第30話『三莫迦』
ロアとアンナは直ぐに服屋に向かった。
アンナは勿論無一文であったため、ロアが払ったが、そのロアも殆ど着の身着のままだった為服代で持ち金が消えてしまった。
暫くは野宿だろう。
何とも苛酷になりそうだ。
「しかしまあ、悪くないか」
ロアは、アンナの方を向いた。
セミロングの金髪に、豊満な胸。
美麗な顔立ち。
安物の服装でも様になっていた。
「? どうかしたの?」
「いいや、何でもない」
「?」
きょとんと不思議そうな顔をするアンナ。
彼はアンナ質問をあしらう。
「それよりもだ、今日は如何やら野宿になりそうなんだが、お前は大丈夫か?」
「うん。私森育ちだし、結構慣れてるよ?」
「そうか……となると、面倒だが一度街を出るか」
「どうして?」
「お前は知らないだろうが、都会は危ないんだよ特に女性はな」
おのぼりさんであるアンナは実感がないが、実際に今もアンナに下卑た視線を送っている男は複数いる。高々チンピラに後れを取るとは思わないが、安全策を敷くにこしたことはない。
「――おうおうおう!」
黒髪に藍色の瞳を持った青年が何やらオラついて絡んできた。
後ろに二人がついていた。
「それで、アンナ取り敢えず僅かな残金で食糧を買いこもう」
「だね~」
「おいテメェら兄貴がおうおうおうって言ってんだろうが」
「言ってんだろうが!」
三人をスルーして話を進めるアンナとロア。
黒髪の青年を兄貴と慕う二人がツッコミを入れていた。
「要件は?」
「金置いていけや!」
黒髪の青年が金銭を要求する。ロアはため息をついた。
「生憎、金ならない。俺としても腐るほど金があるのならば、お前に恵んでやらん事も無いんだが、残念ながら腐るほどは無くてな」
「さっき飯を買うとか言ってたろ⁉」
「阿保か、その金渡したら俺らが腹減るだろ?」
「なんか憐れんでない⁉ なんで頭撫でてんの⁉」
可哀想な子供にするように頭を撫でるロア。
思わずツッコんでしまう黒髪の青年。
「コイツ! アンバーの兄貴を莫迦にしやがって!」
「タコ殴りにしてやるよ」
「あ、お前ら!」
憤慨して二人が突っ込んでくる。
拳を振り上げて向かってくる。
ロアは拳が届く前に、自分の拳を左側から来た青い髪の男の顔面に拳をめり込ませる。
わかりやすく後方へ吹っ飛ぶ青い髪の男。
「トレバー⁉ テメェ……ぶへら⁉」
何か言おうとした緑髪の男の顔面にも拳をめり込ませる。
それを見た黒髪の男……アンバーが肩を怒らせて向かってくる。
「よくも弟分たちを……許さねぇ。俺の名前はアンバああああああ⁉」
「ええ~?」
名乗りをあげようとするアンバの顔面にも拳を沈める。
アンナもこれにはドン引きだ。
「ちょっとひどくない?」
「だって、強盗犯だぜ? 容赦する必要なくない?」
「確かに……」
「お前らに慈悲は無いのか⁉ ていうかおっぱい凄いな⁉」
ロアの言い分に納得してしまうアンナ。実際正論だった。
破れかぶれにアンナの胸に言及する青髪の男。
「うわあ~」
「流石にきもいな」
「あなたも似たようなこと言ってたよ……?」
「アンナ……物事には仕方のない事も有るんだ? な」
「〝な〟じゃないよ⁉ なんでボコボコにした相手に同意を求めてるの⁉」
「お前らなんなん……?」
アンバーが付いて行けないという顔をする。
「まああれだ、喧嘩を売った相手が悪かったな。これからは気を付ける事だ」
「くぅ~」
カッコいいじゃないか。アンバーが心のうちを震わせた。
何かすごくかっこいい。
「あ、あんた! 名前は⁉」
ロアの背に言葉を投げかける。
ロアは振り返り、微笑を作った。
「ロアだ。ロア・ムジーク」
「俺はアンバー。アンバー・シュッツだ‼ 覚えておけ⁉」
「いいね、お前面白いよ。覚えておく」
ロアはアンバ―の何かを気に入っていた。
どこか面白い。そう思っていた。
「――貴様、ロアと言うのか?」
「お前も強盗か?」
ロアとアンナの前に面妖な頭巾をした男が現れる。
頭巾では隠せない気品があった。
「くふ。はっはっは。この俺に強盗と問うか⁉ 良いな貴様は! 奴の言う通り、俺の盟友足りえるかもしれん‼」
そう言って、頭巾の男は頭巾をとった。
その面は美しく、金糸の如き髪に赤のメッシュが入った男だった。
彼の名は――。
「――
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