第32話 本番に向けてのアドバイス

 をしたいものの、恥ずかしさを我慢できない陽葵さんと陽菜さん。悩んでいた2人は、母親の陽子さんにアドバイスしてもらう事を思い付く。


一体どんなアドバイスになるのか。ボクには予想不可能だ…。



 2人と一緒に脱衣所を出たボクは、一足先にリビングに向かう。彼女達は部屋に戻ってから保湿などのお手入れをするらしく、時間がかかるそうだ。


もしリビングに陽子さんがいなかったら、アドバイスは明日に変更だな。そう思って着いたところ、彼女は立った状態でテレビを観ている。


「また長いお風呂だったわね、朝日くん」


「すみません、ご迷惑をおかけしてしまって…」


「気にしないでちょうだい。朝日くんと知り合ってから、陽葵と陽菜が楽しそうでね。に期待しちゃうわ」


このタイミングで先の事を言われるなんて…。


「実はさっきのお風呂の時に、ある問題が出たんです」


「問題? 何かしら?」


話を聞くために陽子さんがテーブルの椅子に座ったので、ボクも向かい合って座る。


「2人が、ボクとする事を望んでまして…」


「良い事じゃない。…もしかして、問題はゴムがない事かしら?」


「それもあるんですが、2人が恥ずかしがってるんです…」


「当然ね。そこで折れずに頼み込むのがポイントよ」


「折れずに、ですか…?」


さっき2人も言っていた。『男の人は優しいだけじゃダメ』とか『時には強引さも必要』と。どう考えても折れたほうが良いのでは?


「ええ。ある程度の無理は、殻を破るきっかけになるの。かといって、度が過ぎるのもダメよ。何事もバランスが大切なんだから」


それが一番難しくないか? 何となく、2人なら強めにお願いしてもイケる気がするけど…。



 ……足音が大きくなってきたので振り返ると、パジャマ姿の陽葵さんと陽菜さんがリビングに来た。


「母さん、ちょっと相談したい事があるの」


「さっき朝日くんから聞いたわ。席に座りなさい」


「夕食の時はわたしが隣だったから、次はお姉ちゃんだね」


「そうさせてもらおうかな」


その言葉通り、陽葵さんはボクの隣・陽菜さんは斜め向かいに座る。


「本番は、男の人・女の人が共に覚悟を決めないとダメなの。今度はあんた達に向けて話すわね」


「あの、だったらボクは席を外したほうが良いですか?」

蚊帳の外というか、邪魔になりそうだ。


「むしろ一緒に聞いてもらいたいわ。陽葵と陽菜の反応が気になるんじゃない?」


「それはそうですが…」

彼女達の反応はもちろん、単純にアドバイスの内容も気になる。


「今更、朝日くんを除け者になんてしないわ」


「ありがとうございます…」


いよいよ、陽子さんのアドバイスを聴く時だ!



 「朝日くんにを見せるのが恥ずかしいなら、あんた達で見せ合って練習するのはどう?」


「えっ? アタシ達で?」


「そう。女同士だから、抵抗は少ないんじゃない?」


「お母さんそんな事ないよ! すごく恥ずかしいから!」


男同士でも、を見せ合うのは恥ずかしい。姉妹でもそれは変わらないようだ。


「アタシ、“そっち”の気はないんだけど…」


「変な勘違いしないでちょうだい。さっき言った練習は、今後絶対役に立つわ」


陽子さんが言い切っている。凄い自信だ。


「婦人科を受診する時は、女医さんに足を広げるんだから。もしそれができなかったら、病気を早期発見できなくなるわよ?」


「なるほどね~。母さんのギャグかと思ったら、本当に役に立つじゃん」


「一言余計!」


ボクもちゃんとした理由で驚いた。こういう考えは母親ならではかも?


「陽菜。今の母さんの話、どう思う?」


「う~ん。正しい事だと思うけど、やっぱり恥ずかしいかな…」


正当性があっても、行動に移せるとは限らない。陽菜さんの気持ちはわかる。


「だよね~、候補として覚えておけばいいかな。他には何かある?」


「他ねぇ…。『体位』を意識するとか?」


「体位を?」


「一番手っ取り早いのは“陽葵か陽菜が、朝日くんの上に乗る”感じよね。そうすれば足を広げる必要がないわ」


「アタシがを掴んで固定してから入れるだけだもんね」


「でもそれだと、本番がワンパターンになるから厳しいわ。お互い気持ち良くなるかどうか…」


「母さん、やっぱり本番は気持ち良い?」


陽葵さんのあまりにも直球な質問。これはボクも気になる。


「『人それぞれ』としか言いようがないわ」


「母さんは最低2回やったんだから、ハマったほうだよね?」


「まぁ、そうかもね。本当に嫌だったら1回きりにするわ」


それは当然の話だ。好き好んで苦痛を味わいたい人はいない。


「やっぱり大家族のお母さんはドスケベだな~」


「思ってても、言葉に出さない!」


2つのアドバイスを聴いて、ボクに出来るのは『体位』だけだ。目を閉じた状態で入れる事が出来れば、陽葵さん達が足を広げても恥ずかしい思いはしないはず。


だけど、そんな器用な真似をボクに出来る訳もなく…。一体どうすれば?



 「今の私に思い付くのは、これぐらいかしら」


「近道はないっぽいか~」


「そういう事ね。恥ずかしいのは一瞬だから、慣れるのが手っ取り早いかも」


後はボクがちょっと無茶ぶり? して、背中を押すぐらいだろうか。


「陽菜。これからアタシ達で見せ合う?」


「そうだね。それしか方法はないかな…」


ボクはこの件に口を挟まないから、2人が納得するまで頑張って欲しい。


「…ちょっと待って。母さんはあんな事言ったんだから、アタシと陽菜の前で見せられるんだよね?」


「えっ?」

予想外の展開だからか、陽子さんがポカンとする。


「自分にできない事をアタシ達にさせるのは変じゃない?」


「そうかもしれないけど、女医さんと娘じゃ意味が全然…」


「誰だろうと、見せること自体は同じじゃん? ねぇ陽菜?」


「うん…。お母さんが勇気を出してくれたら、わたし達も出せる気がするよ」


「困ったわね…」

そう言って、陽子さんはボクをチラ見した。


「ボクは席を外すので、3人でやって下さい」

そもそも、2回出した疲れで睡魔がヤバいから早く寝たい。


「そうしてくれると助かるわ。初めてが私なのは、ねぇ…」


別にそれは気にしないけど…。


「ボクはもうそろそろ寝ます。お休みなさい」


「お休み、朝日くん」


「朝日君、明日報告するね」


「わたし達、頑張りますから!」


ボクは何とかあくびを我慢しつつ、リビングを後にした。

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