世界に「誰よりも弱い」と言う理由だけで、理不尽を与えられていた最弱が報われて誰にも負けない最強になった。

そして元最弱よりも弱い世界は、理不尽じゃ無い理由で元最弱に破壊された。

この現代にダンジョンが溢れる世界には誰よりも弱い男が居た。その男は弱いだけで特に犯罪などを犯していない人だった。

　だが世界はその犯罪者でも無い良き男を「誰よりも弱い」と言う弱い理由で勝手に見下す。暴行や暴言を加える。男の家を破壊して略奪してから燃やす。顔写真など男の個人情報をばら撒く。男を全く関わっていない事件や事故の犯人に仕立て上げ、無実どころか無関係である男にその刑罰を与える。等々の理不尽を与えた。

　その理不尽は途絶えることなく何十年も続いた。

　そして最後に男の命が知らない誰かに理不尽にも奪われようとしたその時、男は覚醒した。男はこれまで理不尽に足掻いてきた努力が報われて最強になった。

　男を殺そうとした誰かは男が覚醒した余波で死んだ。

　だが男はその力を大っぴらに使う予定は無かった。最強になった男は誰とも関わることもなく、ただ静かに1人で余生を過ごしたかった。男は理不尽に疲れていた。これまでの恨みや怒りよりも疲れが勝っていたのだ。だから静かに休んだ。

　だから最強の力を使って、誰もいない自然豊かな四季がある島を創り出してそこで動物達に囲まれて静かに暮らした。

　だがこれまで男に理不尽を与えていた世界はそれを許さなかった。

　最弱だった男が突然最強になった事を知った世界は、愚かにも男をダンジョン資源を集めさせる奴隷にしようと動いていた。

　これまで「誰よりも弱い」と言う弱い理由で男に理不尽を与えてきた世界が、今度は「誰よりも強い」と言う弱い理由で男に理不尽を与えようとしている。

　更に世界はそれ以外にも男が住んでいる自然豊かな四季がある島を略奪しようとしていた。

　この世界は地球温暖化が進みまくって、とっくの昔に南極の氷は溶け切っているのだ。もうどの国も一年中夏である。そんな世界が四季のある男の島を欲しがらない訳がない。だから理不尽にも男を奴隷にして島を奪おうとした。

　しかし男も抵抗する。最強の力でミサイルなどを一切通さない結界を張り、島をはるか上空に浮かばせる。そして世界は島に攻撃できなくなった。

　そして世界は大人しくなった。なので結界を解除して島を元に戻す。その瞬間、島に核が放たれた。男は最強なので無傷で助かったが、それ以外の島の自然や島の動物達は死んだ。

　そして防護服を着た人間どもが取り囲んでくる。そして男を拘束する。

　ああ、何と言う理不尽、男が一体世界に何をしたと言うのか。男はただ必死に生きてきただけなのに。最強の力を手に入れても世界に危害を与えていなかったのに。

　それなのに世界はまだ男に理不尽を与える。そしてこれまで理不尽を与えられた男は今回の事で遂に怒った。男にとって理不尽な世界を破壊する事にした。

　手始めに男は拘束してきた防護服の人間を全員八つ裂きにする。そして防護服達が乗ってきた軍艦を大爆発させる。

　そして男は世界中に「世界をこれから破壊する」と宣戦布告する。世界は「どうして！理不尽よ！」や「俺たちは悪くない！」と叫んでいたが、その言葉は男を更に怒らせる。

　男はこれまで何年も世界から理不尽を与えられた。そんな事をやってきた世界の人間が理不尽を自分が受ける事になった途端「理不尽だ！」と男に理不尽を与えた事を謝罪する事なく男からの正当な仕返しを拒否しようとする。

　そんな事を男が許す筈がない。男は世界の破壊を開始した。

　まずダンジョンから地上にモンスターが出てくるように設定した。最初は弱いモンスターしか出てこないが時間が経つ毎に強いモンスターが出てくるようになる仕組みである。

　また地上に出てきた全てのモンスターに人間を見つけやすくなるスキルを付けた。これで人間は隠れてやり過ごすなんて出来ないし、他の人を犠牲にして遠くへ逃げても一生モンスターに追われる事になる。

　次に人間が使う武器や魔法を一切使え無くした。武器は手に持った瞬間崩壊するように設定し、魔法は呪文を何度唱えても発動しなくなるよう設定した。もう人間はモンスター相手に素手で戦うしかない。

　それだけで男以外の人類は滅んだ。武器や魔法を使えないし、どんなに素手での戦闘が強い者でも物理攻撃無効のモンスターも沢山居るので、人類はすぐに詰んだ。そして1年もしないうちに元最弱の男以外の人間は死んだのだった。

　そして自分以外の人間を滅ぼした男は最強の力で島を修復、ついでに地球温暖化問題を解決し、快適な世界で1人余生を過ごしたのだった。