第8話
夕暮れ時の帰り道、海斗くんと別れて帰路を歩いていると、誰かの気配に気付いた。
後ろを振り向いても誰もいない。でも、歩く音は聞こえるし、気配もする。
一体誰が―――
「わっ!!」
「うわぁぁぁぁぁ!!」
驚いて、大声を上げてしまった。私の悲鳴を聞いて色んな人が私を見る。恥ずかしい、、、。
「そんな驚かなくても、、、」
驚かした犯人である悠陽も驚いている。
「ごめんごめん、姿消してわざと気配を消さなかったらどんな反応するかな〜って」
「、、、」
目の前で笑う悠陽は私とおなじ洋服だった。買ったのだろうか?
そんなことを考えていたら「良いこと聞きたい〜?」とニヤけながら此方を見る。
良いこと?
「皐月先生が来たよ〜!」
「本当!?」
「草餅持って来てくれた〜」
急いで家に帰ると藍色の着物を着た皐月先生の姿が目に映る。
「皐月先生!!」
「八千代、草餅持ってきっ、、、こらこら」
嬉しさのあまり皐月先生に飛びつく。
皐月先生の手には草餅が乗られたお皿。
「どうして草餅を?それに数日しか経っていないのに来るなんて、、、」
「ああ、草餅は山で萩が取れたので下級生達と作ったのでお裾分けだよ。来た理由は少し心配になってね。悠先生は上級生達の夜間演習の為、来られなくて、代わりに私が様子を見に来たんだよ」
草餅を頬張りながら先生と話す。
「あと、悠先生から『伝達鶴の術はよく上達している。これからも励め』という伝言を預かっているよ」
「悠先生なら良いそ〜」
夜間演習、去年やったな〜。
ただ悠先生から逃げ切るだけの鬼ごっこ。たたでさえ夜で視界が悪いのに、それに加えて先生から逃げ切れなんて、、、逃げ切れる訳ない。
鬼ごっこと言えど、術の使用は許可されるが、私達上級生の相手は後頭部に目でもついてそうな悠先生。一時間もしないうちにみんな捕まった。
下級生の夜間演習は鬼ごっこではなくて二人一組でペアを作り、その日は山で時給自足をする。大体その日のご飯は焼き魚になる。
「下級生の時の夜間演習は楽しかったな〜」
「分からなければ他のペアと協力しても良いもんね」
「次の君達の夜間演習は八月だよ」
皐月先生のひと言で黙る。嘘だと思いたい、、、。
「それじゃあね」
煙が先生を包み、煙が晴れると先生はその場にいなかった。
「夜間演習だって、、、」
「あれはサボれないよね〜」
「サボってみろ。
「オレ、経験ありなんだよね〜」
「もう経験してたか、、、」
「逃げ切れる自信なんかない!」
四ヶ月後に待ち受ける夜間演習からは逃れられないと悟って机に項垂れる三人であった。
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