異世界転生したオタク、本気で鬱展開無しの魔法少女を育てる〜悪の組織と魔法少女達を束ねたら、魔王軍の戦力を超えてました〜

ネリムZ

第1話 さらばアニメ、さらばオタク文化、初めましての魔法

 誰しもが経験した事はあるが記憶に残らないのはなーんだ?


 そんな質問が来た時大抵の人は何と答えるだろうか。


 僕はそうだな。少なくとも、産まれた瞬間は除外する事となる。


 「おぎゃあ?」


 産まれると言う感覚が鮮明に感じ記憶に残る。突き刺すような光が意識を覚醒させて行く。


 僕はオタクで平々凡々な社会人生を送っていた。


 だと言うのに⋯⋯綺麗な女性に抱っこされて手を伸ばせば肌に触れられそうな程に近い距離にいる。


 伸ばす手を見れば⋯⋯赤子のように小さい。


 僕はオタクだ。アニオタだ。だから分かる。分かってしまう。


 これは⋯⋯転生したのだと。


 父と思わしき豪奢な格好をした男が僕を愛おしそうに見下ろす。それは僕を抱っこしている母と思わしき女性も同じだろう。


 何か二人で会話している。きっと子供が無事に産まれて喜んでいるのだろう。


 何故憶測のように語っているかと言うと、日本語では無いからだ。

 何言ってるか分からん。


 まぁいいさ。


 大人になったら僕は日本に永住する。アニメ文化最高!


 ここで素人諸君は異世界転生、と考える人が大勢いるだろう。


 だが僕は違う。僕はここが異世界だとは微塵も思っていない。


 何故か?


 先程語った突き刺すような光、それが電球による光だからだ。


 文明の進んだ異世界は異世界であらず。ここは現代で間違い無し。


 なので僕は前世の記憶を頼りに学習し、日本に永住する準備をしようと思う。


 2週目だろうと何も変わらないさ。だって人間だもの。変わりはしない。


 ⋯⋯その、はずだった。


 数日後、外に出られた。


 地球の文明が遥かに進んだ未来に転生したのか、空を飛ぶ船やら車がある。SF世界だ。


 驚きはしたが、納得はしよう。

 

 今は空を飛ぶ車で、アニメ文化が廃れてない事を祈りつつ我が家へと向かっている。


 地上にも人や車はあるが⋯⋯きっとこの飛ぶ系は富裕層向けなのだろう。

 数が地上と比べて少ないし⋯⋯何かハイテクだからね!


 我が両親は見るからに金持ちのボンボンだったしな!

 金持ちが乗る車ぞ? 高級車で間違いなし!


 いやーイージー人生っすわ。勝ち組勝ち組。

 最高ですわ。


 そのまた数日後、言葉が理解できるようになった。


 そして新たな発見をしました。


 電気などがこの世界には存在せず、全てのエネルギーが『マナ』と言うエネルギーで完結していると言う事だ。


 オール電化ならぬオールマナ化だ。意味分からんな。


 眠らせるための読み聞かせの時に僕は『マナの三原力』と言うマナの基礎を教えて貰った。


 一つ、不可視の周辺のマナを操る力、『念動力』。

 二つ、マナを集めて圧縮する力、『収束力』。

 三つ、マナに形を与えて具現化する力、『魔法力』


 最後の文言で察しの悪い人でも気づけると思うが、この世界には魔法が存在するらしい。


 実際に仕様人が風の魔法で掃除をしているところを目撃している。


 まぁ、あれだな。

 ここは現代でも無ければ未来でも無い、異世界と言う事である。


 テレビとかあるし、アニメもワンチャンあるかもだが⋯⋯日本アニメのクオリティを出せるとは正直思えない。


 生きる希望と活力を失い、やる事の無い赤ん坊の僕は魔法の練習をする事にした。


 まずはマナを感じ取らないと始まらない。

 目に見えない物質をどうやって感じ取るか⋯⋯普通なら師匠などが必要らしい。


 だが、赤ん坊の直感を舐めるでは無い。大人や普通の人が分からない『何か』を赤ちゃんは稀に感じ取れる。


 その赤子特有の直感と大人として培い引き継いだ記憶を利用して魔法を完成させてみせよう。

 誰にもできない(多分)のスタートダッシュで魔法の威力を上げようでは無いか。

 生後数日で魔法を使える人間などおらんだろ。知らんけど。


 さて、マナを感じ取る練習の最中に様々な疑問について考えてみよう。


 まずは人間の中にあるマナだ。


 オタクの僕はてっきり自分の魔力的なアレを使うのかと思っていた。

 しかし、そうでは無く、空気中のマナを操る事でしか魔法は使えないらしい。

 自分のマナを使うと言う事は生命力を使う事と等しく、生命力のマナは回復しないらしい。


 自分の中にマナが存在し、回復したり使えたりするのが魔族と言う種族らしい。

 今は魔王軍とやらのせいで魔族は完全な人間の怨敵らしい。


 次に僕が疑問に思うのは、化学で解明された酸素だの二酸化炭素などの空気くんだ。

 この世界の呼吸もマナで定義されている。


 水中にもマナは存在するが、純粋なマナでは無いので呼吸できない⋯⋯そんな定義かもしれない。


 全てがマナで定義され、マナと言う絶対的なエネルギーで生活している。


 それがこの世界の特徴らしい。


 「ブー」


 ⋯⋯つまりはあれだ。


 『な、なんだこの魔力量は!』


 的な展開も。


 『魔力ゼロのはずなのになんだこの魔法は!』


 的な展開もできないのである。


 全員がマナを操る力を鍛えればそれ相応の魔法が使えるのだから。


 「あぶっ!」


 おっと。そろそろマナが何なのか漠然とだが掴めて来た。


 それを一つに集めて形を与える⋯⋯つまりは違うエネルギーへと変換する。


 形を与えるってどうすれば良いんだろ?


 オタクの僕はここで2パターンが速攻で思い付く。

 

 『そのまま火をイメージする』


 『火のできる工程をイメージする』


 後者の場合、火を燃やす燃料とかのイメージで威力が変わったりするのだ。

 悩んだ結果、普通にアニメーションとして火をイメージして出す事にした。つまりは前者だ。


 「きゃはっは!」


 ふははは。


 赤ちゃんの直感と大人の記憶が組み合わされば魔法を使う事など造作もない。

 小さな火を作ったぞ!


 ⋯⋯でもあれだな。消し方が分からん。

 頭を真っ白にすれば集めたマナが散らばって消えるか?


 試すと成功したので問題無いだろう。今後は有り余る時間を使って訓練しよう。


 そして月日は流れ3歳となった。


 時間の流れが早いだろって?

 父も母も仕事が忙しくて僕に構ってくれないし、僕は僕で訓練や勉強をしているせいで保育士さんもやる事が無い。

 つまりは⋯⋯記憶に残るようなイベントが無いのである。


 貴族の家に産まれた僕の家が気になる人もいるだろう。多分ね。

 退屈凌ぎにご紹介しよう。


 まずは窓。外を覗けば手が届きそうな位置に空がある。

 下を見れば⋯⋯社畜の人々を見下ろす事はできるが肉眼では確認できない。

 魔法を使って視力を強化すれば確認は可能だが、そんな事をする理由が無い。


 この世界は現世よりも文明が発展している。

 当然、高層マンションもある訳だ。


 高層マンション、多分だが富裕層が住まう場所が僕の家である。


 掃除が行き届くか不明な無駄に広い御屋敷を期待していた。オタクだもの。

 現実はコレである。


 マナ以外異世界要素がほぼ無いと言えるだろう。


 「ファンタジーを求めているのであってSFを求めているのでは無いのだよ。エアカーよ飛竜になりたまえ」


 すまない。

 僕とした事がオタクなのにあの言葉を忘れていた。

 肉眼で認識できない人々が下では活動しているのだ。言わなくてはな。


 手を大きく広げる。


 「見よ、人間がゴミの⋯⋯」


 「ルーシャ」


 扉を開けて入って来た父様に名言を止められてしまった。

 家族の前では流石に言えない。性格破綻者と思われたく無いのでね。


 「これからお前の身の回りの世話を専属でやってくれる子を買って来た」


 「⋯⋯サシャ⋯⋯です。ルーシャ⋯⋯様」


 同い年の女の子⋯⋯首には『隷属の証』と言う魔法具が着けられていた。ファンタジー作品には良くあるアレ。

 主に逆らうと全身に電撃が走るヤツ。


 「⋯⋯お父様。僕はまだ3歳でございます。奴隷を持つには早計かと思いますが」


 正直、奴隷と言う価値観が僕にはまだ根付いていない。

 奴隷と言う概念に慣れてから、買っていただきたいところである。


 「お前は賢いし、使用人達にも横柄な態度を取らない。だから問題無いと考えた。年も同じだし丁度良いだろう」


 サシャはこの世に失望したような、光の無い目をしている。

 3歳で奴隷になったのだ。無理もない。


 父からの推薦でもある。こんな子供さえ奴隷になってしまう世の中。

 僕は考えをまとめる。


 「分かりました。今日から末永くよろしく頼む、サシャ」


 「はい」


 僕が関わり見て来た奴隷は父の使用人達だけ⋯⋯その人らは誰も苦しそうな顔を浮かべた事が無い。

 だから僕も、元日本人として今の父を参考にしつつ奴隷だからと無下に扱わず接して行こう。


 僕はそう誓い、今後の運命を共にする仲間を手に入れた。

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