第2話 酔ったら負けよ

次に着いたのは明かりの着いてない何処かの豪華な書斎みたいな部屋に着いた。

周りは暗くて何が置いてあるのか分からなかったけど独特な紙の匂いとインクの匂いがあってここは『書斎』だと頭で理解したのだ。

「無闇に明かりを灯すことは出来なさそうだし…」

しかも誰の部屋なのか分からないので敵か味方かも分からないのでこの書類を置くか迷っていた。

それでどうしようかと迷っていた内に誰かが近づいてくる足音が聴こえてきた。

それで何処かに隠れようと思い、一先ずスキルを使用しベランダに出る程度の近い位置に飛んだ。

そしてそれは上手く行って少し肌寒い夜のベランダで中の様子を覗こうとして壁に体を近づいて目では見れないけれど物音や声を聞いていくことにした。



程なくして書斎に入ってきたのはここの主とも言える人物だった。

青色の髪をしたセミロングまで伸ばした男性だった。

片手にはランプを持っていて端正な顔立ちが良く見えた。

(あれは確か…水の使い手として有名な公爵だったはず…若くして戦果をあげたという…)

魔法としてもスキルとしてもさらにはその剣の使い手などもあげてすごく有名な公爵であった。

(確か…名前は…)

「ヴェローデ公爵です。お嬢さん?」

不意にこちらを見えてるかのように話しかけてきた。

(何を言ってるの?私のことは見えないはず…)

そう思ってるとスタスタと近づいてきて彼女がいるであろうベランダへ。

「僕はスキルで少し遠い所にいる人間の心の声を聞くことが出来るんだ」

(所謂読心術ってやつね)と思いながら壁から離れようとした時、窓にカーテンが掛かってることに気づいて更なる作戦に出た。

彼女は窓の前に出てこう言った。

「そんなヴェローデ公爵が家にいていいの?今日はパーティーがあったはずですが、行かなかったのですか?」

その言葉に公爵は彼女が何処かの貴族の令嬢であると推測した。

メイドや執事は一切情報は漏らさない契約になっているから、後は他の家の令嬢と考えたわけだ。

「さっきも言ったように僕のスキルは心を読むんだ。望みもしない心の声を聴いたってどうしようもないだろう」

どうやら、彼は自分の能力のせいで相手の求めているものに辟易していた。

「名誉と顔立ち、お金があれば欲しがるでしょうね」

その言葉に彼は不思議に思った。

彼のスキルを使っても彼女の声は両方同じものだった。

そしてその言葉の意味はまるで自分は関係ないに聞こえた。

彼の姿を知ってもだ。

「そして、」とリーフェは次の行動に出るであろう予言みたいなのを放った。

「そんなこと」

“あり得ない”と言おうとしたけど公爵は自分の心に薄々気づいていた。

(僕を“公爵”としても尚この強気…)

あながち彼女が言ってることは正しいかもしれないと思ってしまう自分がいた。

すると、公爵の目が闇に慣れてきたのか窓に掛かってるカーテン越しに映る黒い女性の影を見ることが出来たけど、一瞬でも良いから彼女の本当の姿を見たいと思ってる自分がいて少し驚いてしまった。

「そんなに私が気になるなら見つけてごらんなさい。その時、婚約してあげる」

その条件はあまりにも好機過ぎると思ったけど今知ってるのは彼女の特徴的な影の形と声だけだった。

だから、他にヒントがないか彼女から引き出すことにした。

「なら、姿見せてくれないか」って頼んでみたら彼女はその質問に対して返してくれなかったけど別のことを教えてくれた。

「貴方は正義を重んじる人間?」

その質問に彼は自分が所属しているであろう部署を教えてくれた。

「僕は皇室騎士団副団長を勤めてる。これでいいか?」

この反応を見てリーフェは彼の言葉は嘘はついてないだろうと考え、とっておきの物を置いておくことにした。

「なら、これを置いていくわ。どう扱うかは貴方が決めて?それじゃ!」と言ってからリーフェは自分のスキルを使ってテレポートした。


彼女の姿を見送ってから改めてカーテンを開いて窓を開けた。

結局ベランダには彼女の姿はなく代わりにあったのは何かの書類だった。

それは綺麗に丸められていて細いリボンで巻きつかれていた。

「何かの報告書か?」

そう言いながらそれを床から拾い、そして書斎に戻ってから机の上にあるランプに光を点けた。

そして、リボンを解いて書類を広げてみると何かの金額と顧客のリストだった。

(あの人が持ってきたとならばもしかしたら…)と考えながらリストに載っている人物について一人一人確認するため自分の持っている調査資料を漁ることにした。


リーフェは目的の貿易都市に行く前にまず中間にある村の入り口に着いた。

一気に飛んだら怪しまれると思ったからだ。

「今夜はここで一泊するか…」と言いながら村の中に入ろうとしたら見張りの人が立っていた。

そして、見張りの人は女性が一人で闇の中を歩いてるので少し怪しく見えたので話しかけてきた。

「君、こんな夜に何故出歩いてるんだ?」

「出発したのが遅かったの。それでこの時間に…」と最もらしい理由を吐いたら、見張りの人は彼女の着ている服と大きいスーツケースを見定めしてからそれが嘘ではないことが理解され「なら、通っても良い。ちなみに宿だったら十字路に出て左にあるからな」と許可を貰ってついでに宿の場所も教えてくれた。

それを聞いて彼女は満面な笑みを浮かべて「ありがとう!」とお礼を言ってそのままスーツケースを引きながら目的の宿屋まで歩いていった。

村の中を歩いてみてあちらこちらに明かりが灯ってる家があって、それが外灯の代わりになっていた。

それにどの家も木造住宅になってるけど、一発で壊れそうな家のようだった。

(建築の発達はそれぞれ違うのね…)

先程までいた自分の屋敷とさっきのヴェローデ公爵の屋敷もコンクリートで造られてるのか頑丈で出来ていそうだった。

(ここまで貧富の差があるのか…)と苦々しい表情をしながら歩いてると見張りが言っていた十字路に出た。

「確かここを左に…」とそちらの方に顔を向けていると一人の少年が宿屋らしい建物の前でうろうろしていた。

(どうしたんだ?あの子…)

見た目は短髪の茶髪で瞳は紫色、服装はホームレスにいるような服装ではないがかなり汚れている感じだった。

それで近づいて声をかけてみることにした。

「どうしたの?少年?」

そう問うと少年は肩を一瞬ビクッと震わせてから彼女の方に振り向いた。

すると、少年は何処か哀しそうな表情を浮かべていた。

「何かったの」ともう一度問うたら、彼は一度宿屋の方に振り向いた。

何かが怖くて一時的に喋れないのかそれとも先天性の何かの病気で話せないのか一度も声を発していなかった。

それから、宿屋に様子を外から探ろうとし時不意に中から女性の「やめて!」という嫌がる悲鳴が聞こえてきた。

それでリーフェはスーツケースを少年の所に置いておいて、その場から駆けていた。

宿屋の扉を突撃するように開けてみると、そこに映ったのは一人の客に酔っぱらい男が絡まれていた。

「良いじゃねえか…おじさんと遊ぼうよ~」

どうやら、既に興奮していて嫌らしいことを考えてる様子だった。

「やめてください!」

どうやら彼女はエプロンを身に付けていて、腕の中にはトレイを持っていた。その子はここの店主か店員のようだ。

どうやらここは宿屋兼飲み食い出来る食堂付きだった。

それで、リーフェは考える前に体が動いていた。

周りの客をお構いなしに目の前に酔っぱらいに向けて突進をかました。

その瞬間酔っぱらいは吹き飛び、横に倒れてしまった。

「大丈夫?」と言いながら店員を背中で庇いながら倒れてる男に睨んだ。

周りの客も突然の出来事に呆気にとられていた。

「酒を飲んでも酔ったら負けよ!」と言いながら指で銃の形を真似して倒れてる男の顔に向けた。

「ウォーターガン!」と唱えたら人差し指から水の玉を飛ばし、顔に命中した。

(生活魔法を極めたらこれだけは使えるようになったんだよね…)

かっこ良くそれっぽい魔法を唱えたけど本当はただの“ウォーター”という魔法なんだけどね。

そうすると、男は一度目覚めてからゆらゆらと立ち上がってそして彼は一度女性二人の方を見て舌打ちしてから「興が覚めたわ」と言ってお金も払わずトコトコと帰っていった。

そして、宿屋の中は一気に静かになってしまった。

それから、一人また一人とパチパチと拍手する人が増えてきた。

そしてついには大勢に拍手の活性を浴びていた。

「良くやったぞ。お嬢ちゃん!」とリーフェの事を褒める人間や「大した嬢ちゃんだぜ」と何かを認める人間が口々に騒いだ。

「貴方達も酒を飲んでも良いけど酔ったら負けよ!」と言ったら皆は自分の酒や飲み物が入ってるジョッキを持って高く掲げてこう言った。

「「あたぼうよ!!!!」」


それから、この小さな宿屋で大騒ぎになり周りから苦情があったのは言うまでもない。



続く


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公爵夫人は居酒屋の女将 アサルダ @asaruda

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