第4話
まただ…。
「彩花、最近ご飯ちゃんと食べれてないみたいだけど、大丈夫?」
湊さんの声が優しく響く。
私は一瞬、心配そうな湊さんの顔を見て、胸が痛んだ。
「なんか、すぐお腹いっぱいになっちゃって、」
私は視線をそらしながら答えた。
食欲がなくて、ご飯も一口食べたらすぐにおなかいっぱいになる。
「そっか、気持ち悪くなったりしてない?」
湊さんはさらに心配そうに尋ねる。
「うん、」
私は小さく頷いた。
実際には、気分が悪くなることもあるけど、それを言うのが怖かった。
「熱は?」
湊さんは私の額に手を当てる。
そういうのではないと思うんだけど…
「熱は無いよ」
私は少し笑って答えた。
「長く続くようだったら、一緒に病院行こうね」
湊さんの言葉に、少しだけ安心した。
まだ、私の事も大切にしてくれているから。
「うん、ありがとう」
さっきも料理をしてる時に、匂いを嗅いだだけでうってなったけ、ど…。まさか、
いやいや、まさか…。そんなこと、
「彩花?大丈夫?」
湊さんの声が再び私を現実に引き戻す。
「大丈夫、」
私は微笑んで答えたけど、心の中では不安が渦巻いていた。
生理、いつから来てないっけ、
先月も先々月も…。
いや、まだそうと決まった訳じゃないんだし。
ただ遅れてる可能性だってあるわけだし、だから、
とりあえず、明日病院に行ってみよう。
夜はその事で頭がいっぱいで全然眠れなかった。
もちろん嬉しくないわけじゃない。
だけど、正直…この気持ちが何なのかよく分からない。
こんな頼りない私が、しっかり育てることなんてできるんだろうか。
湊さんはこのことを受け入れてくれるんだろうか。
もしかしたらこれを機に別れる…なんてことになったら、
いやいや、湊さんに限ってそんなこと…ない、よね。
次の日、さっそく産婦人科に行って検査を受けた。
お願い。
今はまだ…。
だけど、本当はなんとなく分かっていたのかもしれない。
私のお腹に…
「おめでとうございます。妊娠三ヶ月です」
医師の言葉が私の耳に響く。
「妊娠…」
私は呆然としたまま繰り返した。
その後先生から色々説明されたけど、頭が真っ白になって全く頭に残っていなかった。
診察室を出ると、外の空気が冷たく感じられた。
私はぼんやりと歩き出し、どうやって家に帰ったのかも覚えていない。
ただ、足が勝手に動いていた。
家に着くと、リビングのソファに倒れ込んだ。
心臓がドキドキと早鐘のように鳴っている。
湊さんにどうやって伝えればいいのか、頭の中で何度もシミュレーションしてみたけど、どれも上手くいく気がしなかった。
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