第13話
「え、どうして」
私は心配になって尋ねた。
「んー?どうしてだろうね」
お兄は曖昧に答えた。
「お兄…?」
私はお兄の表情を見て、胸が痛んだ。
その顔は、あまりにも切なくて、悲しげだった。
私の知らない間に何かあったんだろうか。
もうってことは一度は運命の人を見つけたってことだよね。
忘れられないぐらいの大きな失恋…。
「ごめん。なんかしんみりしちゃったね」
お兄が急に明るい声で言った。
「恋愛だけが全てじゃないから、お兄が幸せならそれでいいと思う」
私はお兄を励ますように言った。
お兄には仕事がある。生きがいは人それぞれなんだから。私がとやかく言うことじゃないよね。
「ありがとう。彩花も、幸せそうでよかったよ」
お兄の言葉に、私は微笑んだ。
幸せそうに見えててよかった。
「心配しなくても、湊さんは私なんかじゃ勿体ないくらい素敵な人だから」
私は湊さんのことを思い出しながら言った。
湊さんにふさわしい人になろうって、必死に努力しているけど…どれだけ頑張ってもまだ追いつけてない。
傍にいれるだけで幸せなことなのに。
「…出た」
「え?」
私は驚いて聞き返した。
「その私なんかって、自分を下に見るところが変わってない」
お兄が少し呆れたように言った。
「えへへ、つい癖で。湊さんにも同じこと言われたのに、」
もう口癖になっちゃってる。
そのせいで湊さんにはよく怒られる。
「そっか…。良かった。大事にされてるんだね」
お兄の言葉に、私は俯いた。
「そう、だよね」
前とは違う。
愛情表現もしっかりしてくれて、愛されてるって実感できる。
たとえその愛が…私にだけ注がれているんじゃないとしても。
わがまま言ったらだめ、だよね。
「彩花…?」
お兄が心配そうに尋ねた。
「ん?」
私はお兄の方を見た。
「どうかした?」
お兄が優しく聞いてきた。
「どうもしてないよ」
私は微笑んで答えた。
上手く笑顔を作れているだろうか。
「ねぇ彩花」
お兄が再び口を開いた。
「ん?」
私はお兄の言葉を待った。
「ドライブに付き合ってくれない?」
「ドライブ?いいけど」
急にどうして、
「行きたいとこある?」
行きたいとこか…
「うーん、どこでもいいよ。お兄が行きたいところに連れてって」
私は少し笑って答えた。
お兄と一緒なら、どこに行っても楽しいはずだ。
気分転換にもなるし、ちょうど良かった。
「じゃあ、ちょっと遠回りしようか」
「うん」
窓の外には広がる青い空と、どこまでも続く道が見えた。
景色がゆっくりと流れていくのを見ていると、少しずつ心が落ち着いてきた。
私の事が大嫌いだったはずの旦那様が記憶喪失になってから、私を溺愛するようになったのですがこれは本当に現実ですか!~Season2~ @hayama_25
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