第13話 再会
ほどなくして、レードが茶色い
彼の手にはセレスの服や装備など所持品一式をまとめたカゴが抱えられていた。
「浄化しておきましたよ」
カゴの取手を梟が器用に掴むと、セレスのもとまで運んだ。
「あ、ありがとう」
セレスは素直に受け取り、レードを睨みつける。
「後ろを向いて目を塞いでいなさい」
「レード。勇者様の言うとおりにしなさい」
梟の指示にレードは従った。
セレスが服を着ると、梟に促されて三人が向かい合った。
梟はセレスを見て微笑む。
「防具も武器も身につけないのですね」
「今は必要なさそうだから......」
「そうですか、フフフ。とにもかくにも若き勇者様が無事で何よりです」
「あの、幻惑の魔女エルフォレス、ですよね?」
セレスが梟へ
「ええ。そうですが」
「貴女が彼に、私を助けるように指示をしたというのは本当ですか?」
「そうですが、それが何か?」
「貴女の真意も目的もわからない。それでも、まずは感謝する。この度は助けていただきありがとうございます」
勇者は誠実に感謝の意を示した。
「フフ。真面目な
「ところで」
セレスの
「貴女、いえ、貴女たちは何者なんだ?」
一瞬、沈黙が生まれる。
梟は答えず、不意にぼそっと呟いた。
「やはり勇者様相手にこの姿ではやりづらいですね」
妖しげな光と共に、梟が美しき幻妖なる魔女の姿に変幻する。
いや、梟に変幻した魔女が元の姿に戻ったと言った方が正しいのか。
「さて、それではお話を始めましょうか」
魔女が
セレスは小さく頷く。
完全に相手を信用したわけではないが、少なくとも今は魔女と話がしたい。
「聞きたいことがたくさんある」
セレスは言った。
「正直、戸惑っている」
「そうでしょうね」
「まず最初の質問に戻るわ。貴女たちは何者なの?」
「ワタクシは魔女。その子は人間。そうではなくて?」
「今さら誤魔化さないで。エヴァ......いや、彼が言っていたとおり、かつての魔王の最高幹部で
「あら。天下の勇者様にちゃんと覚えていただいているようで光栄ですね。フフフ」
「私は古の四天王などまったく知らなかった。幻惑の魔女の存在も」
「すでに森の魔女として百年以上は暮らしてきていますからね。勇者といえど仕方がないでしょう」
ここで勇者セレスの眼つきが変わる。
「私は魔王を倒した。私のこの手で」
「それがどうしましたか?」
「私に対して何も思わないのか?」
「どうでしょう。ワタクシが魔王から離れたのはもう随分昔のことです」
「魔王に忠誠を誓っていたわけではないのか?」
「忠誠?ワタクシが彼に?」
魔女が奇妙に笑い出した。
セレスは不可解に思う。
「何がおかしいんだ」
「そもそもワタクシと彼はそんな関係ではないのですよ」
「ではどんな関係なんだ」
「そうですね。
そう答えた幻惑の魔女は妙に
そこへすかさず魔女が目を光らせる。
「ワタクシからも貴女に訊きたいことがあります」
「な、なに?」
「あなたを裏切った魔導師のことです」
セレスの顔が強張った。
「それは、誰のこと」
「貴女ももうわかっているのでしょう?あのエヴァンスとかいう魔導師のことですよ」
「そ、その前に、エヴァンスはどうなったの?」
「彼を含めた全ての人間たちは皆、
「そ、そうなのね。討伐軍が無事ならいいのだけれど......」
「いずれにしてもあのエヴァンスという男を捕らえることはできませんでした」
「おそらく、エヴァンスの魔法......」
「このワタクシでも足跡を掴むことすらできませんでした。勇者様を売るような大胆な真似をするだけの事はある。間違いなく只者ではないでしょう。だからこそ、ワタクシは彼について訊きたいのです」
セレスは目を伏せて押し黙った。
わかっている。
エヴァンスは何らかの目的のために、マイルスと共謀して私の命を奪おうとした。
いえ、もしかしたら、私を殺すこと自体が目的だったのかもしれない。
「エヴァンスは......」
勇者セレスは重々しく口をひらいた。
「賢者とまで言われた世界でも有数の魔導師で、私の知る限り魔法において彼の右に出る者はいない。エヴァンスなしで魔王征伐は成し得なかった」
「そうですか。では貴女は、いつどこでどのようにして彼と出会ったのですか?」
「それは......」と記憶を辿ろうとした瞬間。
突然、頭に激痛が走る。
「うっ......あああ!」
頭を抱えてうずくまった。
これは何なの?
痛みが邪魔をして思い出せない!
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