第3話

「おはよ〜、、、眠い」

大きな欠伸をして食堂で朝ご飯を食べる。近くでおかわり!という元気な声が聞こえた。その周りからは「何杯目?」「五杯、、、六杯目だっけ?」「私に聞かれても困るよ、、、」という賑やかな声。

焼き魚を食べようと箸を伸ばすが、お皿の上には魚が乗ってなかった。

「え、、、?」

カチカチと何も掴んでいないお箸を動かすが空気しか掴めなかった。

お漬物だけ乗っかってるお皿を見ていると何処からかクスクスと笑い声がした。

(あれ?前にもこんなことがあったような、、、)

食堂の二階を見ると二人の少年が笑いながら此方を見ている。

鏡合わせのような双子の『しん』と『仁』

「二人が取ったの?」

そう聞くと二人は笑顔で頷いた。

「だって、やーちゃんの反応面白いんだもん」慎が言う。

「やーちゃん、毎回僕達の悪戯に引っかかってくれるもん」それに続けるように仁も言う。

二人はまだ十一歳だが、術の扱いは中々の腕前。

ついでに言うと悪戯好きで、よく色んな人に仕掛けて怒られている。

「それに、、、やーちゃんと会えるのあと一ヶ月しかないし、、、」寂しそうに二人は口を揃えて言う。

「長休みは帰って来るよ!」

高校入学の年齢になると、一時的に里を出ることが許される。そうして、卒業したらまた戻って来なくてはいけない。それがこの里の掟。

外に出ることが許される理由は、外で学んだ知識はきっと自分の為になる、という方針の為。


「であるからして、此処は、、、おい、八千代、聞いているのか?」

先生の話は右から左に抜けていく。

此方の学び舎には十歳以上の上級生が、向うの学び舎には六歳から九歳までの下級生が勉強をしている。

なんやかんや言って、下級生と上級生って同じ割合なんだよね、、、。

「八千代!!」

「はい!?」

先生の大声で驚き、勢い良く立つ。

「遊びにうつつを抜かし過ぎないように」

「、、、はーい」

「よし、午後は実習練習といこうか」

先生がそう言ったのを合図にして教室ではブーイングの嵐になる。

だが、そうなった張本人は気にしていない様子。涼しい顔して生徒達を見ている。

中には「センセー、午後サボって良い〜?」という発言が聞こえてくる始末。


「あ〜、、、疲れた〜」

「悠先生、厳しい〜」

「途中で悠陽はいなくなるし、、、」

「サボり魔〜!」

みんなで丘に寝そべりながら実習練習の愚痴を言い合う。

「あれ?みんな大変そ〜だね〜」

何処に隠れていたのか呑気に籠一杯に入った果物を持ってみんなに近付く悠陽。

「野いちごだ!」果物の正体に気付いた子が嬉しそうに声を上げる。

「え、野いちご!?」

「私も食べる〜」

「僕も〜」

私も野いちごは欲しい。数個貰って食べると、何時もの酸っぱさと甘さを帯びた味が口の中で広がる。

「美味し〜!」

(桑の実も美味しいけど野いちごも美味し〜)

流石、みんなが選ぶ好きな果物選手権堂々の三位。ちなみに一位はアケビ、二位は桑の実だった。

その後、悠先生に見付かった悠陽は怒られていた。

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