本当に美しいね。こういう時、何もかもが素晴らしく感じる」
宮本はうなずきながら、斎藤の隣に座った。「先生とこうしてゆっくり桜を見られるのが、最近の楽しみです」
斎藤は少し驚いたような顔をしたが、すぐに微笑んだ。「僕もだよ、宮本くん。君と過ごす時間が、何よりの安らぎだ」
その言葉に、宮本は心が温かくなるのを感じた。桜の花びらがひらひらと舞い落ち、二人の周りに優しい春の風が吹き抜けた。
「斎藤先生、私たち、こうして一緒にいる時間がもっと増えるといいな」
宮本は静かに言った。斎藤はその言葉に応えるように、優しく肩に手を置いた。
「もちろん。これからも、一緒にいろんなことを共有していこう」
その時、宮本はふと気づいた。斎藤との時間が、単なる友情を超えて、深い感情をもたらしていることに。桜の花びらが二人の間に降り注ぐ中で、宮本はその想いを心に刻んだ。
「斎藤先生、これからもよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
二人は笑い合いながら、春の陽射しの中でさらに深い絆を築いていくことを確信していた。桜の下で交わした約束が、これからの彼らの青春を彩り、これからの人生を共に歩むための第一歩となった。
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