第七王子のずぼらなダンジョンレビュー

西園寺若葉

第1話 第七王子は逃げ出したい

-side エドワード-



「嫌だ!やりたくない」



 目の前には大量の花束。

 美しい花には棘があるとはよく言ったものだが、ほとんどは罠である。



「そ、そうおっしゃられても、エドワード様。沢山の縁談が届いておりますし……、少しだけでも見ていきませんか?」

「今日の書類仕事は終わっただろ?まだ、子どもなんだし、どーでもいいよ!そんなの!」

「あっ!ちょっ……!待ってくださーい!ゼェゼェ……、また逃げられた。本当に子どもなのかよ、あれ?見かけはどう考えても、やんちゃそうな金髪青眼の子どもなのに、頭の回転の速さと逃げ足は子どものそれではないんだが!?」



 側近はなんかぶつぶつ言っているが、面倒な事は全て逃げ出したい俺は転移魔法で王城の仕事場を後にした。



 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢



「るんるんる〜ん♪あんな風に来た縁談を受けたが最後、一生政治の道具なんだよね〜」



 彼女たちが俺のことを好きでもないけど、とりあえず縁談を送ってきているなんて事は兄上たちを見ていればわかる。

 王位につきたいとかいう野心があるんだったらともかく、俺は第七王子。

 せっかく、王位継承権が低いんだったら、相手も自分で選びたいし、自由気ままに生きたいものだ。

 とそんなことを考えながら、軽やかな足取りでお目当ての場所に向かう。



「ダンジョン探索ライセンスをお持ちの方はこちらへ〜!」



 ハワード王国--俺が住んでいる国の隣の国、トロール王国のメイビスダンジョン。

 いつもの通り、メモ帳を用意してダンジョン名と周りの様子を書き込む。書くのは、ざっと周りを見渡した環境の所感だ。



◯メイビスダンジョン◯

武器調達環境:⭐︎3.3

食料調達環境:⭐︎4.1

人の少なさ:⭐︎5.0

総合(ダンジョンの期待値):⭐︎2.3

備考:良くも悪くも普通のダンジョン。人の少なさから平均以下かなあという感じ。入る前の期待は低い。トロール王国の飯はうまいから、楽しみ。



 ⭐︎は5段階評価。何を評価基準にするかは毎回ズボら。

 ぶっちゃけ、その日の気分にもよる。

 今日は気分が良いから少しだけ基準が甘いのかもしてない。

 ちなみに、トロール王国はダンジョンが豊富な割に警備がザルなので、避難先として非常に重宝している。



「はーい!ん?ちょっと年齢確認していいかい?冒険者ギルドカードは……、Aランク!?失礼しました!」



 これもいつも通りだ。

 本来ダンジョンにはダンジョン探索ライセンスが取れる12歳からしか入ってはいけない。

 俺はまだ10歳なんだけど、冒険者ギルドのランクがCランクに上がった8歳の時、実力試験に合格して、ライセンスをゲットした。

 王族として、剣術と魔法は家庭教師から教わっていたから、同年代でもかなり出来る方であるという自覚はある。

 その証拠に、冒険者ランクはAランクだ。

 Dで一人前、Cで一流、Bで超一流と言われる中、Aランクになれたのは嬉しい。



 とそんな事はさておき、いよいよ早速ダンジョンに入る事にした。




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