:GEAR HEARTS
掘故徹
第1話『Peaceful weapon』
その日、ズィムリア社会主義共和国地球連邦と資本主義独立企業国のちょうど中間地点で、人類最大規模の核爆発が起きた。
爆心地は《リアクタル》と呼ばれる未知の物質が産出される新大陸『オデッセイ』。莫大なエネルギーとその優れた情報伝導性を兼ね備えた《リアクタル》は、2045年の当時、エネルギー枯渇問題になっていた世界に革命をもたらすものとなった。
2050年、『オデッセイ』を開拓した企業達は洋上に資本主義独立企業国家を設立。
同年、企業に少額ではあるが資金の支出を行っていたズィムリア社会主義共和国地球連邦は『オデッセイ』の土地の権利を主張した。しかし企業達はこれを拒否、元々瞬く間に第三次世界大戦が始まった。
戦争中、幾度もの技術革新により各国の技術力は過去最高なものとなった。
戦争は熾烈を極めたが、2055年8月、中間地点である『オデッセイ』が謎の核反応を起こし爆発。
全ては燃やし尽くされ、燃え残った大陸には灰の雪が降り注いだ。生き残りは口々にこう呟く。
『もうじき冬が来る…死より寒い、核の冬が…』
果たして冬は来た。オデッセイに棲んでいた人々は放射線で汚染され、死に絶えた。あらゆる生物も例外は無く、残ったのは凍った大地と滅びた文明の跡だけだった。そして、表向きには第三次世界大戦は終結した。
冷戦という仮初の平和の始まりである。
『核抑止』という言葉がある。
核をお互いに持っていることで、やったらやり返されるという状況を作り出し、核攻撃を抑止することが出来るという考え方だ。
しかしこれには穴がある。
まともな感性がある者ならば世界が滅ぶ選択をしてまで核を撃ち返すことが出来ないからである。簡単な話だ、互いに核を撃てば世界は滅ぶ。つまり先に撃った者勝ち、という事になる。そんな机上の空論を頼りに今日まで世界は保たれてきた。
現在の核保有国は二つ。
一つはズィムリア社会主義共和国地球連邦。もう一つはアウフヘーベン資本主義独立企業国である。
◇◇◇
戦争から数年。地球連邦と企業国間に、ある極秘の通話が為された。
「大統領閣下?私です、ズィムリア書記長です。」
「お久しぶりです。条約会議でお会いして以来ですかな?おっと忘れていました、偉大なる死に…」
「弔いを…。これでよろしいですね。では、手短に用件をお話しします。先日、我が祖国の調査局が、オデッセイで新たなリアクタル反応を確認しました。」
「なんと…つまり…まだ“ある”と?」
「えぇ、問題は私の政権がもう長くは続かないという事です。世間は私のような保守派より、革新派を選ぶ風潮にあります。そしてその革新派はおそらく、新たなリアクタルによって新型兵器を作り出し、そしてまた引き起こすでしょう。決して冷えることのない、熾烈な戦争を。」
「分かりました。で、私たちはどうすれば良い?」
「…あなた方には、依頼を頼みたい。“依頼をする”という依頼をね。」
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