今まで遊んだ事のあるゲームのデータをロードして異世界を生き抜く

YT

第1話 異世界召喚のちに追放

『サインインしました』

 

 ……。


『「今まで遊んだ事のあるゲームのデータをロードして異世界を生き抜く」をインストールしました』


 ……ん、うぅん。


『アカウントの連携をしますか?』


 ……むぅん、眠い……うるさい、むにゃむにゃ


『データの移項をしますか?』


 ……あー、もう! うるさいなっ!


『……』


 ―――っは!!


 パチッと目を開けたら、草原に寝転んでいた。

 一瞬、なんだこれ、と呆ける。


 俺は修学旅行中だったはず。

 旅館で寝てたらなんか光がぴかっとなって……。


 周りを見回すと、あの旅館に泊まっていたであろううちの学校の生徒全員がいるようで、まだ寝てる奴やぼけーっと同じような顔して突っ立っている奴もいる。

 皆、突然の事で呆然としているみたいだ。


 あ、これラノベで見たやつだ!

 と思ったら、あれよあれよと言う間に西洋の甲冑らしきものを着た武装している集団に囲まれて、全員が王城というところに連行された。

 ひとしきりの説明の後に、ギフトとか言うこれまたテンプレ特殊能力を鑑定された。


 その結果。


 俺は追放され、街の宿屋のベッドの上で三角座りをしている←今ここ


 怒涛の展開に脳みそが追い付いていない。

 落ち着くためにも状況を整理する。


 俺は本田遊二17歳、趣味はゲームのいたって普通の高校生。


 スクールカーストはモブだ。


 ちなみにギフトは「ゲームアーカイブ」だ。


 他の皆はね、やれ「火炎」だとか、やれ「癒し」だとかテンプレよろしくなモノばかり。

 他には「鉄壁」や「無敵」、「切断」に「不老」に「呪い」なんて、そらもう色々あったのよ。


 で、だ。

 俺はね、「ゲームアーカイブ」。


 「ゲームアーカイブ」と唱えると、目の前に『ゲームタイトル一覧』という文字が映った半透明なパネルが現れる。


 それだけ。


 パネルが出るだけで、うんともすんとも言わない。

 しかも、一覧にタイトルが一つもないし。

 いや、あったからなんだって話だけど。

 一覧が見えたところで、それが何の役に立つのだろうかわかんないし。


 城の人も困ってたし。

 当然お前いらねって言われるよね。

 そのまま連行されて叩き出されたよね。


 城の前でおろおろしてたら衛兵さんが、はよ行けや、みたいな顔してこちらを睨んできた。


 とりあえず、衛兵さんが怖いから街に向かってとぼとぼと歩きだして、城で唯一優しかったおじさんが教えてくれたおすすめの宿でぼけーっとしている。


 だってさー、異世界転移したのにこれはないんじゃなかろうか。


 もうちょっと普通な、モブ仲間の山田くんみたいな人の役に立てるようなギフトがよかった。


 そんな山田くんのギフトは「計算」。

 計算が超早くなるギフト。


 お城の財政担当の人に大いに喜ばれて連れてかれていた。


 はぁー、とため息をついて、俺は再び「ゲームアーカイブ」と呟く。

 うん、やっぱり何も載っていない。


「はぁー、ほんとつっかえ」


 パネルを消して、またぼけーっとする。

 ここまで歩いてきて、目に入ったのは現代日本とは違って古くさい街並み。


 きっと娯楽も少ないんだろうな。


 色々あって今日は精神的に疲れた。


 腹も減ってないしもう寝よう。


 いつもはこの時間は家でゲームをしてるはずなのに。


 あー、ゲームやりたいなぁ






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る