7.いざ、魔物狩りへ
十数分歩いていると、受付所へと到着した。
他の校舎や施設とは独立していて、コンクリートで覆われた建物がポツンと立っている。
他の施設がしっかり装飾を施されていたので、少し質素な印象を受ける。
俺達四人はひとまず中へ入ることにした。
入り口の大きな扉を抜けると、主に二つのカウンターが見えた。
開式受付と終了兼換金受付だ。
人はまばらにおり、人数自体は少ない。
並ばずに手続きを受けられそうだ。
俺達は開式受付の方へと歩みを進めた。
カウンターの前へ行くと、受付をしている女性から話しかけられる。
「4名でよろしいですか?」
「はい。」
「ではそれぞれクラスと名前をこちらの紙へご記入ください。」
そう言われた俺達は、指示通り自身の情報を紙に記入した。
その後、詳しい説明を受ける。
やってはいけない禁止行為や、命の危険が迫った時の対処法など。
毎年多くの怪我人が出ているのもあって、かなり入念に説明された。
一番気になったのは、ランク制度だった。
狩りは、直径10キロもある学園の所有地にて行われ、30のエリアに分かれている。
それぞれ生息する魔物の生態系が違っており、ランクがI、II、Ⅲ、Ⅳ、Ⅴ、Ⅵ、Ⅶ、Ⅷ、Ⅸ、Ⅹというように10個に分かれて分類されている。Ⅰが一番低く、Ⅹが一番高い。
そして、この10階のランク付けは生徒にもされており、自身と同ランク、もしくは下のランクのエリアでしか、狩りを許可されていない。
格上の魔物に挑んで、死亡したり重症を負ったりしないように配慮されているのだ。
全ての説明を終えると、最後に受付係の方は一人一人にカードを渡してくる。
見ると、そこには俺たちの名前やクラス、年齢、そして《I》とランクが描かれていた。
「狩りを行う際、毎回こちらのカードの提出をお願いします。もし無い場合、狩りを行う事はできません。また、カードはオルエイ高等学園生徒である身分を証明する物になりますので、紛失が無いようご注意ください。では説明はこれにて終わりです。怪我のないよう気をつけて狩りを行ってください。」
そう言われると、おれ達4人は、軽く礼をしてその場を去った。
受付を出て、狩りのエリアへと入る。
説明の後、最初に口を開いたのはナルキだった。
「これからどうする?」
俺は返事した。
「俺達はランク《I》だから、行けるのはランク《I》のエリアだけって事だよな?」
ローズマリーが、受付で渡された地図を開いた。
そして指を指しながら言う。
「ランク《I》のエリアなら、行ける場所は4箇所だけですわ。エント沼、ヴァリー平原、サガント洞窟、赤の森…」
地図にはご丁寧に襲ってくる魔物や土地の特徴について書いてある。
エント沼は、大きなスライムや、カエル型の魔物が表れる泥沼地帯だ。足を地面に取られ、動きずらい土地らしい。
ヴァリー平原は、獣型の魔物が多く出現する平原で、動きやすい分、すぐに敵が襲ってくる。
サガント洞窟は地下の洞窟で、暗くて周囲を見ずらいのが特徴だ。ゾンビやスケルトンなどのアンデットと言われる幽霊系の魔物が多い。
赤の森は真っ赤に染まった赤色の森。基本山の中なので坂がきつく、戦闘は最もやりずらい。出現する魔物はヴァリー平原と変わらない。
「なんか、どこも大変そうだね。」
ナルキが呟くと、皆頷いた。
「一番良さそうなのはヴァリー平原だけど…」
「平原という事は、障害物もないという事ですわね。多くの魔物達が一斉に襲ってきますわ。」
魔物が多い平原は危険である。
それは万国共通の認識だ。
あたり周辺がパッと見渡せる平原は、基本食物連載の頂点に立つ魔物が頂上争いを繰り広げながら生息している。
故に人が踏み込むとひとたまりも無い。
エイリア理事長から聞いた話だが、オルエイでの魔物は、魔道具によって精製されているので、食を必要とせず食物連鎖が機能していないが、逆に魔物が互いを食さない分、数が多い。
平原となると、生成される魔物が次から次へと襲ってくるので、狩りの難易度は高いだろう。
「ヴァリー平原は様子を見てからの方が良さそうか?そしたら残るはエント沼、サガント洞窟、赤の森になるな。」
俺がそう言うと、ナルキが反応した。
「洞窟もなるべくやめた方が良いんじゃない? 光魔法を使える人はいる?」
彼の言葉には、誰も反応しなかった。
「使える人がいるなら別だけど、真っ暗な中戦うのは、危険だと思う。」
「確かにな。」
洞窟は昼間でも真っ暗だ。
光がなければ、前すら見えない状態で戦う羽目になる。
光源を買うなりすれば良い話なのだが、あいにくお金は無いし、何より身動きが取りづらくなる。
洞窟で魔物と戦闘するにはリスクが伴う。
そこまで行って、意見を言ったのは、ローズマリーと一緒にいた女の子、シアだった。
「ねえねえ、じゃあ勝負しない?」
「「「勝負?」」」
俺たち三人は反応する。
「そう、勝負。私とエスタ、ナルキ君とローズマリーで2-2で別れて、それぞれ別のエリアで勝負するの。たくさんお金を稼いだ方が勝ち!」
ナルキがニヤッと笑みを浮かべながら賛成する。
「面白そうだね。どうせやるなら罰ゲーム付きでしない?」
俺も頷く。
「いいぜ。楽しそうだ。」
皆が賛同しているのを見て、シアは嬉しそうにする。
「じゃあ罰ゲームは、今度のご飯奢りで。時間は5時までの3時間!」
「場所はどちらがどちらに行きますの? わたくし沼は汚れそうなので嫌ですわよ。」
「それならローズマリーちゃんとナルキ君は赤の森で。エスタ、いい?」
シアは確認するように眼差しを向けてくる。
俺は再度頷いた。
すると、彼女は安心するように微笑む。
勝負の内容を確認し終わると、シアは開幕の合図を言う。
「今から勝負開始ね。よーいドン!」
そうやってはしゃぐ彼女の姿はどこか子供っぽく可愛らしかった。
☆★☆★☆★☆★
勝負が始まると、ナルキローズマリーチームと、俺シアチームに別れて行動を開始した。
俺とシアは、エント沼へと向かって歩みを進める。
道中、俺はシアの事を観察していた。
白い髪に赤色の目。ローズマリーのようなこれといった強い個性は現状見受けられないが、周囲の目を引くほどの美人だ。
正直掴みどころが無い。
自己紹介の時は、口数も少なかったし、人物像が全くもってわからない。
「なあ、シア、で合ってるよな? 名前。」
「うん、そうだよ。」
「何でこの組み分けなんだ? 別に男チームと女チームに別れるのでも良かったんじゃないか?」
素朴な疑問をぶつけてみると、彼女は突如歩みを止めた。
そして振り向き、泣き始める。
「ごめんね、やっぱり嫌だった? そうだよね、私なんかと一緒にいたくないよね、ごめんね…」
ヤベッ。何か地雷踏んだ!?
「待て待て待て、別に嫌とは言ってない。ほら、何となく疑問に思っただけで。」
「死にます。」
「死ぬな。困る。」
俺が困って返答しているのを見ると、彼女はクスクスと笑い出した。
「なんちゃって、冗談。」
そう言われて、手のひらで転がされてた事に気付く。
「…趣味悪。」
俺がつぶやくと、彼女はべっと舌を出して、歩みを再開した。
俺は彼女の後ろを着いて行く。
歩きながら、彼女は話しだす。
「ローズマリーちゃんとナルキ君さ、知り合いって言ってたじゃん?」
「ああ、言ってたな。」
「実は、ローズマリーちゃん、入学式の時にチラチラとナルキ君の方見ていたんだよね。」
「あー、なるほど。ローズマリーがナルキの事を…。だからこのグループ分けか。」
「まぁ、それは建前何だけどね。」
「ん? 建前?」
そう言うと、彼女は再び立ち止まってまたこちらを見る。
そして次は俺の目を凝視する。
口を開いたと思ったら、次の瞬間とんでもない言葉が飛んできた。
「エスタ、私と結婚しない?」
「…は?」
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