帰れない 2

「くそっ。なんなんだよ」


 ふたりを乗せた車がやっと村を抜けようというところだったが、絶望的な光景を見た豊がそう吐き捨てる。


 村に来る時に通った丸太の看板が根本から倒れ、道を塞いでいるのだ。その横も倒木や奇妙な鉄の塊によって完全に塞がれている。


 翔と豊はまわりの安全を確認すると、その瓦礫の山の様子をヘッドライトと車に積んであった懐中電灯の灯りを頼りに探す。


 「父さん。これ車だよ」


 翔が鉄の塊の正体を見破った。


 原型は全く無いが、ところどころにミラーの痕跡や歪んだナンバーがこびりついている。


 来る時には何もなかったはずだ。


 「なんなんだよ。畜生」


 豊は瓦礫の山を乗り越える方法がないかと、懐中電灯で瓦礫を照らす。


 乗り越えられはしないかと豊は瓦礫の山に手をかけ、手に力を入れた。


 『やめておけ。この村からは出られない』


 「誰だ」


 豊と翔は周囲を見回す。


 すると、足元の倒木にひとつの藁人形があることに気付いた。


五寸釘に貫かれたその藁人形が豊を呼び止めたのだ。


 『私はこの村の村長だ。村の祟りによって魂がここに貼り付けられてしまった』


 藁人形には敵意はないようである。


 「そうか。でも、この村の祟りなんて知るか。先を急ぐ」


 豊はふたたび瓦礫の山に手をかけて登る。


 『待て。頼むから言うことを聞いてくれ』


 「知るか。お前の言うことは信用できない。この村はバケモノの住む村だ。」


 豊は瓦礫をさらに登ると、その目は塞がれた道の続きを捉えた。


 「ほら。この瓦礫を越えたら出られるじゃないか」


 豊は藁人形の方を向き、揶揄うようにそう吐いた。


 この瓦礫を越えたら帰れるという安堵の笑顔も浮かべる。


 「翔。登ってきなさい」


 不安そうに豊を見上げる翔はその瓦礫の山に近づく。


 豊は翔が近づくのを見ると、先に降りる道を確保しようと視線を瓦礫の奥へ戻した。





 ぶるるるうるっるるうう。

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