第12話 20:45作戦
――なんだ、これ?
俺の脳内に俺の声が響く。
パグはほうけていたのかもしれない。夢を見るように水風呂が漏れる空を見上げているその姿は神々しい印象だった。
「パグよ」
おっ、なんだ? 俺の脳の分際で俺に指示しろだと?
「今そなたの脳内にはどんな音楽が流れている?」
えっ……?
俺はその音楽を聞き、そして気づいた。「これはテツの好きな周波数のやつだ!」――と。
*
「パグよ」
テツは疲れ始めていた。勝手に部屋を改造して、カラオケルームをつくり、公園にある鉄の電話に周波数の音楽を響かせることには成功したものの、
「パグよ」「パグ。今そなたには――」
と、洗脳並みのわあああああああああという音に負けんばかりの大声をだしながら、しかも冷静な状態を演じるというのはいくら大声しか出せない(と思われていた)テツであっても至難の業だ。
*
「さて、犬さん」
俺の脳内にふわりとそんな声が漂う。
「今から、このことは忘れてもらいますから」
俺はあまりの眠気に、思わず寝てしまった――。
*
起きた時、疲れはなかった。
むくれている棒人間がパグを引きずっている。
「もう! なんで寝るんだか……」
え、寝てたんだ俺。
パグがそれに気づくのに少しかかった。「起きた時、」なんて書いちゃってるのに。てへぺろじゃすまないぞ?
軽く自分をにらむと、パグはまた歩き始めた。
この広いアラバキ星を、はやく二周するために。
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