第1章\幻想学園クラフト部へようこそ!

第1話:クラフト少年、工桜創也

「僕の名前は工桜創也くおうそうやです! この学園にはクラフト部に入部するためにやってきました。もちろん趣味は工作です! よろしくお願いします」

 深々と頭を下げて自己紹介を終える。

 クラスメイトのみんなからは、どよめきとひそひそ声が聞こえてきた。

 まあ、こうなるだろうとは思ってたけど。

 なにせ、僕は今、ずっと憧れていた夢の学園にたどり着けたのだから。


 僕らが暮らす街『幻都市』は、なぜだか異世界とつながる不思議な街。

 夜空に降り注ぐ光は、流れ星なんかじゃない。異世界からの贈り物、通称マテリアル。

 この街が異世界とつながっていることを、直接的に証明する摩訶不思議な存在。

 魔法のようでもあり、未来から来たようでもあり、とにかく、どんな物体なのか、なぜこんな特性を持っているのか、世界中の研究者や技術者が頭を抱えつつも、興味津々でその調査をしたがるのが贈り物マテリアルだ。

 僕が知る限りでも、

 まるで竜の角のように灼熱の炎を発する角や、風もないのにふわふわと浮かび続ける布や、衝撃を加えるとどこかに空間転移してしまう石、なんかがある。

 こんな明らかにこの世界の物理法則から外れた存在が、この世界の存在であるはずがなく、それがゆえに異世界の存在が逆説的に証明される。

 この街は、確かに異世界につながっている。


 さらに特殊なのがこの学校『幻都総合学園』、人呼んで幻想学園。

 この学園には、なぜだか贈り物マテリアルはほとんどがこの幻想学園に落下してくるという、とんでもない特徴がある。

 この学園を狙ってきているのか、もしくは落ちてくるからこの学園を創ったのか。

 結果として、この学園がほとんどの贈り物マテリアルを所有し、幻想学園はその利を最大に利用して、贈り物マテリアルを教育に組み込んだ。

 贈り物マテリアルの性質研究や、贈り物マテリアルを使った実践教育、異世界文化論研究から、はては国家資格取得を含めた、異世界、贈り物マテリアルについての、あらゆるカリキュラムをここでは学ぶことができる。

 というわけで、この学園は贈り物マテリアルを学びたい人にとっては憧れの学園なのだ。


 さて、ここで僕だ。

 名前は工桜創也。幻都総合学園の今年の新入生。趣味はクラフト。

 自分で言うのもなんだけれど、工作を異常なほどに愛する一介の少年なのである。

 そしてこの学園に来た目的は贈り物マテリアルを使ってクラフトをつくること!

 もちろん他では無理。売ってない、使えない、資格が無いと触らせてもらえない。

 だけど、この幻想学園なら、それが大手を振って行えるわけである。

 特に憧れていたのが、僕の目指す最終目的『幻想学園クラフト部』。

 この学園の部活の中でも、異彩を放つ部。贈り物マテリアルを使ったクラフトを部活動として行えるのだ。授業での型にはまった扱いじゃ無くて、本来資格が必要な様々な贈り物マテリアルを使って自由にクラフトが出来る。

 どんなに不思議で面白いクラフトができることだろう。

 物理を無視した模型? あり得ない世界のジオラマ?

 ああ、それはなんて夢のあるクラフト。僕はただ、そんなクラフトがしたいのだ。

 というわけで、僕の目的は他の大半のクラスメイトとは、激しく異なっている。

 真面目な目的で、必死の努力でこの学園に入ってきた生徒にしてみれば、遊びに来ているように見えるのだろう。

 他の生徒にはこの学園は通過点、でも僕にとってはここが目指すべき場所。

 贈り物マテリアルを使った究極に不思議で、最大にあり得なくて、最高に楽しいそんなクラフトをつくること。

 それこそが僕の夢なんだから。


 さあまずは、目標への第一歩としてクラフト部に入ろう。

 クラフト部では、どんな楽しい日々が待っているのだろう。

 どんな仲間と、そしてどんな贈り物マテリアルと出会えるのだろう。

 厳しいなにかに会うかもしれない。でもすべてを乗り越えて楽しさに変えてみせる。


 そう、この学園で僕は最高のクラフトをつくるんだ!

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