【応募記録】第9回 今は亡きあの人へ伝えたい言葉
ゆずりは
おじいちゃんの車
「今日はね、古典の授業が面白かったの」「今日はね、小テストがあったの」そんなふうに毎日、高校の帰りに車の中で、ふたりきり。
今日の出来事を話すのが楽しかった。
高校の3年間、送り迎えをしてくれて、ありがとう。
古典という好きなことも見つけられたし、勉強に集中できて大学進学もできた。
大学入学と同時に家を離れてから、おじいちゃんの認知症とガンが進んでいくのに、帰らなくて、ごめんなさい。
おじいちゃんの病気が進んでいく中で、帰省したある日、父の車の助手席でおじいちゃんが「この道は、まだ覚えてるよ」といったのを聞いて、後の席で隠れて泣いた。
私のことを忘れて、分からなくなってしまうことが怖かった。
そんな姿も見たくなかった。
おじいちゃんが覚えていてくれた「一緒に行った動物園で、リュックの中はオムツがいっぱいだったこと」「車で出かけた帰り、外すら見えないくらい小さいのに、助手席で家に向かう曲がり角で泣き出したこと」を思い出す。
私の記憶には無いことを、覚えているみたいに。
これも凄いね、なんて、言ったら、今日はどんな話ができるかな。
高校の時みたいに、あっという間に家に着いちゃったってなるかな。
おじいちゃんの車に乗れる日まで、またね。
2024.05.31
【応募記録】第9回 今は亡きあの人へ伝えたい言葉 ゆずりは @yuzuriha-0102
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