異世界に行ったら推しのアニメだった件 〜攻略対象以外のヒロインも寄ってくるんだが!?〜

マロン64

第1話 異世界で目覚める朝


 瑠花は、今日もいつものようにベッドの上で寝返りを打ちながら、アニメ「マリ✖️ルカ」の最終回のシーンを思い出していた。


マリとルカが手を取り合い、夕日に染まる教室で見つめ合うあのラストシーン。「マリ✖️ルカ」には魅力的なヒロインは多くいるが、やはりマリとのコメディな日常を経て両想いになり、最後に教室でお互いの愛を告白するシーンは何度見ても心が震える。


「マリちゃん、最高だよなぁ…」


 今日はもう寝るか、また明日から仕事をせねば、と思いながら眠りに落ちる。いつも寝付きが悪いのに今日は寝ると決めてから3秒も経たずに寝てしまった。


 



 あれ、夢を見てる? なんかふわふわして空を飛んでる感覚だ。


「お主は、転生するとしたらどんな世界が良いんじゃ?」老人の声が聞こえる。いきなりな質問だが、その答えは絶対決まってる。


「そんなの、決まってる。「マリ✖️ルカ」の世界だ。できるならルカになりたいな」

「フォッフォッフォッフォ、お主はそういうやつだったな。ならば、その望み叶えてやろう」


 瑠花は更なる浮遊感に包まれて、どこか遠くに飛ばされた……ような気がする。心地よい感覚になりながら、瑠花は少しずつ覚醒していった。





 大きく伸びをしながら呟いたその瞬間、瑠花はふと違和感を覚えた。いつもの天井が見えない。いや、それどころか…この空間、全く見覚えがない。


「えっ?ここ、どこ?」


 目の前に広がるのは、見覚えのない教室だった。窓から差し込む朝の光が、どこか懐かしいような、けれども確かに現実離れした雰囲気を醸し出している。


「これって…」


 瑠花は机の上に置かれた教科書を手に取り、そのタイトルを見て、驚愕した。


「『雲海学園 高等部』…嘘だろ…?」


 その瞬間、頭の中でピンと何かが弾けた。これは、あの「マリ✖️ルカ」の舞台である学園ではないか!アニメの世界が目の前に広がっている。まさか、そんなことが…いや、でも、目の前にあるのは紛れもなくその世界だ。


「もしかして、俺…ルカに転生したのか?」


 胸の鼓動が激しくなる。もしこれが夢ではなく現実だとしたら、瑠花の願いが叶ったということだ。


「本当に、ルカになったんだ…」


 自分の姿を確認しようと教室の隅にある鏡を覗き込むと、そこに映っていたのは瑠花ではなく、あの「ルカ」の顔だった。アニメで見たことのある、あの端正な顔立ちがそこにある。


「これ…最高じゃないか!」


 瑠花は興奮を抑えきれず、思わずその場で跳ね上がった。これから始まる新しい生活、そして何より、あのマリと同じ世界に生きられるという事実に胸が高鳴る。


だが、その喜びもつかの間、ふと背後から感じる視線に気づいた。


「あなた、何してるの?」


 その声に振り返ると、そこには金髪のポニーテール、澄んだ青い瞳を持つ少女が立っていた。まさに、彼の最推しヒロイン、マリその人だった。

 瑠花は心臓が跳ね上がるのを感じた。マリ、そのマリが目の前にいる。今まで画面越しにしか見ることができなかった彼女が、現実の存在として自分に話しかけている。


「え、あ、えっと…」


 緊張と興奮で言葉がうまく出てこない。アニメの中では何度も見てきた光景だが、実際に彼女と対峙するのは全く別物だった。彼女の青い瞳がじっとこちらを見つめ、軽く首をかしげている。


「ルカ、授業が始まるわよ。急がないと遅れちゃうわ」


 瑠花は一瞬、耳を疑った。彼女が呼んだのは「ルカ」という名前。つまり、自分が本当にルカとしてこの世界にいるということだ。


「そうだよな…俺、ルカなんだよな…」


 瑠花は自分に言い聞かせるように呟き、慌てて机の上に置かれていた教科書を手に取った。そして、マリの後を追うようにして教室を出る。


 廊下に出ると、見慣れた風景が広がっていた。「マリ✖️ルカ」の舞台となる学園そのものだ。生徒たちが行き交い、談笑している。全てが瑠花の知っているアニメの光景そのものだった。


「すごい…本当にこの世界にいるんだ…」


 彼は夢のような気分で周囲を見渡しながら、マリと共に教室へと向かった。マリの背中は少しだけ緊張しているように見える。彼女もまた、ルカとのこの日常を大切に思っているのだろうか。


 教室に入ると、他の生徒たちが彼らを見て微笑んだり、軽く手を振ったりしている。アニメで描かれていた友人たちも、そのままの姿でそこにいた。


「ルカ、ここに座りましょう」


 マリがそう言って、自分の隣の席を指さす。瑠花は迷わずその席に座った。隣には、彼の憧れだったマリがいる。彼女の香り、声、そして微笑み…全てが現実となっている。


 授業が始まると、瑠花は教科書を開いたが、内容がまったく頭に入ってこない。彼の意識はすべて、隣にいるマリに向けられていた。


「マリちゃん、今までずっと見てきたけど、こうして一緒に過ごせるなんて…」


 しかし、その時、ふと彼は思った。この世界はアニメの世界であり、すでに結末が決まっているはずだ。しかし、自分がこの世界にいることで、そのストーリーは変わってしまうのだろうか?


「俺がここにいることで、マリとの物語が変わる…?」


 その瞬間、瑠花の心に一抹の不安がよぎった。しかし、それ以上に彼はこの世界での生活に期待を膨らませていた。マリと過ごす日々がどんなものになるのか、この先何が待ち受けているのか、まったく予想がつかない。


 そして、彼は心の中で決めた。この世界で、マリとの時間を最大限に楽しむと。どんなことが待ち受けていようとも、彼は彼女を愛すると。















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