第13話
朝起きるとクロネは全ての問題を解き終わったようだった。
今日は土曜日だから学校はない。
でも命の危機を感じさせる幽霊はいるから、真面目に調査に乗り出さないといけない。ほんとになんの因果で私がそんなことしないといけないんだ。
「ほんとに解いたんだ。よく全教科終わったね。」
『…………やらせておいてそれは流石にひどくないですか?』
はあはあ大袈裟に息切れしているクロネが見える。いや見えないけどだいたい想像つく。
「まあよく頑張ったね。じゃあ採点するから一問一問答え教えて。」
よくよく考えたら、紙もペンも使えないってことは計算問題も全部暗算でといたのか。想像以上にクロネはハイスペックなのかもしれない。
そのあとは、クロネの解いた回答を一度紙に書き写して私が採点をした。
「ふむふむ。」
結果
国語 174/200
数学1A 100/100
数学2B 94/100
英語R 82/100
英語L 88/100
世界史 97/100
日本史 54/100
倫理政経 89/100
物理 20/100
化学 32/100
生物 41/100
地学 44/100
物理基礎 34/50
化学基礎 48/50
生物基礎 50/50
地学基礎 38/50
「おお………結構やるな。」
なんて言ってみたものの、実際これはすごい。上澄みも上澄じゃないか?私じゃ絶対無理な高得点だ。
国語数学英語は高水準。理科科目が解けていないということは理系ではなく文系ということは間違い無いだろう。
『このテストで何かわかりました?』
「たぶん、世界史と倫政と化学基礎生物基礎選択の文系受験者ってところで安牌だと思う。」
『………そんなことを調べるためにわざわざテストを解かせたとかだったら怒りますよ。』
「まったまった。ちゃんと考えがあるよ。」
まあ実際、クロネが受験経験者である可能性やかなり良い大学に進学した可能性が高いことがわかったし、それに何より
「公民でちゃんと現代の時事問題も解けてるってことは、少なくとも平成以降にクロネは生まれたってことになる。」
そうだ。倫理政経には2000年代の問題もあったはず。完璧とはいかないまでも、少なくとも平成の時点では生まれていたはずだ。
『ああ。なんかなんとなくそんな感じだったなぁ、ってスタンスで解いていたんで、あんまりはっきり知識があるわけじゃないですけど、たしかに問題を解けてるってことはそうかもしれませんね。』
「他に覚えてることはないの?例えば去年の時点で日本の総理大臣は誰か、とかさ。」
『だから、なんとなく分かるやつもあるけど、思い出せないのもあるんですよ。』
「ちっ。」
『あ、今舌打ちした!』
まあそんなに簡単に年代が導き出せれば訳ないんだろうけどさ。ここではっきりといつの年代の事象は知っていて、いつの年代の事象は知らないのか、が分かれば、あともう一歩というところまで行けるのに。
とはいえ分かったことも多い。
私が思っていたよりも、クロネは何か手がかりを思い出しやすいらしい。それなら、もっと各事件や事故の詳細を調べれば、いつか閃きが出てくる可能性だってなくはない。
「とりあえず、今日は図書館に行こう。新聞記事とかより詳しく乗っているかもしれない。」
情報収集も無駄になるわけじゃないと分かった以上、行動あるのみだ。どうせ暇な休日なんだ。命のために働くことくらい造作もない。
『それは良いですけど、朱莉さん勉強しなくて良いんですか?受験生ですよね。』
私の肯定的な決意とは裏腹に、クロネが自分が私よりも頭がいいことを自覚し始めたのか、若干上擦った声で疑問符を添える。だいたい表情が想像できるのがイラつく。
「………………それは自分が勉強できるからって煽ってるの?」
『いえ、別に。自意識過剰ですよ。おバカさん。』
なるほど、どうやらクロネは被虐願望をおもちのようだ。是非とも私の加虐願望と合わせて望み通りにしてやろうじゃないか。
「ふんっ!」
『うぎゃ!』
首元にヘッドロックを決めてクロネにお仕置きする。人を怪奇的に殺しかけておいて、こんな生意気な態度を取れるとは傲慢なやつだ。
『なんで私の首の場所がそんなにピンポイントで分かるんですか。』
「もう慣れた。次から生意気なこと言ったら、家の隅々まで探して罰してあげるからね。」
『ふえぇ。』
「ほら、ご主人様をバカ扱いしたことへの謝罪は?」
『いつからわたしが朱莉さんの召使になったんですか?』
「召使じゃなくてペット。可愛くもないけど。」
『ひでえ。』
「実際何の仕事もできないでしょ?ほら、謝らないならやめないよ。」
『ごめんなさぁい。』
またぴーぴー喚き出しそうだったので、私はクロネを解放した。
たぶん彼女は年上なのだろうが、残念ながら生意気な幽霊に敬意などない。私が好きなように飼い慣らしてやる。すごく遠回りして考えれば、私専用の護衛騎士みたいなもんだしね。何の役にも立ちそうにないけど。
兎にも角にも私たちは休日の図書館へと繰り出した。街を歩けば、それはそれでクロネが何かを思い出すかもしれない、ということにも若干期待しておこう。
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