人間不信だった俺が青春を取り戻すために...!!

@bakajanainoka

プロローグ

俺、橘彗(たちばなけい)は、他人の心の声を読み取ることができる。


この能力のせいで、外見からは想像もできないような現実を目の当たりにしてきた。心の声には嫉妬や憎悪、欲望が渦巻いており、人の心の奥底を覗くことは、澄んだ湖の底に広がる泥をかき混ぜるような感覚だった。


その結果、知らず知らずのうちに人との関係を築くことができなくなり、孤立してしまった。中学時代のほとんどを孤独に過ごし、青春の一欠片も味わうことができなかった。周囲の賑やかな声や笑い声が遠く感じられ、青春という言葉はただの幻想に過ぎなかった。


卒業式が終わり、家に帰ると、薄暗い部屋で一人きりになった。心の中で、これまでの自分の過ごし方に疑問を抱いていた。そんな時、ふと目に留まった一冊の小説を手に取った。


ページをめくるたびに、登場人物たちの輝かしい青春や希望に満ちた未来が描かれていた。いつもとは違って、心の奥深くに押し込めていた感情が込み上げてきた。胸の奥で渦巻く不安や後悔、やり残したことが、まるで波のように押し寄せてきた。


「これまでの俺に、何かが足りなかったんじゃないか...?」


思い残したこと、やりたいことが溢れ出し、涙が自然とこぼれた。どれだけ願っても、現実が簡単に変わるわけではないと分かっている。しかし、漫画や小説の中の登場人物たちが描くような青春が、現実にも存在するかもしれないと感じてしまった。


その瞬間、心の奥底に冷たい声がささやいた。


《こんな都合のいい話、現実にはあり得ない》


だが、その反響の中で、未来に向けた新たな一歩を踏み出す勇気も湧いてきた。希望を持つことで、自分が変わる可能性を信じたくなった。


「俺も、こんな青春がしてみたい...」


その決意を胸に、心の扉を閉じることに決めた。これからの高校生活が、新たな自分を見つけるための大切な時間になることを信じ、一歩を踏み出す覚悟を固めた。


青春は、ただの幻想ではなく、自分がどれだけそれを望むかによって形作られるものだと感じ、希望を胸に抱いた。

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