【完結】肉食系母娘に翻弄される日々
あかせ
第1話 隣の彼女は肉食系?
今日は大学生になって、初めて講義を受ける日。1限と2限を受けてから学食を食べ、その後に帰宅する予定だ。
友達がいないうえにビビりのボクは、時間に余裕をもって家を出た。そうしないと落ち着かないからね。
時間ギリギリに来れる人はメンタル強いんだろうな~。ビビりを克服するために真似したいと思っても、行動に移す勇気はない。大学生でこれは恥ずかしいかも…?
なんて事を考えてる内に、1限の講義室に着いた。開始時間の30分ぐらい前だから1番乗りかと思ったのに、既に2人が講義室の椅子に座っている。
大学の講義は高校までと違い、学年関係なく同じ内容を受ける。今いる2人が同じ1年なのかは、外見ではわからない…。
ボクは2人とは違う段・列の端の椅子に座ってから、携帯で時間を潰す。
「ねぇ、ちょっと良い?」
時間がどれだけ経過したかわからない中、ボクの近くから女性のハキハキした声が聞こえてきた。遠くなら無視するけど、近くなら確認しないと…。
「はい。何ですか?」
確認すると、隣に明るい色のファッションを纏った女性が立っている。声の印象とマッチしていて、いわゆる“陽キャ”に当てはまるんじゃないかな?
自称“陰キャ”のボクとは接点がない人なのは明らかだ。一体何の用だろう?
「隣、座って良いかしら?」
彼女にそう言われたので、講義室を見渡す。…空席は他にもあるぞ。しかもたくさん。そこに座れば良いのに…。
「ダメ…かな?」
理由を訊く度胸はないし、これから人が増えれば遅かれ早かれこうなるか。
「良いですよ」
ボクは一旦席を離れ、女性を通りやすくするためのスペースを確保する。
「ありがと」
彼女がボクの隣の席に座ったのを確認してから座り直す。女性と話したのっていつ以来だ? なんて考えていると…。
「ねぇ。こういう列の椅子って、真ん中から詰めたほうが良いんじゃない?」
彼女はボクの肩を叩いた後、そう言った。
「そう…ですね…」
その意見は正しいけど、真ん中は出にくいんだよな…。映画館の席だって、端のほうが楽な訳で…。
「アタシも一緒に移動するから。ね?」
「…そういう事なら…」
反論するのが面倒なので、渋々列の真ん中あたりに移動する。
「あなたって、何年なの?」
また声をかけてくるなんて…。どういうつもりなんだろう?
「1年ですけど…」
「偶然ね。アタシもなの」
本当に、外見だけでは何年か判断できないな。
「アタシと同じ1年なんだ…」
女性はそう言いながら、ボクの顔を見つめる。
「…タイプかも♡」
今“タイプ”って言ったのか? 小さい独り言だったからハッキリしない。かといって、確認するほどじゃないし…。
「わからないところがあったら教え合おうね」
「そうですね…」
こういうのは、建前というか社交辞令だろう。本気にしちゃいけない。
「2限は受ける?」
「はい。○○を受けます」
「それ、アタシも受けるの。知ってる人がいると心強いわ~」
この言葉も真に受けないほうが良いな。彼女は友達が多そうに見えるし。
「アタシ、
「
さすが陽キャ。ぐいぐい来るな~。
「お互い名字に“川”が入ってるなんて凄い偶然よね。“ひ”はどういう漢字?」
「日差しの日です…」
【日】はいろんな場面で使うから、例えるのに苦労する。
「その漢字か~。アタシは太陽の陽なの。そこまでは一緒にならないみたいね」
そんなに一緒になったら恐怖を感じそうだ。
「あのさ~。2限終わったらどうするつもりなの?」
「学食食べてから帰ります…」
「そっか。良かったら一緒に食べない?」
「それはちょっと…」
講義では友達と一緒にならなくても、学食は別だ。古川さんの誘いに乗って場違いになるのは避けたい。
「心配しなくても誰も呼ばないよ? アタシと今川君の2人きりだから」
それもそれで問題ある気がするが、ポツンとなるよりはマシか…。
「…わかりました。良いですよ」
古川さんの言葉が真実かはわからないが、久しぶりに女子と話した事で判断力を失ってるな。もし嫌な思いをしたら、彼女と距離を置いてさっさと忘れよう。
「約束だからね。…もうそろそろ1限始めるよ」
古川さんがそう言ったので、再び講義室を見渡してみる。…大体7~8割ぐらい埋まってるかな? 真ん中に移動したのは正しかったけど、男女隣同士なのは多分ボク達だけだ…。
って、意識しちゃダメだ。それがバレたら古川さんに変な目で見られるぞ。ボクは何とか気持ちを切り替えて、1限を受けるのだった。
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