第3話 レイド戦参加者揃う

 翌日、教室に向かう途中で、森雪友理奈さんが俺のことを心配そうに見つめているのに気がついた。彼女はクラス内カーストトップである春森新司のパーティーに参加している女子の一人だ。ヒーラーとしての役割を果たす彼女は、貴重な存在だが、実は春森の彼女によって無理やり引き込まれたのだ。


 いつも控えめで心優しい彼女が、どうして春森のパーティーにいるのか、俺には不思議だった。だが、その理由は明白だった。春森の彼女が彼女を強制的に参加させているのだ。表面上は仲良くしているように見えるが、実際は彼女がその場にいることに納得がいかない。もし断れば、春森やその取り巻きからのいじめが待っていることは目に見えている。男子よりも女子の方がその辺りの事情は陰湿だと聞いたことがある。


(俺もレイド戦なんて断りたいけど、もし断れば、ただのモブからいじめの対象になってしまうだろう。だから、断れなかったんだ・・・今はまだ能無しと揶揄される程度だから、悪化させたくない・・・)


 心の中で何度も自分にそう言い聞かせた。だが、その決断がどれほど愚かで危険なものなのか理解していないわけではなかったが、他に選択肢はなかった。


 この設定を小説に組み込む場合、以下のような形で表現すると良さそうです。説明をスムーズに読者に伝えつつ、ストーリーの流れを崩さないように心がけました。



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「ハンターになると、まず最初に自分の"能力倍率"が決まる。それは、その人が持つ元々の能力に対してかかる数字だ。倍率が高ければ高いほど、基本の力も強くなる。ただし、その倍率は一度決まると、特殊なドロップ品を使わない限り変わることはないんだ。」


 俺はふと、教科書に載っていたハンターランクの表を思い出した。


「Fランクは、最低で2倍。Eランクは4倍。Dランクになると8倍近く、Cランクで16倍。Bランクは32倍、Aランクで64倍…そして、Sランクは128倍。Sランクに到達する者は、人間離れした化け物のような存在だと言われている。」


 俺が思い浮かべるのは、自分の足元をはるかに超えるハンターたちの姿だった。


 そして、土曜日がやって来た。俺は野球のキャッチャーよろしくプロテクターを装着し、大きな登山用のリュックを背負っている。武装の方はアクリルの盾と金属バットを手にし、集合場所に向かった。


 集合場所に着くと、俺が姿を現した瞬間、周囲からひそひそとした話し声が聞こえてきた。案の定、春森は俺の装備を一目見て、馬鹿にしたように笑い声を上げた。


「おいおい、なんだその装備は?野球でもしに来たのか?」


 俺は内心の苛立ちを抑えながら無言で彼を睨無用に見つめるしかなかった。

 ジャケットの下には厚手の皮を仕込んでおり、さらに野球のキャッチャーのようなプロテクターを手足に装備しており、見た目は確かに初心者のようで、実戦向きではないかもしれない。だが、これが俺にできる精一杯だった。


 リーダーのおっさんも俺の装備を見て険しい顔をしていたが、春森がすかさず言い訳を口にした。


「すみません、こいつは親戚が急に亡くなって葬式で来れなくなったメンバーの代わりに急遽参加させることになりまして・・・断っていましたがこいつに荷物持ちをさせるんで、どうかご容赦を・・・」


 リーダーは渋々うなずき、俺に冷ややかな視線を送った。俺はその視線に耐えながら、黙ってその場に立ち尽くした。


 今日のレイド戦はダンジョンの最下層が目的地だ。

 任務は復活したボスを討伐するというもので5つのパーティーが参加する。


 リーダーを務めるのは、40歳ほどのベテランハンターのおっさんだ。自分のパーティーを一番隊とし、強さに応じて番号呼びとなる。ランクはBらしい。

 俺が臨時で加わった新司のパーティーは第四パーティーだ。いちいち名前を覚えるのも面倒だと、全員マジックで番号を書いていき、番号呼びするらしい。各パーティーは5人か6人で、四番隊は六人だ。俺には23番と四番隊最弱の番号を与えられた。


 レイド戦についての注意事項がリーダーから説明される。ダンジョン内での行動や連携、緊急時の対応について話が進むが、俺はその説明を聞きながらも、心の中で不安と焦りが増していくのを感じていた。


 説明が終わると、番号順にダンジョンに入っていく。ついに四番隊である俺たちのパーティーもダンジョンに入っていくことになった。ダンジョンの入り口をくぐると、冷たい空気が肌に触れ、不気味な暗闇が俺たちを包み込んだ。今までは、ただ小銭を得るためにちまちまと狩りをするだけだったダンジョンが、今日は全く違う場所に感じられる。これから待ち受ける戦いに、俺は無事に生き残れるのだろうか?


 俺はレイド戦なんて、少なくともボス部屋の中に入ることになるのは初めてで、不安が残る。だが、もう後戻りはできない。俺は手にしたバットを強く握りしめ、リュックの重さを感じながら、一歩ずつダンジョンの奥へと進んでいった。

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