第22話「決勝戦──悪魔VS神の子」
──クロノス王国最強武闘大会、夕方
次で決勝戦だ。対戦相手はリリス。
僕は闘技場でリリスと向かい合っている。
なんだろう。僕も負ける気は無かったし、リリスが負けるイメージも無かったけど…決勝でリリスと対戦するのが嘘みたいだ。
「貴様、なんだその表情は。」
え?……ああ、僕は笑ってるんだ。だって─
「楽しみなんだ。リリスと戦うの。」
僕は体術はあるけど魔法を使うリリスと戦ったことがない。
「貴様が戦いを楽しみにするとはな……私も楽しくなってきた」
──シャン
リリスが目の前の空間から鎌を取り出した。
そしてそっと地面から足を離し、浮いた。
本気だ。本気できてくれる。
決勝戦。これまでの試合より観客が多い。ほぼ満席だ。そしてざわついている。
まあ試合が始まったら気にならないだろう。
これまでの試合の審判の姿はない。
──スタッ
2階席からクロノスくんが降りてきた。
「決勝戦は僕が審判するからね〜」
「うん。よろしくね。」
「別にたいして変わらんだろうがな。」
─スッ
僕とリリスの間にクロノスくんの手が伸ばされる。
「クロノス王国最強武闘大会決勝戦───開始!!」
いつもより真面目なクロノスくんの声で試合は始まった。
まずは挨拶代わりに─
魔力砲!!
ドオォォォォォォォ
──シュン
後ろに転移された。
─バッ
──ブンッ
僕は両足を広げ体勢を低くし、後ろから振られた鎌を回避した。ここまでは読み通り。
僕は着いた手からそのまま─
───
パリーーン
リリスが浮いてるのも考慮していつもより高めまで凍らせる。
僕は振り向く。
──いない。
「上だ。バカが」
パキーーン
危なかった!!僕はすんでのとこで躱した。
空中に飛んで鎌を思い切り振り下ろしてきたのか。
「氷が邪魔だな。どれ、私も」
リリスの氷に刺さった鎌が赤色に……これは熱か。
ダッ
僕は上に飛ぶ。
「
ドゴーーン
地上で爆発が起こる。
リリスが下でいい笑顔をこちらに向ける。
まったく。この大会までずっと僕の技を使いたかったんだろうな。パーティー行動だとリリスは後衛だから前衛の僕に気を使って使わなかったんだろう。
僕もこの大会で得たものはたくさんある。
僕は空中で右手に刀を作り出し握り、肘を引く──
─ダッ
「あれは!?」
観客席で見ていた剣聖アストライオスは驚く。
リリスも鎌を構えようとするが──もう遅い。
──スタッ
既に僕はリリスの後ろに背を向けるように立っている。
「流れ星」
──キラッ☆彡
「ぐはっ」
僕は振り返る。リリスは腹を抑えている。
リリスがここまでダメージを負ってるのを見るのは初めてかもしれない。
「ふふ、予想外だ。ここまで貴様が要領がいいやつとは。」
「リリスが僕の技を使うように僕も他の人から学んでるんだ」
「そうか。だが貴様が与えた傷は既に
そう。リリスは回復があるから厄介だ。
「再開しようか──爆破魔法発動」
ドカーーン
「お、おい、今モロに喰らってなかったか?」
「レイシの兄貴大丈夫か!?」
僕は避けなかった。避ける必要がなかった。
「貴様には驚いたぞ」
リリスが半笑いで言う。
「うおぉぉぉぉぉ」
「なんであれで生きてんだ!?」
会場が盛り上がる。
「その無限の魔力がある以上大抵の魔法は無意味か……さっきの火炎世界を避けたのは新技を見せるためか…まったく貴様と言うやつは。」
リリスは笑っているけど少しつまらなさそうだ。
「ごめんね。でも勝ちにいくから!」
リリスとの距離はあるが──僕は刀を振った。
「魔力斬だろう?──いや、」
──キンキンキンキン
全ての斬撃が鎌で防がれた。
「ふふ、魔力斬の中に風の刃を混ぜていたな?」
「さすがに読まれちゃったか」
「魔法が通じない以上、近距離戦に─」
──キン
「─持ち込まさせてもらう」
こわ。話しながら後ろに転移して鎌振ってきたよこの子。なんとか背中に刀持っていって防げたけど。
「レイシの兄貴かっけぇぜ!!」
「棒立ちで後ろからの攻撃防いだぞ!!」
──いや、たまたまだよ?後ちょっとで上半身吹き飛んでたよ?
「ふふ」
「ちょ─」
──ギャキキキキキキーー
僕の刀とリリスの鎌の打ち合いが始まった。
「リリスさん速くない?」
「ついてこれないと八つ裂きだぞ?」
──キキキキキキキキキ
どんどん速くなってる!!このままじゃ押される。
「まだまだいくぞ?」
一か八か──連撃付与!!
ズババババババ!
「かはっ」
──ぺた
できた!ボクサーみたいな人が使ってた超連打を斬撃に応用した。
僕の斬撃速度はリリスの振る鎌の速度を圧倒し、リリスはダメージを負い、地面にへたりこんだ。
──スッ
僕はリリスの首の横に刀の刃を置いた。
「う、うぅ……降参……だ……ぐすん」
え、リリス泣い──
「勝者レイシ!!」
クロノスくんが声を張る。
「うおぉぉぉぉぉ!!」
「さすがレイシの兄貴だあぁぁぁぁ!!」
「2人ともすごかったぞぉぉぉ!!」
観客が今日一盛り上がっている。
正直リリスが降参してくれて良かった。僕は斬撃の連撃でもう腕がボロボロでこれ以上の近距離戦はキツかった。
「うぅ……うぅ…負けた……」
リリスが涙を流してる。
申し訳ないけどいつもと態度とギャップがありすぎてめちゃくちゃ可愛い。
ここで手を差し伸べることもできるけど──
──ギュッ
僕は両膝をつき、リリスを抱きしめた。
リリスの泣き顔を他の人に晒すわけにはいかない。
「うわーーーん!!負けたーー!!悔しいーー!!」
リリスが僕の胸に顔を埋めて大泣きしてる。
「2人ともおつかれ!!リリス、大丈夫?」
アマテラスが心配してる。
「うぅ…あぁぁ〜あー」
大泣きだ。僕は目を瞑りゆっくり首を横に振った。
「そっかぁ」
──なでなで
アマテラスがリリスの後ろから頭を撫でてあげている。
「レイシくーん、リリスちゃーん、アマテラスちゃんもおつかれ〜、閉会式と表彰式するから準備しててね〜」
「うん!ありがとうクロノスくん……あれ?でも3位決定戦とかは?」
「これだけ多くの人が参加してるんだからさ!表情される人は1人でも多い方がいいでしょ?」
なるほどね。3位は2人。確かに悪くないね。
「そうだね」
そして表彰式が行われた。闘技場に選手が集められた。
1位、2位、3位の台が用意され、両端が3位、間が2位、1位とだんだん高くなるようになっている。
3位の台にはアスターとパトロン。2位にはリリス。1位には僕が立っている。
「3位アストライオス・スターライト。」
「はい!」
「おめでとう」
「ありがとうございます」
──パチパチパチパチパチパチ
「きゃーーー!!」
「アストライオスさまーー!!」
「かっこいいーー!!」
クロノスくんが台の前に来てトロフィーをソロネさんが賞金額の書かれた板を渡してくれる。
身長が低いクロノスくんは浮いて渡している。
どういうこと?
「ふ…ふふ…3位パトロヌス」
クロノスくんが笑いを堪えられずに言う。
「てめぇふざけてんのか」
「どんまい」
「おい!」
──パチパチパチパチパチパチ
「てめぇら全員ぶっ殺すぞ!!」
なんかもう全部が煽りだ。
「2位リリスちゃん」
「ひっく……ひっく…」
─なでなで「よしよし」
──パチパチパチパチパチパチ
「よく頑張った!!嬢ちゃん!!」
「偉いぞ!!」
「リーリース!!リーリース!!」
最後のは僕がうちわを出して励ましてる声だ。
「1位レイシ」
「うん」
「おめでとう〜」
「ありがとう」
──パチパチパチパチパチパチ
「レイシの兄貴ぃぃ!!」
「本当に!!すごいぜぇぇ!!」
なんか僕のとき咽び泣く世紀末の格好の人達いるんだけど。
その後は閉会宣言があって大会は終わった。
「最後に──優勝したレイシくんには僕と戦う権利が与えられます!戦うかい?」
きた。正直勝算は──ある!!
「もちろんだよ」
「いいねぇ」
そして闘技場に僕とクロノスくんが向かい合っている。この前にクロノスくんに今日の疲れと肉体の損傷を治してもらった。万全の状態だ。もしかしたら勝てるかもしれない。
観客席には閉会式が終わったのに決勝戦と同じようにほぼ満席だ。クロノスくんとの戦闘でここまで人が集まるのは久しぶりらしい。
「準備はいいですか?」
審判はソロネさんだ。
「いいよ〜」
「大丈夫です」
「国王クロノス対優勝者レイシ!!試合──開始!!」
僕はすぐさま地面に片手をつく。
「ふふん♪」
クロノスくんはわざと能力を発動してないみたいだ。初手は許してくれるらしい
───
──ドゥーーーン
闘技場に凄まじい重力がかかる。僕はこの影響を受けない。
これは今初めて使った技だ。
アスターとの戦いで見た重力。それを応用して僕の技にした。
聞いたことがある──重力は時空の歪みだと。そしてアスターはこれを国王戦に取っておくつもりと言っていた。
僕の解釈が正しければ時間を操る能力は──いや、能力は解釈次第─そう──
「ありゃ、能力が使えないや〜」
──クロノスくんの能力を封じた。
これならあとは体術戦だ!!
──ボコボコにされた。完敗した。背中の大剣を使わせることなく重力で鈍らせたにも関わらず体術で完封された。連撃付与なんかより速かった。あんなの勝てないよ。僕は気絶したのだろう。王宮で目覚めた。そして今そのベッドの上だ。
──ガチャ
部屋の扉が空いた。ソロネさんだ。
「レイシさん、起きましたか。レイシさんの優勝祝い、リリスさんの準優勝祝い、アマテラスさん応援がんばったパーティーでご馳走を用意しております。」
クロノス王国最強武闘大会といいこのパーティーの名前といい考えたのはクロノスくんだろうな。
「ありがとうございます。今行きます。」
「以下略パーティーを祝して〜。かんぱ〜い!!」
──カランカランカラン
クロノスくんが元気よく乾杯の音頭を取ってくれた。
みんな美味しくご飯を食べお酒を飲んだ。
一通り終わったあと僕は目覚めた場所と違う部屋に案内された。
リリスとアマテラスと同じ部屋だ。2人とも寝てる。窓から差す月明かりが2人に当たっている。天使の寝顔だ。リリスは悪魔だけど。アマテラスは幸せそうな顔だ。楽しい夢を見てるんだな。リリスは寝顔も無表情に見える。でもこれはなにか企んでそうな表情かな?そのくらい分かってきた。
そしてちゃんとベッドが3つある。しかも大きい。ありがたい。たまにいい宿でも大きなベッド1つのときとかあるからな。その時はもちろん僕は床で寝ている。
この2人がいると騒がしくなるからさっきは違う部屋にされてたのかな。
僕はベッドに寝転んだ。今日はもう疲れた。寝よう。大の字で寝よう。せっかくベッドが大きいし。肉体の疲れは1度回復してもらったにしろ精神の疲れは取れないからね。
──拘束魔法
──ガチャ
「え?」
手足が動かない。まずい。
─ドサッ
リリスが腰あたりにまたがってる。
「なんで?」
「わらひを負かしたんら。責任を取っれもらうろ。」
酔ってる。この状態のリリスはまずい。
大声を出─
「んーーーー!!」
手で口を押さえられた。
まずい。声も出せないようになにかの魔法をかけられた。
「ん。」
──ガサガサ
リリスが服を脱ぎ出した!!
それだけはダメだ。だってその体はアリスの──
「うーーん。なにしてるのー?」
アマテラスが起きてくれた!!これで助かる!!
「ちょうろいいな。アマテラシュもこいちゅに責任を取らしぇるろ」
「いいね!アマテラスこの2日間応援だけで欲求不満だったの!!」
なんでそっち側なんだーー!!
「ふふ」
「へへ」
やばい。襲われる。一か八か──
───ダッダッダッ
─ガチャ
「どうしたの〜?久しぶりにレイシくんの超雑な魔力探知を感じたんだけど〜」
クロノスくん!!
「あ、え?ご、ごめんね〜」
そーっと扉を閉めようとしてる。僕は涙を流しながら目線で助けを求めた。
「あ〜。そういう事ね〜。無理やりはダメだよ〜。ソロネ〜」
そのあとソロネさんが能力で2人を寝かしつけてくれた。
本当に危なかった。
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