藤田転生〜担任の無能教師五十二歳(男)と異世界に迷い込んだら有能教師として返り咲く様を見せつけられた話〜

天谷なや

プロローグ

 この世界で「無能」は神だ。


「あれがあればこれもあるわなッ!!」


 関西弁を交えた彼独特の詠唱──「無能魔法」が魔族たちへと放たれる。


「藤田先生!」

「ワキバラ、お前は来んな!」

「いくら先生でも一人は無茶だ! それに相手はあの──!」

「ええから早よ退がらんかい! こんなもん、センター試験に比べたら朝飯前や!」

「先生、こんな時に水を差すようで悪いんですが、今はもう共通テストです!」


 今、俺たちの目の前には、大魔王直属の配下である十魔軍王、その内の六人が武器を構え、臨戦態勢をとっていた。


「コれガ噂に聞ク『無能魔法』かー。大したことナくナい?」

「相手は二人、コッちは六人」

「楽勝」

「皆さん、油断は禁物デスよ」

「その通りダ。モう既に三人、奴に殺さレていル」

「無能教師、藤田……兄者の仇ッ……!」


 魔族たちから放たれる禍々しい殺意に身の毛がよだつ。

 駄目だ、先生。いくら貴方が神の力を持っていようが、所詮は只の人間なんだ。奴らの攻撃を喰らえば、ひとたまりもないぞ!


「安心せい、相手はたった六人……」


 それなのに、どうして貴方は。


「センター試験はなぁ……!!」


 臆することなく。


「十七科目やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!!!!」


 立ち向かえるんだ──?


「だから、共通テストですってばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!!!!」


 あとそんなに科目数は無いッ!!!




【藤田転生】

〜担任の無能教師五十二歳(男)と異世界に迷い込んだら有能教師として返り咲く様を見せつけられた話〜


(以降に出てくる『藤原』は誤字ではありません)

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