端役して。
@rui-hanada
第1話 プロローグ
高校生は特別な時期だ。主人公になりたい。主人公になりたかった。誰もが一回は聞いたことがあるセリフ。なんならいまもどこかの誰かが思っている。言っている。そんな思考そのものがモブキャラの象徴なのかもしれない。高校時代の私はそんなことを漠然と考えていた。ひねくれていると言われればそれまでなのだろう。しかしこの「ひねくれている私」が私にとっての淡い青春時代そのものだったのである。高校時代の思い出はかつて憧れた青春映画のようにみずみずしく残ってはくれない。大人と子供の間でゆっくり自分のかたちが変わっていくのを肌で感じる。やがてそれはこころにこびりつく経験になる。いろいろな意味で。中学時代と比べ、広がった世界の中で主役になんてなれないことを言葉にせずとも感じるのだ。そこに顔を出すのは絶望か、はたまた「なにくそ」と思うハングリー精神なのか人それぞれなのだろう。おそらくこれからの人生で何度もこのこびりつきを思い出すのだろう。しかし、こびりつきは厄介ではあるが悪役ではない。本当は一番おいしい部分でもあるのだ。うれしいとき、悲しいとき、楽しいとき、つらいときどんな時でも真っ先に高校時代を思い出す。そのくらい濃くてかけがえのないものにはなる。たとえ主人公にはなれなくても。だったらもう全部ひっくるめて味わい尽くせばいいじゃないか。
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