関係者インタビュー:「斜面」

 …赤い、トートバックを持った女が出るそうだ。


 人が立てるはずのない。

 ほぼ、垂直の斜面に。


 見下ろすように女がいて。

 手には赤いトートバックがあって。


 見ると、近いうちに不幸が起こる。

 …という噂を、学生さんが追っているそうでね。


 国道を管理する職員だから。


 監視カメラに映りこんでいるのを見ているはずだと言ってきて。


 ――正直、困るんだよね。

 こっちは仕事なんだからさ。


 道とか監視するにしても。

 事故とかないかを見ているのだからね。

 

 景色についても、そこまで気にしてないし。

 ましてや、そんな女の話は耳にしていない。


 学生同士の作り話でしょ。

 最近、この道を頻繁ひんぱんに通っていたしさ。


 …大学の話だと山をはさんだ先。


 町興まちおこしイベントの企画のため。

 通っていたそうだからね。

 

 その道中で、生まれた話なんだろうさ。


 …ああ、そう。

 最近、大学から町興しの話を聞いたんだよ。


 ――帰って無いんだろ?

 行きの車が通ったきりで。


 …映像、見たよ。

 まあ、斜面にいたわな。


 ありゃダメだね。

 こっちじゃあ、有名だから。


 それに、向こうから来るから逃げられない。

 人でも獣でも無いしさ。


 …ああ、そうだ。

 見た目は青いジーパンの男だよ。

 

 笑顔で手を振って、崖から駆け下りてくるんだ。

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