アイ・アム・ヒューマン

マツムシ サトシ

クリーチャー

 目の前には人型の化物が立っている。激しい鳴き声をこちらに向けた。


──ガァァァ!!ッッ!!


 俺にはこいつが何を伝えようとしているか理解できる。どうしてかはわからないが生き物クリーチャーの言葉……?というか意思というか感情というか、そういうものを感じることができるのだ。


 この能力を活かして色々な星系を巡り、生物を狩ったり捕まえたり保護したりして日銭を稼ぐ宇宙生物専門業なんぞをして生計を立てている。こんな仕事をしていると死地に飛び込むようなことも多い。


――グルルルル……


 長年一緒にいる俺の相棒、イー・フェン、というやつがいる。女だてらに戦闘能力に長けていて、頼りになるやつだ。こいつには何度も助けられてきた。特別優れた戦闘能力がない俺には必要不可欠な存在だ。


――ヴァアアアアァァァ!!!


 目の前の化け物が両腕を広げて、飛びかかってくる。


 さて、その頼りになるイー・フェンだが……目の前にいるこの化物がイー・フェンの破れた衣服を纏っていた。この化物がイー・フェン、だったのだろう。


「ぐぅっ……」


 化け物は俺の脇を掴み、大きく持ち上げる。

 本来なら死を覚悟する場面なのだろう。


 俺の顔をしっかりと見据えた後、俺の肩に頭を乗せ、化物は強く抱擁する。体は軋み、肺からひゅうっと空気が漏れる。


「痛えし苦しいぞ、バカ野郎……」


 生き物クリーチャーの意思が分かる俺は、殺されることはないだろうと理解していた。勢いあまって……ということはあるだろうが。


「フェン、お前だな。お前なんだな」


──クルルルル


 化け物は申し訳なさそうに俺を置いた。そして膝をつき、かがんだ姿勢のまま、小さくうなづいた。

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