第3話 面倒

 朝、俺はゆっくりと学校に向かっている。周りを見ると、カップルがイチャコラしてたり、数人で話しながら登校してたり、ひとりぼっちの俺には辛い。

 学校に着き、教室に入ると数人がこっちを見てくる。

 そりゃほとんど学校にこないやつが二日も連続で来たらビックリするわな。

 面倒くさいので無視して席に座り、本を読む。そうして時間を潰していると、クラスがざわついてくる。


「おはよう」


 クラスの、いや学年の、いや学校のマドンナである白崎雪乃さんである。成績優秀で美人、さらには優しいということで学校の皆んなから人気らしい。……俺、よく学校来ないから知らんけど


「おはよう雪乃っち!」


 そう言って彼女に突撃するのは見るからに陽キャの椎名寧々さん


「おはよう寧々ちゃん」


 優しい声がクラスに響く。


「ねえねえ、最近の調子はどう?」

「絶好調よ。ダンジョン配信でも特に危険な目には会ってないし、登録者もだんだん増えてるし」


 どうやら彼女はダンジョンで配信をしている配信者、いわゆるダンジョンライバーというやつらしい。

ダンジョンはファンタジー要素が多く、ダンジョンの配信は現在の社会で需要が高いそうだ。しかし、ダンジョン配信者に憧れて資格を得るも、配信することに夢中になって、注意が疎かになり命を落とす人も少なくないらしい。


「なあなあ、俺もその配信に混ぜてくれよ」


 そう言って彼女達の会話に割り込むのは、見るからにヤンキーっぽい……誰だっけ?


「ごめんなさい岩本くん、事務所のルールで勝手に他の人と配信するのは無理なの」


 そういやそんな名前だったわ。なんか良い噂聞かないしいつも騒ぐし苦手何だよな。そして岩本の誘いを華麗に受け流す白崎さん。


「じゃあオフで一緒にダンジョン行かねぇ?」

「それもごめんね」


 岩本めっちゃしつこく話しかけるやん、白崎さんもストレートに拒否してるし。


「いやいや、俺みたいに高校生でCランクまで上がってる奴なんてそうそういないぜ」

「そうなんだ。私もCランクだけど、高校生でCランクなんて滅多にいないし強いんだね」


 まだ懲りずに誘ってるよ岩本、でも高校生でCってすげーな。

 探索者は国家資格を受けて受かったものがなれるようになっており、現在は中学生から資格に挑んでダンジョンに入れるようにはなっている。昔はそんな資格など要らなかったが、ダンジョンに気軽に入って命を落とす者があまりにも多くいたため、現在は資格がないとダンジョンに挑めないようになっている。また、探索者にもランク制度があり、S〜Eランクで表される。ちなみにEやDがいわゆる初心者、C、Bが中堅で、Aが玄人、プロであり、Sに関しては人外と呼ばれている。

 Cランクの探索者は中堅くらいでいい大人ばっか。高校生でそのレベルとなると二人ともそこそこ強いな。


「はいそこ席に座る! まったく最近の若者は元気だねぇ」


 まだまだ会話は続きそうだったが担任の佐藤先生が出席確認をすると言って会話が終わる。

 てか佐藤先生、あなたまだ二十代ですよ。




 さて、今日の全ての授業が終わったぜ!

 途中でボッチ飯を挟んだが、別に何とも思わんよ……会話相手欲しいな。

 まあそんなことは置いといてさっさと帰ろう。

いつも騒ぐ岩本は仲間たちとダンジョンに行くって騒いですぐ帰っていったし。


「ねぇ」


 そんなことを考えていると後ろの人が誰かに声をかけている。


「ねぇ」


 さっさと反応してあげればいいものを、無視は流石に可哀想だと思うぞ。


「ねぇってば!」


 そう言って俺の頭を優しく叩いてくる。

 ……え、俺だったんですか?


 何だと思って後ろを振り返ると、白崎さんがいる。……貴方後ろの席だったんですね


「一体何ですか?」

「私のカメラマンにならない?」


 何だこいつ。話して早々にカメラマンにならないだと?

 てか声でかすぎんだよ。クラスメイトたち驚きすぎてこっち見たまま棒立ちだぞ。


「急すぎるし、とりあえず場所変えねえか?」

「そうだね。近くのカフェでいい?」


 すると彼女はすぐに頷き、身支度を始めた。


「何で俺なんだよ」


 現在、俺は近くの喫茶店に入り雪乃さんに疑問を投げかけていた。


「昨日、君をダンジョンで見かたんだよ。あの階層を一人ってことはDランク以上の強さはあるでしょ?」

「だからって別に俺じゃなくてもいいじゃん」


 本当に俺じゃなくてもいいはずだ。


「私だって本当は同性の人にやって欲しかったんだけどさ、女性の探索者で私と同じくらいの強さの人って大抵が友人とチームを組んでダンジョンに挑んでる人でソロって少ないの」

「それで?」

「そもそも、女性のソロ探索者って極力危険があることをしないからさ、いたとしてもEランクの人で副業をしてる人とか趣味の人がほとんどで、中層をメインの活動範囲にしてる女性ソロ探索者は滅多にいなくて、いても戦闘狂でカメラマンには向いていないし、だったら同年代の知ってる男子だったら大丈夫かなって」

「だったら俺じゃなくて岩本とかいるじゃん」


 俺のランクを予想していたようだが、その予想よりもランクが高い奴がいるじゃん。


「岩本くんはさ、ちょっとしつこくて苦手何だよね。なんかめんどくさいし。」


 ドンマイ岩本(笑)


「それに比べたら湊くんはミステリアスだけどいいかなって」

「俺ってミステリアスなの?」

「逆にほとんど学校に来なくて、理由もはっきりしてないのにミステリアスじゃないの?」


 確かに傍から見たらミステリアスだわ俺


「でも俺にカメラマンをさせようにも、事務所の許可が必要なんじゃないのか?」

「ああ、実は私の事務所って、配信者本人が許可を出せば、カメラマンは簡単な面接で受かるんだよね」

「え? でも岩本には事務所を理由に断ってたじゃん」

「だって岩本くんしつこいし」

 

 本当にドンマイ岩本


「それにカメラマンとして雇う訳だから給料は出るよ。それに私って結構有名なんだよ?」

「まあ、給料に関してはどうでもいいけど」

「そうなの? じゃあ今度事務所に来て面接受けてもらうね。それで受かったらパーティーを組んでダンジョン行こう」

「待ってくれ、パーティーを組むのか?」

「一応は一緒にダンジョンに潜る訳だからね」


 どうする? パーティーを組む?いや、俺はソロでやるって決めてんだ。カメラマンの話にのったのはあくまで気分だ。別に俺がダンジョンを攻略する訳じゃないと思っていたからだ。

 でも違う、パーティーってのは一心同体。仲間として行動する訳だ。俺みたいなが組んでいいものじゃない。

 さっさと拒否しようと思い、


「まあ、了解した」


 自分の口から発せられた言葉に、俺は心底動揺した。

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俺はもう一度、ダンジョンの先に進む 〜活動を復帰しようと思います〜 矢見山空御 @gekkou261

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