呪われた扇風機 - プラカノンの悲劇
序章
60歳を過ぎたおじさん、金谷拓也は退職後の人生に疲れ果てていた。夢見がちな性格もあり、現実世界との接点を失いつつあった。そんな中、地元のフリーペーパーの広告を見つけ、プラカノンの古い賃貸アパートの管理人を引き受けることにした。新天地で新生活を始められるかもしれないと、わずかな期待を抱いていた。
拓也がアパートに到着すると、40代の夫婦が管理人として迎え入れてくれた。妻の小夜子と夫の太郎だ。二人はこの古びた建物の管理を任されており、困難な状況に頭を抱えていた。
「管理人をやってくれて助かります。でも、この建物...少し変わっているんです」
小夜子は不安げに語る。拓也は好奇心からアパートの内部を見て回ることにした。
黄色い扇風機
アパートの共用スペースには、古びた黄色い扇風機が置かれていた。どこからか不気味な音が聞こえ、部屋の明かりが時折ちらついた。
「あの扇風機、気味が悪いんですよ。時々、変な音がするんです」
太郎が説明する。拓也はその扇風機に近づいて、注意深く観察した。
「確かに、妙な感じがするな。まるで...何かを感じ取っているみたいだ」
拓也は、扇風機の前に立ち尽くした。不思議な力が放たれているような気がした。しかし、それ以上踏み込むことはできず、部屋に戻ることにした。
夜、拓也は自室で寝付けずにいた。窓の外から聞こえる扇風機の音が気になって仕方がなかった。やがて、窓ガラスが微かに揺れ動くのが見えた。そして、黄色い扇風機の影が…まるで動いているようにも見えた。拓也は恐怖に怯えながら、目を背けずにじっと見つめていた。
過去の悲劇
次の日、太郎が拓也を呼び出した。
「あの扇風機、実は過去に恐ろしいことが起きた場所なんです」
太郎は重々しい口調で語り始めた。かつてこのアパートに住んでいた夫婦が、扇風機の前で殺害されたというのだ。犯人は未だ捕まっておらず、事件の真相は闇の中にある。
「あの扇風機には、何か呪われたものがあるんじゃないかと...」
小夜子もまた不安げな表情で付け加える。拓也は背筋が寒くなるのを感じた。
支配される狂気
しばらくして、拓也は扇風機の前で立ち尽くす自分に気づいた。まるで何かに引き寄せられているようだった。そして、次第に恐ろしい幻覚を見るようになっていく。
血まみれの幽霊が現れたり、扇風機から奇怪な声が聞こえてきたりするのだ。拓也は、現実と夢の区別がつかなくなっていった。
一方、夫婦の太郎と小夜子も、同じように扇風機に取り付かれていくのが分かった。二人は、かつての惨劇を繰り返すのではないかと恐れていた。
逃亡と絶望
とうとう、拓也は扇風機に完全に支配されてしまった。殺人衝動に駆られ、ナイフを手に取る。必死にそれを阻止しようとする太郎だったが、拓也に刺され倒れてしまう。
小夜子は必死に逃げ回るが、追いつめられていく。ついに追い詰められた彼女は、最後の望みをかけて窓から飛び降りる。
拓也は、血まみれの扇風機の前に立っていた。狂気に憑かれた表情で、冷酷な笑みを浮かべている。
エピローグ
拓也は、その後警察に検挙された。事件の真相は明らかにされ、あの黄色い扇風機が呪われた存在であったことが明らかになった。
一方、小夜子だけは奇跡的に生き延びていた。病院のベッドで目を開くと、扇風機の音が聞こえてきた。彼女は恐怖に怯えながら、二度と扇風機のそばに近づきたくないと固く誓うのだった。
小夜子は、事件から1年が経った今も、あの扇風機の影響から逃れられずにいた。病院から退院した後も、扇風機の不気味な音が頭から離れず、恐怖に怯えることが絶えなかった。
ある日、小夜子は再びアパートを訪れることになった。警察の調査が行われており、事件の詳細を確認する必要があったためだ。
アパートに到着すると、そこには黄色い扇風機が、相変わらず鎮座していた。小夜子は身震いしながら近づいていく。
「あの扇風機、まだここにあるんですね...」
小夜子は呟く。そして、扇風機の前に立った。何か言葉をかけるように、ゆっくりと手を伸ばした。
するとそこに、かつて夫婦が殺害された場所とそっくりの跡があった。小夜子は固唾を飲んで見つめる。そして、足元の血痕に目を落とした。
「まさか...また...」
小夜子は恐怖に怯えながら、その場から逃げ出した。
最終章
しばらくして、アパートには新しい管理人が赴任してきた。50代の男性、佐々木剛だ。
佐々木は、その黄色い扇風機に強い関心を抱いていた。何か不思議な力が秘められているような気がしていた。
ある夜、佐々木は一人で扇風機の前に立っていた。すると、不気味な音が響き渡る。佐々木は身構えたが、怯むことなく扇風機に近づいていった。
扇風機の前に立つと、そこには血の付着した刃物が置かれていた。佐々木は目を見開いて、それを手に取った。
「これは...」
佐々木の目が、徐々に狂気に染まっていく。そして、再び殺人が起きるのは時間の問題だった。
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