第12話 探していた居場所
「ーーどうしたその顔」
にばんさんに聞かれる。
「きのうはようちゅういのかたのおうちで、むすこさんにおこられてしまって」
「はあ!? 報告はあげたのか?」
「はい。ぼくはきのうのかたのいらいは、このさきうけられないことになりました」
「当然だろ。殴るなんて、眠り屋利用停止でもいいくらいだ。いい。次そいつの依頼は俺が行く」
ぶっきらぼうにそう言ってくれる彼はすごく格好良かった。乱暴だけど、僕の頭を撫でてぎこちなく笑ってくれる。
「あの」
「どうした?」
「のっく、おいてきてしまって。もしあのひとのおうちにいくなら」
「ちっ……わかったよ。とりかえしてきてやる」
「ありがとうございます。のっくはびひんをもらうところでくりーにんぐにだしてほしいです」
「あぁ、わざわざクリーニングしてんだ?」
「はい」
「じゃあ、クリーニング中は……ああ、そういうことか」
「はい。今日はこののっくと依頼に出掛けます」
クリーニング仕立てののっくは石鹸のいい匂いがする。僕はこの匂いが大好きだった。
「その前に、ちゃんと手当をしておけ。次の依頼人もびっくりするだろうが」
「そうですね、ありがとうございます」
困ったような顔で乱暴に湿布を張ってくれた彼の優しさを、僕は忘れたくないと思った。
そして数日が経って、僕は魔法のようにパソコンを使える彼の家に向かった。ちょうど依頼がきていて、僕を指名してくれていたから、会うのは簡単だった。
僕の初めて依頼人。冬馬くん。彼は僕の顔を見て、何かがわかったらしい。すぐに話を聞いてくれた。依頼人は冬馬くんなのに、なんだか変だなと笑った。
「これで君は自由になる。君に入っていた依頼はうまくずらしたよ」
「ありがとうございます」
僕が必死に覚えた漢字の話とそれをメモした紙を見て、彼はすぐに場所を調べてくれた。『戦谷紀央』。僕の母親についても調べてくれたけど、そこまでは載っていなかったらしい。でも居場所がわかるなら。それだけで十分だった。
「おい、待て」
お母さんに会いに行く日は目前まで迫ってきた。
ロビーを歩いていると、にばんさんが僕を呼び止めてくる。息をはあはあと切らしているから、走ってきたのだろう。
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