駅の待合室
待合室の一角で、二人の少女がのんびりと電車を待っている。明るい自然光が大きな窓から差し込み、柔らかな光が待合室を包み光輝している。少女たちは、白いクッションの付いたベンチに座り、窓の外には穏やかな景色があった。
藍夏(あいか)は、カジュアルな青いデニムジャケットを羽織り、黒いスカートに白いスニーカーを合わせている。彼女はバッグから本を取り出し、ページをめくりながらじっくりと読んでいる。時折、ページから目を上げて窓の外に目を向け、何かを考え込むような表情を見せる。
香黄(かき)は、ピンクのパーカーとジーンズを身に着けている。彼女は隣のベンチに座り、スマートフォンを操作しながら、時々笑顔を見せたり、驚いた表情を浮かべたりしている。香黄は時折、藍夏の方に目を向け、何か話しかけようとするが、またスマートフォンに戻る。
二人の少女の間には、何か大きな完成された情緒の補完があるように見えながらも、言葉に出さず、静かな雰囲気の中でそれぞれの時間を楽しんでいる。待合室の静かな空気の中で、時折流れる駅のアナウンスが、彼女たちの静かな時間にほんのりとした背景音を加えている。
待合室の一角で、二人がベンチに凭れていると、水瑞が現れる。彼女は淡い紫色のカーディガンと、フローラルパターンのスカートを身にまとい、軽やかなスニーカーを履いている。手には小さなリュックサックを提げている。
水瑞(みずい)は、待合室に入ると、少しあたりを見回しながら、友達の姿を探すように視線を巡らせる。目に留まったのは、藍夏と香黄が座っているベンチ。彼女は笑顔を浮かべながら近づき、無言で二人の隣に座る。
「やっと見つけた!」と水瑞が声をかけると、藍夏は本から目を離し、香黄がはスマートフォンの画面を一時的に閉じる。
「水瑞、遅かったね!」と香黄が言うと、水瑞はにっこりと微笑む。「ごめん、用事すませてたら時間がかかっちゃって。」
水瑞はリュックサックから小さな袋を取り出し、中から手作りのお菓子を取り出す。「これ、みんなで分けようと思って。」
藍夏が笑顔で「ありがとう、水瑞。なんだか嬉しい楽しい。」と言い、香黄も「それにしても、お菓子の匂いがいい感じだね。」と期待を込めた目でお菓子を見つめる。
水瑞が袋を開けると、甘い香りがふわりと立ち上り、三人の少女たちはお互いに笑顔を交わしながら、お菓子を分け合って手に取る。
水瑞が持ってきたお菓子を手に取りながら、香黄は少し興味深そうに尋ねる。
香黄「水瑞、これって自分で作ったの?」
水瑞は頷きながら答える。「うん、最近お菓子作りにハマってて。昨日の夜、家で焼いたんだ。ちょっとした実験みたいな感じでね。」
藍夏はひと口お菓子をかじり、驚いたような顔をする。「すごく美味しい!甘さも丁度いいし、しっとりしてる。私、こういうの大好き。」
水瑞は照れくさそうに笑いながら、「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいな。もっと練習して、いろんな種類を作れるようになりたいんだ。」
香黄もお菓子を口に入れ、目を細めて味わう。「私も好き。この食感が良いね。水瑞、次は何を作る予定なの?」
水瑞は少し考え込むようにしてから、顔を上げる。「次は…チーズケーキとかに挑戦してみたいな。でも、失敗しちゃうかも。」
香黄が笑いながら肩をすくめる。「失敗してもいいじゃん。美味しいかどうか試食するのが私たちの仕事だからね♡」
三人は声を合わせて笑い出す。待合室には彼女たちの笑い声が明るく響き渡り、その瞬間が他の乗客たちにも小さな幸せを運んでいるかのようだ。まるで、時間が青空に雲を浮かべるかのように感じられる。
しばらくして、水瑞は突然立ち上がり、「あ、ちょっと駅前の雑貨屋さんに寄りたいんだけど、二人とも一緒に行く?」と提案する。
藍夏と香黄は顔を見合わせて微笑み、「もちろん!それ面白そうだね。」と同意する。
三人は立ち上がり、待合室を後にして駅の出口に向かって歩き出す。彼女たちの後ろ姿には、夏の透明な青空が漂っているようだった。そして、外の明るい夏の日差しが、彼女たちを照らし出すように降り注いでいくのである。
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