旅路編

第23話「幼女に近づくのは保護者が許しません!」

──クロノス王国最強武闘大会から数日経った昼




お金もかなりある。食料もかなり買い込んで隣を歩くリリスの空間魔法に収納させてもらった。


これならしばらくは買いに行かなくてもいいだろう。


僕らは魔王討伐のために魔王がいる魔王城へ向かわなければならない。魔王城はクロノス王国の世界地図で言うと最東端のほぼ最北端にある。正しくはないが端的に言うと「地図の右上の角」だろう。


そこから南西側に魔王軍は世界各地に侵攻している。だが現在、魔王城から最も近い最北端にある国─ヴァニタス帝国が魔王軍の大半を抑えてくれている。




──じゃあ逆の南東に向かって侵攻すればいいんじゃないのか?




その選択をするほど魔王軍も愚かではない。魔王城の東側は常に過酷な状況である……らしい。僕も詳しくは分からないが魔王軍がそちらからの侵攻を思考するまでもなく魔境……ということだろう。




ならば僕も地図の中心であるクロノス王国から北東に向かうのか?




──否。僕は北西に向かう……つまり魔境側から魔王城を目指そうと思う。正直かなりのリスクがある。だが、僕は正規ルートでは正直得られるものは少ないと思っている。


僕は強くなった。そしてパーティーメンバーには2000年前──創世記に記される時代に生きている悪魔リリスと地を離れることが可能になった土地神がいる。このパーティーなら魔境を越え得ると考えている。あわよくば魔境の解放を……とも。




なにせクロノスくんが魔王を討伐した時は魔境は無かったらしい。普通に国や村があったって言ってたし。それで魔境が発生して人々が逃げ果せて今は1番安全な座標に生活出来てるそうだ。それで出来れば魔境の原因を突き止めて解放して欲しいってクロノスくんに頼まれた。


魔境が解放されたあとはクロノスくんがなんとかしてくれるらしい。僕も魔王軍が攻めてきても1人も逃がさず倒そうと思う。


それで僕らは今クロノス王国の西門を出て北西にある国を目指している。視界のかなり遠くまで草原が続いている。暫くは野宿かな〜。




「リリスとアマテラスは魔境についてどう思う?」




「わかんなーい」




「アマテラスはずっとカタナ村にいたもんね。リリスは?」




リリスは小さな顎に手を当てて、




「ふむ。考えるに魔王軍に敵対する者が仲間を守るために魔境を出現させ、魔王軍の侵攻を阻止した……こんなところか?」




「なるほどね、僕もその考えに近いかな」




「リリス頭いいー!!」




その後はみんなで賑やかに話しながら歩いていると夜になった。辺りは生い茂った木が生えている。僕らはここで野宿することにした。




僕らは買い込んだ食料を少しばかし食べる食事を済ませ、寝支度を済ませた。




「2人は今日1日歩くの疲れただろうしゆっくり休んで」




「わかったー!寝るー!」




アマテラスは即座にテントに入って寝た。




「それは貴様もだろう。あと防御魔法をこの辺りに展開しているから心配いらんと言ったろう。」




「それでもなんだか胸がざわついて」




「明日倒れても知らんからな」




リリスはアマテラスと同じテントに入って寝た。




───2人が寝静まった頃




「いるんだろう?出てこい」




昼からずっとつけてる人が……いや、人達がいた。リリスは気づいていただろうけど防御魔法で大丈夫だと考えているのだろう。僕も防御魔法を破壊できるほどの脅威とは思ってない。しかし─




こんな小さな女の子が2人もいるパーティーをつけてくるどうしようもない大人ロリコンは僕が更生させる!!




──ガサガサ




草むらから上裸でイカつい男たちがわらわらと出てくる。




「2人を起こしたくないので場所を変えましょう。全員で来てください。」




防御魔法は特定の対象は出入りが自由にできるらしく僕はその対象だ。そして少し離れた開けた場所に移動した。




全員で8人か。盗賊か?いやロリコンだな。絶対そうだ。そうに決まってる。




「へっへっへっ」




1人はナイフを舐めてる。そのまま舌を切っちゃえ!!




「うぉれれれれ」




ほんとに舌切ってダウンした!!こいつらバカだ!!




「なにやってんだお前!!」




リーダーっぽいガタイのいい男が怒鳴っ─いや、ツッこんでいる。




「こほん。あなたたち幼女を狙うとはどういうことですか?しかも上裸で…この変態!!」




僕は言ってやった!どうだ。




「ふざけてんのかてめぇ!!俺らが狙ってんのはてめぇだよ。てめぇぶっ殺して武闘大会の賞金を奪うんだよ」




叱ったら興奮した!しかも僕を狙ってる!?変態だ!!




「やれぇ!!お前ら!!」




他の6人が一斉にかかってきた。ここは森だ。火は使えない。岩は自然破壊になる。氷も生き物がいたら死んじゃう…なら─




僕は夜の冷えた土に片手をつき─




───重力世界グラビティフィールド




さすがに木々も生き物も全部潰しちゃった。てへっ。なんてことはしない。対象を盗賊だけにする。難しくて範囲が狭くなるけどこの6人くらいなら─




──ズウゥゥゥゥゥン




「ぐわぁぁぁぁ」




そのままおねんねしてなベイベー。全員気絶させたぜ。




「くそっ、モブ共が!」




あんたもモブだよ!!しかも仲間にひどいな。




「うおぉぉぉぉぉぉ!!」




ロリコンリーダーが舌切って失神した男のナイフを持って襲ってきた。




「ふん。」




僕はその場から動かない。




───パキーン




ナイフの刃が折れ宙を舞う。僕の胸に当たった瞬間ナイフが押し負けたのだ。




「お前は!!なんなんだ!!」




ロリコンリーダーが僕の顔面の前で驚きを通り越して憎悪の悲鳴をあげ僕を見る。耳がネジ切れるかと思った。うるさかった。ちょっとムカついた。それでも僕はドヤ顔を作り─




「僕は2人の女の子の保護者だ」




「は?」




ロリコンリーダーは唖然としている。だがその隙、突かせてもらうね。僕は拳を振り上げ、全力で力と魔力を込める。






──グググググッ!!




「幼女に!!」




「ひえっ」




「近づくのは!!」




「ひぃっ」




「保護者が!!」




「ひっ」




「許しませーーーん!!!」




「いやーーーーー!!!!」




───バコーーーーーーン




僕は制裁の拳でロリコンリーダーの恐怖に歪んだ顔面を横から全力で殴り飛ばしこれ以上ないくらい歪めてやった。


その後全員を森の入口まで運び、能力でロープを作り出し木に括り付けた。これで明日の朝にでも騎士団が気づいてとっ捕まえてくれるだろう。


僕は寝床に戻りテントの外で冷たい土のベッドの上で寝て過ごした。






──翌朝




「おい、起きろ」




「起きてー朝ですよーー」




「う、うーーん!!」




僕は2人の小さな女の子に起こされ、小鳥の囀りを聞きながら伸びをする。




「気配がない。諦めたのか?いや、貴様がやったのだな」




「これも保護者の務めだからね」




「何を言っているんだ貴様は。私たちは貴様より年上なのだぞ?」




「ロリに年は関係ないんだよ(キリッ)」




「きも」




本人に言うのは確かにきもいね。こういうのは年齢のわりに幼いのをコンプレックスに感じてる人に言わないと……それも違うか。




「2人ともなに話してるのー??」




「なんでもないよ」




──なでなで




「ふふん♪」




アマテラスは今日も無邪気だ。この笑顔を守らないとな。リリスも




──なでなで




──ドゥン!




みぞおち殴られた。痛い。だけどこの痛みが僕を成長させてくれるんだ。




「なんでだよリリス。酔ってる時は自分からねだってくるのに!!」




「貴様、死にたいようだな」




リリスが震えた声と引きつった表情で言う。




──シャン




「リリス?そのどす黒い鎌は何かなー?」




「殺す」




「いやーーーーーー」




その後は森中追いかけ回された。本当に死ぬかと思った。アマテラスはそれを見て小さな手を叩いて大笑いしていた。むしろその笑顔が怖かった。


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