イビルセラフィムズ
ゆーくるん
第1話 超能力のある世界
とある京都のスマホの目覚ましがやかましく騒ぎ立てる。仕方なく俺、高校1年生である『
「おはよ〜。今日早いのは何?遠足でもあるの?」
そうやって声をかけてきたのは『
取り敢えずソファーに座りながら答える。
「今日から3日間テストがあるんだよ」
「そっか〜。それなりの点数はとっておきなよ?ま、なぎさの事だし大丈夫だろうけどね」
自分で言うのも何だが、生まれてこの方45点を下回ったことはない。というか、赤点じゃ無いだけで自慢できる事では無いんだよな。
「ほら、朝ごはん」
「はーい」
呼ばれて食卓に行くと、朝食にしては豪華にオムライスが用意されていた。ついでにFIGHT♡と書かれている。しかし、俺はこの巧妙に隠された罠に気付いていた。このオムライスにしては甘ったるい香り....!
「お姉ちゃんまたアレ使ったでし「はいはい、早く起きたとは言えチャチャっと食べちゃってねー」
くそ!やっぱりか!しかも、ニコニコとこちらを眺めているのを見るに、俺に逃れさせる気は無いらしい。いったい何が問題なのか、と不思議に思う人もいるかもしれないので説明をしておく。一言で言えば、ケチャップが甘いのだ。それも、酸味を感じないオマケ付き。だがいつまでもこうしていると、早起きした意味かなくなってしまう。ので、思い切ってオムライスをスプーンですくい、口へと運んでいく。
「(はむっ!)」
............................................っは⁉︎いつの間にかオムライスを食べ切ってしまったようだ。確かケチャップライスが程よくケチャップを炒められたことでさらに甘味を増し、少し半熟目の卵にどろっとしたケチャップの甘ったるい甘さが混ざり合って。うん、断じてこれはオムライスでは無い‼︎そもそもケチャップに甘ったるいという形容詞を用いることが間違っていないか?
「ふふっ♪そんなに美味しそうに食べてくれるとお姉ちゃんも嬉しいよ」
とにかく、今回もなんとか姉を落ち込ませずに済んだようだ。このケチャップ料理は姉の機嫌が良い時によく作られる。だからといって機嫌を悪くしていいわけでは無い。決して。食べ終えた後の食器をながしに置き、学校の準備をする。
「行ってきまーす」
「行ってらっしゃーい」
家から出ると、7月のムンムンとした熱気が襲いかかってくる。もう一歩踏み出すと、朝の時より強烈になった日差しも差してくる。じわじわと滲み出てくる汗と相まってなかなかに不快だ。最近はずっとこうなので、慣れてきてはいる。だが後2ヶ月くらいこの状態が続くと思うと、なんだかそれこそクラッと来てしまいそうだ。いつものごとく夏の暑さに対して頭の中で悪態をついていると、見慣れた姿を見つけたので声をかける。
「ゆめー!」
「ん?あっ!おはよーなぎさ!」
「おはよう!」
『
そんな宥夢は銀髪碧眼でストレートとツインテールを足したような髪型をしている。
「ゆめのその目とか髪の色いいよなぁ」
「ほんと?でも私は黒髪黒眼のほうが憧れるなぁ、カッコいいし!」
「それはその色じゃないから言えるんだよ。昔は日本って黒髪黒眼ばっかだったことを考えるとどうしても味気ない気がして....」
「む、昔は昔!今は今だよ!今じゃ黒髪黒眼の方が珍しいんだから!」
「まぁ、そうなんだけどな?」
実際、今の日本では目や髪の色が黒以外なんて当たり前だし、肌の色が緑色だなんて人もいる。さらに珍しいところだと角や尻尾まで生えてくるらしい。
「いろんな色になっちゃうのは、やっぱりアレが原因だったりするのかな?」
いや俺に聞かれても。『アレ』。世界調和連盟の公式情報では、200年前の西暦
「それはそうだろうけど、いかんせん教科書にも具体的な説明とか載ってないし、ほんっと不思議だよ」
「だよねー。」
そうやって話していると、いつの間にか学校に着いていたようだ。正門を抜け、昇降口で靴を履き替える。4階にある自分達の教室へ、なんだかんだ話しながら歩いていく。教室に入ると友達が挨拶をしてくる。
「なぎなぎおはよー!」
彼女は『
髪は白く、紅く透き通った目、そして頭一つ低い身長が特徴的だ。彼女の性格は一言で言うと、頑張り屋さんな普通の女の子、であろうか。彼女は部活は勿論、クラスの委員長や生徒会の役員として活動している。が、たまに他の人にサポートしてもらっているのを見るに、超人だという訳でもないのはわかる。それでも逆にみんなからは頑張りすぎて無理をしていないか心配されているくらいだ。
「あぁ、おはよう純」
「おはよーれんれん!」
俺たち2人が挨拶を返すと
「今日からテストかー」
「2人は大丈夫なのか?」
「私は現代国語だけ心配かなー」
「えっ⁉︎れんれんそれだけなの⁉︎私なんて、数学と英語と国語と.....」
「それじゃあ1年の夏から補習することになるんじゃあ」
「大丈夫!教科書の中身は全部覚えてきたから何とかなるはずっ!」
「
「ふふんっ♪凄いでしょぉ」
「でもちゃんと勉強はしとけよ?」
会話を切り上げ、自分の席に行くと、2人も自身のやることをしに行った。そりゃ今日はテストだし、あんまり余裕はないか。逆にさっきのような会話をしている人の方が少ないくらいなのだ。そうしてテスト前の最後の見直しをしていると、あっという間に時間は過ぎた。そして、テストが始まった。中間テストの後、気を引き締めて勉強をしていたこともあり、1時間目のテストはうまく解けたように思う。
そして2時間目のテストも順調そうだと思い始めた頃だった。突如として外が騒がしくなった。どうやらパトカーと救急車の音がなっているあたり、何かの事件でもあったようだ。テストを受けている身としては気が散ることこの上無いのだが、今は無視してテストを続ける他ないか。
.
..
...
ドガアアァァァァァン!!
バリィィィィン! パリン! パリン!
「きゃああ!」「うわああ!?」
「なになに何なの!?」
なんだ⁉︎何が起こったんだ⁉︎流石にこんなのはテストを続けている場合じゃないぞ⁉︎
ガラッ!
「皆さん落ち着いて下さい!とにかくまずは運動場まで避難するので着いてきて下さい!」
近くを巡回していたのであろう先生が生徒達に指示を出し優先順位を明確にする事で混乱を抑える。それと共に校内放送からも指示が出されていく。
『皆さん、緊急事態です。各自冷静に運動場への避難を目指して下さい。また、現在は非常時ですので.....』
「とにかく早く学校から脱出しないと!」
クラスのみんなと廊下へ出て足早に階段へと向かう。だがしかし、下の階は避難しようとする人で混雑しており、上の階からも人が降りてきている。
これじゃあまともに避難できない!こっちだって早く行きたいってのに!イライラと不安が募っていく中、声を上げるものがいた。
「みんな!落ち着いて!」
その声と同時に頭の中がスゥっと冷めていく。それと同時に階段での混雑も徐々に落ち着きを取り戻していく。と、
「う〜。ありがとぉう、ゆめぇ!」
「ふ、ふん!このくらい朝飯前なんだから!」
なんだかさらに空気が緩んだようだ。
そうやって人も少なくなってきた階段を慎重に、それでいて大胆に駆け降りていく。そして上履きのまま運動場へ駆ける。
どうやらほとんどの生徒はもう運動場に集まっているらしい。
安全な場所に辿り着いたので、
「はぁ、よかった。一時はどうなるかと思った」
「凄い大きな音がしたけど」
「でも窓が割れるのは避難訓練でもやりすぎだよね?」
「あぁ」
確かにその通りだ。俺たちはこの高校に入学したばかりなので今学校では定番なのかもしれないが、それにしては先輩達にも不安の色が見える。
そして運動場でクラスごとに整列し、先生達が生徒の人数を数えていたところに
ブォン ドサッドサッ!
びちゃ びちゃびちゃびちゃ‼︎
⁉︎なんだよ‼︎また何かおきたのか‼︎
ズダン!.....スタッ
男女の悲鳴が入り混じる。先生達も安全圏に逃げてから非常事態が起きた場合への対応は慣れていないのか明らかに生徒をまとめきれていない。俺自身も足が言うことを聞いてくれない。だって、そりゃそうだろう?
おぞましいまでに痛めつけられた
なんだよ、これ。
「っ⁉︎とにかく2人と一緒に逃げないと‼︎」
こんな事態になったからには自分たちの判断力で動くしかない。そう思い、とにかく
そこで急に声をかけられた。
「ねぇねぇ、ボクはグラインって言うんだけどさ、この辺りでアロハ服着たような男の人見なかった?」
「..........は?」
「う〜ん。わかんないかぁ。これは任務失敗ってかんじですかぁ?」
なんだ?こいつは?茶髪で赤い目。学校でこんな人は見かけた事がないし、そうなると外部の人間?でもこんな騒ぎに自ら来るやつなんて大分やばい!逃げたら不信感を覚えられるし、取り敢えず話しかけてみるか?
そうしていまだに独り言を続けるぐらいん?とか言うやつに話しかける。
「ぐらいん?さんは何でこんな所に、いるんですか?」
「ん?あぁ、ボクは闇の組織の人間なんだけどね?革命軍の幹部の
闇の、組織?革命軍の幹部?こいつ、本当にヤバいやつだ⁉︎何とかして去ってもらうかしないと!
「あ、あはは。それは災難でしたね...」
「ま、それを聞いたキミは殺さないといけないんだけどね。.......じゃ」
......っ痛い‼︎‼︎ああああぁぁぁぃ‼︎
「ねえ、あんま叫ばれるとしんどいんだけど?」
痛い痛いいたい!なんだ!何をされたんだっ!
傷らしい傷は無いのに、身体中が痛い。痛みを我慢してグラインを見ると、いつの間にか透明な球体を持っている。あの球体で何かしたのか?ただ体のすみずみまで痛みが浸透するかのように襲ってきたのは、分かる。これが俗に言う体を内側から破壊されるような痛みってやつだろうか。
そんな痛みに悶える俺にグラインは少し気分がようなったようで。
「特別に教えてあげるよ。ボクは音を操れる。キミも力持ちでしょ?死ぬその時まで、抗って、ボクの八つ当たりに付き合えよ」
『アレ』。約200年前に人類に発現したもの。争いの種にもなり、原理も
『異能』だ。
今この瞬間、俺を苦しめ痛覚の底に叩きつけてくる。
いつしか、ちょっと特別になったこの世界にまた一つ、大きな転機が訪れようとしていた。
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