第37話『男を探して』

アンバーを探してロアとアンナは貧民街……ではなくレーヴェンの大通りに出てきていた。

 入り組んだ貧民街で、特定の人物を探すよりも、一度出会っている場所で待つのが正当だと考えた。何より初めて会った日から頻繫にアンバーは絡んできている。分かり易い場所に居れば、向こうから会いに来るだろう。

「それで、アンバーくんにあって誰を探すの?」

、ではなくだ」

「……? 決まってないってこと? 当て推量?」

「そうなるな。引き受けておいてバツが悪いが、手詰まり感は否めん」

 今はとにかく情報が欲しい。この違和感を払拭してくれる、情報が。

 こういう時は勘に頼るのがいい。

「俺の勘はアンバーに鍵があると言っている」

「……昨日は会えなかったし、ここ三日貧民街から出てないってトレバーくんが言っていたよ?」

 トレバー……アンバーのお取り巻きの一人で、青い髪の青年だ。

 実はアンナも自分なりに聞き込みを行って、トレバーに話を聞いた。彼は快く応えてくれた。

「ま、詳しいコトは知らんが、あいつとて何時までも暇じゃないだろ」

「それはそうだろうけど」

「……火急ではないんだ、じっくりいこう」

「でも……早い方がいいよ」

「そうだな」

 あれ程苛烈な症状をだす〝玉炎病〟は驚くことに死亡例は今のところ出ていなかった。

 呼吸器官付近に出る腫瘍は呼吸と共に痛みを与えるが、呼吸を阻害することはない。

「お、居たんじゃないか⁉」

「え⁉ どこどこ⁉」

「ほらあれ!」

「ほんとう……ん?」

 ロアが指さす先に居た人物はアンバーとは似ても似つかわない。

 金髪のロン毛に、筋骨隆々、褐色の肌。

「どこが⁉」

「だいたいあんな感じだろ?」

「いや全然違うよ⁉」

 どう見間違えばそうなる⁉ 別人じゃん。

 ロアはトコトコアンバー擬き₍全然違う)に近付いて行った。

「ヘイガイ!」

「オオ~ファッキュー・ビッチ!」

「イエイ! ファッキュー・ビッチ」

「なんか意気投合している‼」

 というかなんだその言語は! 殆ど「ファッキュー・ビッチ」で会話している。なんかグータッチとかしてるし! 何処に其処迄仲良くなれる要素があった⁉

「ちょっと、ロア! やっぱりアンバーくんじゃないって! だってアンバーくん〝ファッキュー・ビッチ‼〟とか言ってなかったし⁉ そんないかつい体してないから!」

 ごもっともなアンナの指摘をロアは鼻で笑った。

「わかっていないな」

「え……?」

「男は三日会わずれば刮目してみなければならない。どうだ? 見違えているだろ?」

「確かに……ってそんなワケあるか⁉ 然っ全違うから⁉」

 アンバーくん身長伸びすぎだから!

「もうめんどくさいし、此奴頼めばよくない? なあネオ・アンバー」

「ファッキュー・ビッチ‼」

「イヤァ~!」

 再びグータッチ。

「それ何なの⁉」

 アンナはツッコみすぎて息を切らしていた。それからすったもんだの果てに、騒ぎの中心にきたトルモン――緑髪の男――の案内で貧民街を探索することなるのであった。

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