なんちゃって鍛冶師に転生した俺は最強の刀を相棒に無双――出来なかったので無双して貰う事にした
椅子が欲しい人
第0話「追放」
「ガリス、お前は金輪際『ジェドリック』の名を名乗るな」
そう冷たく言い放たれた言葉に思わず胸が抉られる。
嫌、分かっていたことだ。
この家に居られるのは成人――つまり『授けの儀』を受けた13歳まで、そうしっかりと宣言されていた。
当然困る、元貴族――しかも追放された人間なんて厄介事の種だ。
誰かに気軽に助けを求めることも出来ないし、多分助けてくれる奴はドロドロの権力争いをしたい人間に違いない。
だからこそ、俺はこの授けの儀に掛けていた。
もし、ここで何かしら自分の価値を証明してくれるスキル、もしくは加護なんかが手に入れば……なんて話はもう虚しくなるから辞めるべきだ。
そう頭でわかっていても、不敬ながら神ファイナに文句を言いたい。
何? 『なんちゃって鍛冶』って、そこは普通に鍛冶で良いじゃん。
考えてみて欲しい。
見ず知らずの子供……いや、今日から俺は大人か。
とかそう言うのはどうでも良くて、突然「自分、『なんちゃって鍛冶』っていうスキル持ってます。弟子入りさせてください!」とか言ってきたらどう思う?
「なんちゃって鍛冶? てめぇ鍛冶師なめてんのか!」
うん、間違いなくダメに決まってる。
というか、良いスキル・もしくは加護を授かったら、と期待していたのは何も俺だけじゃない。
俺の今目の前でグダグダ文句を言い続ける元父上も、何だかんだ良いスキルを授かったら……と期待して俺を追放しなかったのだ。
なんせ俺、長男であるマイロ兄さんの1.5倍魔力あるし魔法操作も上手いからな! ドヤァ。
スキルを使うには魔力を使う、つまりどれだけ良いスキルを授かっても魔力が尽きたら意味が無い。
それに当然魔法だって、魔力が無いと打てない。
わかってるか? マイロ兄さん。
マイロ兄さんが事あるごとに自慢してくる水属性魔法だって魔力が無いと使えないんだよ?
それに俺はマイロ兄さんと違って火と土が使えるダブルキャスター。
――俺は、兄さんより凄いよ?
ねえ、だから……やめてよ。
俺だって、ちゃんとジェドリック家として――
思わず、そんな弱音が漏れる。
只、現実は無情だ。
知っている、どうせ言ったって何にもならない。
なんせ今も父、ではなく元父はグダグダと文句を言い続けているし、
元母なんか自分の子供と認めたくないのかこの場に顔すら出していない。
最低限の家族の情すら、俺達には存在しないのだ。
それが分かっている俺は、ただ静かに元父の文句を聞き続ける。
「だいたいお前は~~」、「そもそもの話~~」、「お前も少しは兄を見習って~~」。
こんな言いがかりで理不尽みたいな説教も、今日で終わりだ。
俺だって何もしなかった訳じゃ無い。
散々言葉は尽くした。
自分は魔力が多い、魔法だって他の子どもより上手く使える、頭だって天才って訳じゃ無いけど頑張ってる、学園の成績だって……、でもダメだった。
どれだけ言葉や結果を並べても、水魔法が使えない。
たったそれだけの理由で、俺は認められなかった。
……嫌、分かってる。だってほら、俺学園の成績は良かったから。
貴族にとって、一番大事なのはイメージだ。
貴族は偉いから偉い。
偉いと思われているから平民から税が受け取れる。
凄いと恐れられているから、長く国に貢献してきたと思われているから、自分たちは貴族でいられるのだ。
そして、このジェドリック家は『水魔法』で貴族の地位を築いた家。
皮肉な話だ。
学園で必死に勉強すればする程、何故自分が追放されるのか、その理由がはっきりと分かる。
だから、案外言葉はスッと出て来た。
というより、今更父親に懇願する言葉なんて何もなかった。
――そんな物は、等の昔に言い尽くしたから。
ジクジクと痛む胸、ぼやけそうになる視界、震えそうな声、その全てを無視してせめて最後は、最後だけは貴族らしく、ガリス・ジェドリックとして、言葉を放つ。
「これまで私を養い育てていただいたこと、誠に感謝しております。約束に従い、ガリス・ジェドリックはこれより隣国ノストにて精励致しますことを、ここにお誓い申し上げます。」
最初で最後、ジェドリック家の一員としてガリスはそう宣言した。
――――――――――――
タイトル回収まで、後数話お付き合いください。
作品を読んで頂き、ありがとうございます。
毎日更新を目指して頑張って行こうとは思っているのですが……なんせ思い付きで突然筆を執ったもので一切ストックは有りません。
ブックマークをして待って頂けると助かります。
そして、正直に言う。
私は評価が欲しい! コメントが欲しい!! モチベが欲しい!!!
なのでどうか、よろしくお願いします。
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