アンタがラインを越えたんだから責任とって貰うから
助部紫葉
#1
「…………なに?」
「…………」
「なんか用?」
「…………」
「私は仲良くする気とか無いから」
「あんまり話しかけないで」
「…………」
「はぁ……」
「面倒くさ」
「…………双葉蓮花」
「…………」
「まだなんかある?」
「……そっ」
「ならもう話しかけないで」
「だるっ」
◇
「………………ねぇ」
「…………」
「………………おい」
「…………」
「………………き」
「教科書」
「…………」
「忘れた」
「…………」
ガタガタ。
「……なにニヤニヤしてんの」
「きっしょ」
「あんまり近寄らないで」
「それじゃ見えない」
「…………はぁ」
「だるっ」
◇
「おい」
「アンタだよ、アンタ」
「数学の課題やった?」
「ふーん」
「ちょっと見せて」
「へぇー……」
ペラ、ペラ。
「……写していい?」
「…………んっ」
「助かる」
◇
「アンタさぁ」
「……昼、いつも1人だけど」
「友達とか居ないの?」
「…………」
「ふーん」
「……あ?私のことはアンタに関係ないでしょ」
「…………」
「おい」
「なに勝手に席くっつけてんのよ」
「近寄んな」
「…………」
「…………ぐっ」
「確かにアンタには助けて貰ってるけど……」
「あー……」
「分かったわよ」
「これで貸し借り無しだから」
「今日だけだから」
「なにそんな嬉しそうな顔してんのよ」
「…………はぁ」
「アンタってホント変わってるわね」
「面倒くさ」
◇
ザーザー、ザーザー。
「……最悪。雨じゃん」
「しかも結構強いし」
「……ん?」
「なに?」
「ーーって、アンタか」
「なんか用?」
「…………」
「見てわかんないの?」
「そうよ」
「傘忘れた」
「…………別に」
「はあ?」
「自分は走って帰るからコレ使って……?ってーーあっ……!おい!待って!」
タッ、タッ、タッ、タッ、タッ!
「…………なによ、アイツ」
「アレじゃ、びしょ濡れじゃん……」
「バカなヤツ」
◇
「暇?」
「放課後」
「なんかある?」
「そう」
「ならちょっと付き合って」
「何って……」
「この前の傘のお礼」
「ファミレスでいいね?」
「はぁ…………だるっ」
「いいから」
「早くして」
「ほら、行くよ」
◇
「私の奢りだから、好きなだけ飲んでいいよ」
「まっ、ドリンクバーなんだけどね」
「私の分も持ってきて」
「アイスコーヒー。ブラック」
カタッ。
「…………」
「ストロー」
サッ。
「んっ…………(ゴクッ)」
「…………苦っ」
「やっぱミルクとガムシロップ」
「各3つ」
サッ、サッ、サッ。
プチッ、プチッ、プチッ。
「んっ…………(ゴクッ)」
「…………甘っ」
「はぁ……」
「まぁ、いいや」
…………。
…………。
…………。
「あのさ」
「…………」
「私ってさ」
「なんていうか」
「こう見えて……」
「我儘だし」
「わりと図々しい」
「だからかなんか知らないけど……」
「皆から大体……煙たがられるんだよね」
「私もバカじゃないからさ」
「そういうの雰囲気で分かんの」
「それが分かんなら私が我慢すればいいだけの話なんだけどさ」
「空気読めって話」
「別に空気読めない訳じゃない」
「それで、よく我慢してたし」
「でも」
「そういうのシンドいんだよね」
「ダルいし」
「面倒くさいし」
「何やってんだろって思って」
「リセットした」
「そうしたら、こんなだよね」
「1人で居た方が余計な気を使わなくていいから気楽」
「…………でも」
「1回言ったけど、私もそんなバカじゃない」
「アンタが少なからず私に好意を持ってるのは分かる」
「その理由が何かは知らないけどさ」
スーーーーッ。
「ライン」
「テーブルに線を引いた」
「ここが」
トントン。
「境界線」
「こっからこっちは私の陣地」
「もし」
「アンタがこれ以上こっちに踏み込んでくるなら」
「ちゃんと覚悟して」
「スマホ出して」
「ロック解除して」
「そのスマホ」
「テーブルの好きなところに置いて」
ゴトッ。
「ふーん」
「まったく迷わなかったね」
「分かった」
「アンタには」
「責任、取ってもらうから」
スッ……。
ポチポチポチ。
「はい」
「私の連絡先登録したから」
「メッセージは5分以内」
「着信は3コール以内」
「無理な時は事前連絡」
「守れなかったらペナルティ」
「質問ある?」
「ないね」
「それじゃ」
「これからよろしく」
「コーヒーお代わり」
「ミルクと砂糖は適量」
「丁度いい、甘さのヤツで」
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