unbalance
愛美
アンバランス
人を好きになるなんて、もう無理だと思っていた。でも貴方を好きになるのに、そう時間はかからなかった。
まだ未熟な心に少し愛を擦り付けて、それを言葉にしてくれた貴方の、大人になりきれていないところが、可愛くて。もっと、欲しいと思った。
常に隣にいたのに、私は、貴方のことを何も知らなかった。
共に背負った重い重責も、貴方とならと思えたから、最後までいこうと決心できた。
踏み出しにくい一歩を、共に歩んだ気がした。
だけど、二人の歩幅は違うから。
何故か私の方が先に進んでしまう。
また、遠くなってしまう。
だけど、次第に距離は縮まった。
貴方が、追いつこうと努力してくれた。
後ろには足跡、前には希望があった。
はずなのに。
いつしか、貴方は私から離れていった。
見えるのは貴方の後ろ姿と、離れていく足跡だけ。
しばらく、平気な顔をして歩いた。
しばらく、涙で目の前が見えなくなった。
もう、貴方も見えなくなった。
愛が度を越してしまうと、それは矢となり、大切な人さえも傷つけてしまう。最初は、かすり傷だと思っていても、次第に傷跡だらけになり、もう傷つける所さえもみつからなくなる。
愛ゆえに。
愛を理由に、影を探す。
グラスに適度な愛を注ぐ。
天秤に貴方と同じだけの愛をのせる。
それがどんなに難しいことか。
貴方にはわからない。
わからせない。
ここからどう振り向いてもらおうか。
愛を削って軽くするか、愛を少し捨てるか。
そんなことをしたら、愛の形が変わってしまう。
いや、逆にいいかもしれない。
型にはめられた愛より、余程。
貴方の型を作って、想像して、私が変わればいい。
真っ青な空に、貴方との未来を描いた。
あるかも分からない未来を。
つくりたいとも思わない未来を。
貴方が離れていった理由がわかる気がした。
貴方は愛を擦り付けたのではなかったのかもしれない。私に、同情していたのかもしれない。
愛をコントロールできない私に。
描いていた理想を、愛を、貴方に押し付けてしまった。
なんて酷い人間なのだろう。
やはり私は人を愛せない。
また人を愛せなかった。
また貴方に傷跡を残してしまう前に、消えよう。
もう二度と貴方以外愛せないかもしれない不安に、少し安心を覚えた。
まだ貴方が心の中にいる。
この事実が自らを苦しめるということに気付かず、また私は、誰かを愛そうとするんだ。
アンバランスな感情を胸に。
Fin.
unbalance 愛美 @hubuki0610
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