車を買いに行って酷い目にあった話

不労つぴ

前編

 1か月ほど前、僕は車を買いに行った。

 向かったのは、世間でも名のしれた某有名中古車販売店。そこに欲しい車種があったからだ。事前に予約して、僕はそこへ向かった。


 店に着くと、40代くらいの男性の社員が僕を出迎え、席へ案内した。他の席はすっからかんで誰も座っていなかった。


「本日はどのようなご要件でいらっしゃったのでしょうか?」

「ネットで見つけたこの車種を購入したいんですけど……」


 僕はスマホのスクショを見せる。男性社員はしばらくそれを見た後、「そうですねぇ……」とペンをカチカチさせながら言った。


「その車種ですか……その車で商談を進めるのも良いんですが、せっかくですし、他の車も見てみませんか?」


 男性社員に連れられ、僕たちは炎天下の中、車を見て回った。かなり気温が高かったので、社内もまるでサウナみたいに暑かったのを覚えている。


 そして、店内に戻ると、いつの間にか僕が希望したものではなく、別の車種を買う方向で話が進んでいた。なぜ、そんな流れになったのかは分からなかったが、僕は男性社員に提示させれた車を見る。


 今思えば、この時点でおかしいと思うべきだった。


「これとかどうでしょう?」


 男性社員から提示された車は走行距離、年式、価格と全て僕の条件を満たしていた。何より、価格が60万以下と、かなり破格の値段だった。その上、ドライブレコーダーなども付属しており、装備も充実していた。


「じゃあ見積書持ってきますね」


 そう言って、男性社員はバックヤードに引っ込む。しばらくすると、見積書持って戻ってきた。


「おまたせしました。こちらが簡易的な見積書です」


 そう言って、渡された見積書には、諸費用含め70万程度となっていた。想定していた予算をかなり下回る金額だったので、僕はこれにしようと決め、その意を男性社員に伝える。


「分かりました。それでは弊社のオプション等を含んだ正確な見積書を持ってまいります。その前に、オプションの説明をさせていただきますね。後で渡す見積書は、一旦合計無視してください」


 男性社員はオプションの説明を始めた。内容を聞いても、僕にはあまり必要のないものだったので、ほぼ全て外そうかななんて考えていた。


「おまたせしました。こちらが見積もり書です」


 そう言って、僕に見積もり書を渡す。

 僕は見積書を見て、ギョッと心臓が飛び出るかと思った。なぜなら、そこ書かれていたのは――。




『お支払い金額合計:120万』

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