第14話「初めての討伐依頼」

冒険者ギルドにて




アマテラスがパーティーに加わったあと、アマテラスとリリスにも冒険者試験を受けてもらった。


意外にもいや、さすが神様と言うべきか、とてつもない魔力出力で近接もとても強かった。リリスは認識阻害の魔法を駆使して無双してた。


2人とも無事Aランク冒険者の資格を得た。


さすがに僕の時みたいに〇ランク最強!みたいな人が相手ではなかった。けど王都内では僕たちはパーティーとして有名になった。


スーパールーキーパーティー──SRPと呼ばれてるとかどうとか。


その影響かは分からないけどリリスは認識阻害の魔法を使わなくなった。リリスだけいなかったら変な噂が流れそうだしね。




今日は討伐依頼を受けてみようかな。討伐依頼は危険な動物や魔物を倒して戦利品を持って帰って達成できるものだ。戦利品は証拠として扱うから持って帰ることもできる。


僕はまだ命を懸けた戦いに慣れていない。だから正直達成できるか分からない。命を奪うのを躊躇ってしまいそうで怖い。


けど将来的には魔神を殺さなければならない。そしてアリスを取り戻す。そのためなら僕は──




掲示板を眺める。


Dランク、Bランク、Eランク、Sランクに、Sランク!?


Sランクの討伐依頼……内容を見てみよう……




Sランク討伐依頼




討伐対象:魔族




特徴:体長2mほどで隻眼。巨斧を所持。




出現場所:王都周辺の村。




概要:当初Bランク討伐対象だったが遭遇したAランク冒険者が重症を負い、Sランク討伐対象に昇格。




依頼人:冒険者ギルド




なるほど。一刻も早く討伐しなければならない存在だけどさすがにいきなりSランク討伐依頼を受けるのは危険だ。僕1人じゃない。リリスもアマテラスもいるんだから。リリスはともかくアマテラスは戦闘に慣れてない。僕もだけど。今はとりあえず──












「Cランク討伐依頼ですね。承諾しました。気をつけてください。」




「ありがとうございます」




Cランク。この難易度なら命の危険も少ないだろう。


今回の任務でパーティーの動きを確かめようと思う。


前衛は僕。後衛がリリスとアマテラス。僕は基本刀で戦い、リリスは魔法で攻撃。アマテラスはバフと回復だ。


僕は能力で戦うこともできるけど能力発動の隙が大きいので基本は刀で戦う。


リリスの魔法は規模が大きいからものが多いからこれから合わせていけるよう調整しようと思う。


アマテラスには回復を使わなくていいように僕が頑張って戦おう。




今回の任務の敵はCランクと言ってもEランク、Dランク程度のモンスターの群れの討伐だ。王都周辺の荒野にいるそうだ。








荒野に向かう道にて




「僕みたいに依り代を作ればアリスちゃんも戻るんじゃない?」




アマテラスが顎に人差し指を当てて言う。


アマテラスには今までの出来事を話したのだ。




「アリスは人間だから依り代があっても生き続けれないんだよ」




「ならさ、リリスちゃんが依り代に入って元の体にアリスちゃんの魂を戻せばいいんじゃない?」




それは僕も考えたことだけど──




「そのことだけど契約を結ぶ時に別にいらないって言われたんだ。」




「ええーなんでなんで?」




アマテラスがリリスに近づいて訊く。




「私は別にこの世界に固執していない。私は肉体がなければ死ぬわけではない。今魔神がいる世界にでも行けば実体は得られる。」






「でもリリスちゃんが依り代に入ればアリスちゃん生き返れるじゃん?」




「私はそこまで優しくない。小娘の魂は言わば人質だ。この男を私の計画に加えるための。」




それもあるのだろう。そしてリリスも言わないだけであのことに気づいている。




「そのこともあるけど僕とアリスが無意識に結んじゃった契約があるんだ。それで魔神と戦う時にアリスがいたらむしろ危ないんだよ。」




「貴様、気づいていたのか?」




リリスが驚いている。僕が無意識に結んだ契約に気づいていないと思ってたんだろうな。


リリスは優しいんだ。僕が自分を責めないように自分を悪者にしようとしてる。




「えー!?どんな契約なの?」




アマテラスが今度は僕の方に近づいてきた。




「『私を置いていかないで』『もちろんですよ』これだけで契約を結んじゃったんだ。この契約は条件と期間を決めてないからいつまで続くか、どうやったら達成されるか分からないんだ。」




「なんでそれだけで契約を結ぶことになったの?」




「あの時アリスがいつになく感情が昂ってたんだ。精神的に未熟なのもあって無意識のうちに天使の権能を使ったんだと思う。それに僕は気づかず応えちゃったんだ。」




契約を結ぶのは悪魔の特権ではない。実際リリスが天使と契約して復活したのを僕は知っている。


通常悪魔は契約で願いを叶えてもらう側ではなく対価をもらう側だ。だから僕は天使にも契約の権能があることを知り、これまでのリリスの言動を擦り合わせ、あの時無意識に契約を結んだのでは無いかという結論を出したのだ。僕とリリスの契約の場合は僕がアリスを悪魔であるリリスに元に戻してもらう対価として魔神討伐を手伝うものだ。




「そうなんだ。じゃあリリスちゃんは気を使って人質とか嘘ついたんだ〜。」




アマテラスがニヤニヤしながらリリスの方を見る。






「実際嘘では無い。私の計画にこの男は必要だからだ。もし小娘との契約が終了してしまったらこの男にとって魔神討伐は意味の無いものになってしまう。」




それもそうだ。理解出来る。だけど──




「大丈夫だよ。リリスが復活した当初は分からないけど、今ならはっきり断言出来る。契約がなくても僕はリリスの計画を手伝う。」




「もう契約を結んでしまったから取り消せんがな。それと私を手伝う理由はなんだ。」




「リリスが優しいことを知ってるから。」




「前も言ったが、私は悪魔だぞ?優しいわけ……ないだろ…」




「ううん。リリスは優し──」




「リリスちゃんは優しいよ!」




アマテラスが割り込んできた。




「リリスちゃんは私のこと外に出してくれたし、朝起こしてくれるし、荷物は魔法で収納してくれるし、僕が眠そうにしてたらお風呂先に譲ってくれるじゃん!!それに──」




そう。リリスは気遣いができて優しいのだ。


基本与えられた状況にも文句を言わない。


健気で優しい人なんだ。




「も、もうやめてくれ。その……恥ずかしい…」




リリスが髪の毛を持ち顔を隠そうとしている。


頬が真っ赤になっている。




「アマテラス、それ以上はやめてあげて。」




僕は優しく言った。






「さ、この辺りかな」




僕らは討伐対象が現れるのをしばらく待った。














──来た!遠くに凶暴なハイエナのような群れがこちらに向かってくるのが見えた。




「行くよ!みんな!!」




「うん!」




「ふふ、爆破魔法」






ドカーーン






「あ」




リリスが一掃した。






「なにしてんのリリス!!」




「僕も戦いたかった!」




「ふん、この程度なら陣形を組む必要もなかろう」




「いや、陣形を組む練習をするために──」






───変な爆発音がすると思ったら人間……冒険者か?ヘッヘッヘ






な!?




「ひっ」




アマテラスが小さな悲鳴をあげる。




野太い声が聞こえその方向を見ると、リリスの背後に体長2mほどで眼帯を着けた巨斧を肩に持ち上げた魔族がいた。






あれはSランク討伐依頼の──






「ふむ。大したことないな。」




リリスが魔族の方を向きもせずに言う。




「お前…!!ふん!!」




──ギャリギャリギャリギャリッ






魔族が斧をリリスに振り下ろしたがリリスの防御魔法に阻まれる。






「なんだ!?この女」




魔族が驚く。




「貴様らでこいつを殺してみせよ」




リリスが僕の後ろに瞬間移動し耳元で囁く。




「無茶言わないでよ」




僕は刀を生成し構える。




「無茶ではない。お前のAランク試験の男より圧倒的に弱いぞ」




たしかに。そう言われると魔力も多いけどファルコンさん以下だし、威圧感もファルコンさんほどじゃない。僕でも勝てそうかも…




「僕も援護するね!」




──ふわっ




アマテラスがバフを掛けてくれた。




体が軽い。魔力出力も上がった。いつも以上に身体強化出来る!




「おい男、お前すごい魔力量だな。お前も俺の仲間にならないか?」






「なるわけないだろ」






「そうか、ならば死ね!!」




魔族がなにかを構えた。




「お前らは俺を舐めすぎだ。なんでAランクの冒険者が殺られたのか考えたか?これがあるからだよ!!」




魔族が掌をこちらに向け、炎を放射してきた。


能力持ちか。


僕は棒立ちのまま止まる。周りが炎に包まれた。




「ヘッヘッヘッ、お前らは油断するから殺られるんだよ!」






「お前こそ油断してるんじゃない?」




僕は煽る。




「な、なんで!?たしかに炎で焼き殺したはず」




「お前が言った魔力量だよ」




「僕の子を舐めてもらっちゃ困るね!」




アマテラスも自慢気に言う。




「まさか、ただの魔力だけで防いだのか!?」




僕はこの圧倒的な魔力である程度までの能力攻撃や魔術、魔法は防げてしまう。直接肉体に当ててくる打撃は喰らっちゃうけど…




「それで勝ったと思うなよ!!」




魔族が斧を持ち上げこちらに向かってくる。さすがにあれモロに喰らうのはまずい。


僕は足を前後に広げ腰を落とし、刀を腰に構え、刀を包むよう鞘を作り出し、刀に思い切り魔力を込める。そして──




「その距離で当たるとでも!?こっちの方がデカいんだよ!!」




「魔力斬」






───キンッ




「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛、なん……で」




魔族は上半身と下半身が泣き別れになった。






「ただ魔力を飛ばしただけだよ」




「言っただろう。大したことないと」




「さすが僕の子だね!」






───魔力斬


僕は魔力出力が低い。それを補うために細い刀に魔力を圧縮して放つことでそれをカバーする。今回はアマテラスのバフもありさらに出力が上がっていた。


シンプルだが強力で初見殺しになる。


剣士や騎士でこれをやる人もいるが基本的には魔力の無駄なのでしないらしい。












この後ハイエナ魔物と魔族の戦利品をリリスの空間魔法に収納してギルドに持って帰った。








「こ、これは……」




カウンターの上に出した魔族の死体を見て受付のエルフさんは唖然としている。






「ついでに魔族倒して来ました。」




依頼書も掲示板から剥がし差し出した。




「お、おいあれって…」




「レイシの兄貴がSランクの魔族を倒したぞぉぉぉ!!」




「うおぉぉぉぉ!!」




ギルド内が騒がしくなった。






「は、はい。どちらの依頼も討伐対象の特徴と合致していますね。これが報酬です。」






9割以上がSランク討伐依頼の報酬だ。すごいな。


4分割して3つの塊を3人で分けてお小遣いにした。


残りは──




「これは食費と宿代にしよう。あと今日、というか1週間はご馳走だね。」




「やったー!!」




「ふん。控えめに言って最高だな。良い酒を飲もう。」




2人とも大喜びだ。




この後ご馳走を食べていつも通り酔った2人を抱えて宿屋に向かった。




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