履修済み恋愛工学はヒロイン攻略の鍵でした

人生100週目の浪人生

第1章:ヒロイン攻略下準備

第1話:幼馴染との登校

「好きです、付き合ってください!」

「ごめんなさい、友達としか見れ  


はっ、そこで視界が開けた。

散らかった部屋を見ると、ようやく現実に戻された。

窓からは田園風景が、目覚めを歓迎してくれるように広がっている。


「なんだ、夢だったのかよ…」


夕日の沈む屋上で告白。

この上ない条件だと思ったが、まあ俺の力がまだまだということだ。


っと、朝からこんな夢を見て、妄想しているだけでキモい。

まあ、夢の中でしかイキれないんだから許してください…


4月10日(金曜日)


「今日から、俺も2年生…」


もとい、ぼっち歴5年目と言ったほうがよいだろう。

春休みをアニメ鑑賞で費やし、部屋に引きこもって過ごした2週間だ。


「俺、なにやってるんだろ…」


ふと、自分のことが惨めになる。

世間では、

「一人でいるのが好きでやってるんだろ」

なんて言われたりもするが、そんなことはない。


俺は友達を作りたいし、青春もしたい。

でも、一歩が踏み出せない。

まるで永遠の距離があるように、思っている一言がでない。


そんな俺が、俺は嫌いだ……

この体質「は」、変えられなかったなあ。



「お兄ちゃんご飯だよー」

「今行く」


俺には2つ下の妹がいるのだが、普通のJCって感じのやつだ。

どこで俺と差がついてしまったのだろうか?

もう、彼氏の一人や二人いてもおかいくないような感じはする。


「お兄ちゃん、そろそろ彼女作ったら~?」

「うるせえ…そもそも女友達さえ、ろくにいねえよ」


「あんなに勉強してたのに?みじめだね~」

「この人見知り体質を何とかしないことには、どうにもなんねえよ」


「今年は、彼女の紹介期待してるからっ!」


本当に生意気な妹である。

そんなこんなでご飯を済ませ、10分で支度。


制服着るのなんて2週間ぶりだし、

課題とか、教科書とか久しぶりに見た気がする。


「じゃあ行ってきまーす」

「そういえば、隣の紗良ちゃんが待ってくれてるらしいよ」

「え、杉山が?」


おっと、ここで一人紹介する必要がある。


幼馴染の杉山紗良。

容姿端麗で明るい性格、女子カーストトップに位置するいわゆる陽キャだ。

俺とは家が隣で一応幼馴染をやれせてもらっている。

もう一度言う、あくまでやらせてもらっている。

住む世界が違いすぎて、高校に入ってからあまり接点が無くなっていた。

もう1か月ぐらいは話してすらいないだろう。


それが、今日一緒に登校するだと?


「同じクラスになったんでしょ?それで話がしたいんだって」


確かに、同じクラスになったこと1回もない。

まあ、そんなことはどうでもいいか。

俺は今日も、

学校に行く。寝る。帰る。このループを繰り返すだけだ。

深いことを考えるのは嫌いだと本能が言っている。


しかも、考えたところでどうせ何も起きない

この世にラブコメなんて存在しないんだよ。


久しぶりに開けた重たいドアの前には、杉山が立っていた。


「久しぶりだねー竹本!元気にしてた?」

「ああ、おかげさまで…」


バッチリ決めた髪型にバレない程度の化粧…

陽キャオーラがまぶしすぎて直視できない。

まあでも、コイツがいなかったら、

女子と話す機会すらなかったんだから感謝してもしきれない。


「春休みは何やってたの?」

「まあ、順当にオタ活?っぽいこと」

「ふ~ん、それでさあ!

 同じクラスになったじゃん!それでグループLIMEに入ってほしくて…」

「で?」

「言わないと分からない?LIME交換してってこと!」

「おう、別にいいけど…」


逆になんで今まで持ってなかったんだよ、って自分でも思っている。

16年間も隣の家にいて連絡先すら持ってなかったのかよ。

なにはともあれ、初めての女子のLIMEは素直に喜んでおきたい。


つくずく登校時に思うのだが、

俺らは、とんでもない田舎に住んでいる。

周りは田んぼだらけだし、実家も農家だ。


中学校から今の高校に進学した奴は、杉山と俺しかいないし、

高校まで電車で40分ぐらいはかかる。

一応、県内一のトップ校とだけ言っておこう。


電車だと二人席に二人で座るんだが、

陰キャの俺にはどうも刺激が強いらしい。


普段なら、電車での時間は退屈だ…

単語帳を眺めるぐらいしかすることがない。


明日から、この電車でヒロイン攻略会議が行われるとは、微塵も思っていない。


「ねえ!竹本は2年生になったら、友達を作る気はないの?」

「天地がひっくり返らない限りないかな…」


「あんなに勉強してたのに?」

「インプットとアウトプットは違うっていうだろう…」


あんなに勉強したのに?っていうのは、恋愛工学のことである。

ここまでだと、単なるコミュ障陰キャだと思われるが、俺は一味二味違う。


俺は、モテるための技術を集めた学問、恋愛工学というものを

極めているとして、学校のとある男子界隈では有名である。


ぼっちが調子に乗るな!って声が聞こえてきそうだが、

俺が一年間努力を重ねたものだ。笑わないでほしい。


なんというか、この知識が逆に中二病心を育ませたんだから、

今考えると悪手にさえ思える。


第一、知識があったところで体が動かないんだから、宝の持ち腐れである。

そもそも女子に話しかけられなんだから、論外…


俺の中学生や高1の話はおいおい語っていくとしよう。


「竹本、恋愛だけは詳しいんだから、そのスキルで女子を落としてみなよ!」

「いや、それができたら苦労しないんだって…」

「じゃあ、約束して!今日、隣の女子に話しかけるってどうかな?」


陽キャらしい提案だなあ…ハードル高すぎるだろ。


「まあ、挨拶するぐらいなら…」

「決まり!じゃあ帰り道、また一緒に帰ろうねー

 その時は聞かせてよ、成果を!」


女子との40分はなんで短いんだ?

今日は、杉山と談笑してるだけで着いたぞ。


駅を降りて、俺は徒歩、杉山は自転車だ。

まあ、徒歩でも15分ぐらいだし、俺は歩くことが好きなので毎日楽しんでいる。


いつも通りの風景に、いつも通りの時間。

だが、この時の俺はまだ気づいていない、

ラブコメの神様がほほ笑もうとしていることに…


ここから、この幼馴染と二人三脚のヒロイン攻略劇が幕を開ける!

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