第2話 右耳かき
耳かきスタート
「う~ん、ふむふむ」
「この前耳かきしたのにまた汚れてるね。流石助手君。こんな短期間でここまで耳垢を溜めるなんて(ウットリ)、やっぱり私と耳かき研究する為にハローワークから来てくれただけのことはあるよ」
「それで薬の効果はどうかな?そろそろ耳の奥があたたかくなって、じわじわと快楽の波が・・・・・・」
「えっ!? ない? あれ? あれ? そろそろ効き始めてもいいのに・・・・・・おかしいな? 薬の配分間違えたっけ?」
「(う〜ん、コウモリのエキスが少なかったかな?それとも、フグの肝が腐ってて・・・・・・)」小声
「何が原因なんだろ?」
「ま〜、色んな薬を試しすぎて助手君の体に耐性がついたという線もあるからもう少し待とうか」気楽に考えてる
【間】
「そろそろかな?・・・・・・まだか」
【間】
「どうかな?・・・・・・まだなの〜」
【間】
「そういえばさ、助手君の耳垢多くない?」
「さっきから何度も掻き出してるはずなのに減らないんだけど・・・・・・」
【間】
「あれ? あれ~~? いやっ、でも・・・・・・う~ん・・・・・・」不安が募る
【間】
「お、おかしい。やっぱりおかしい! 助手君の耳がなんか変なんだ。さっきから耳垢が耳の奥から溢れ出てくる。少しでも耳かきの手を緩めたら助手君の耳が耳垢で埋まりそう」
「へ? 薬のせい?いやいや、アレは耳かきの快楽を数百倍にする物で耳垢を作る薬じゃないから、効果が出るのはこれから。これからだから!」
「耳垢がたくさん出てくるのは・・・・・・あれだよ。ほら、アレ。じょ、助手君が耳かき研究の助手として覚醒したから・・・・・・だ・・・・・・よ・・・・・・アハ、アハハハ・・・・・・」力無く笑う
「そ、そんなに睨まなくてもいいと思うな〜。耳かきされてるときに睨むと目玉だけギョロっと動いて怖いよ」
「…………ん、んん」追い詰められて困る
「はい、認めます。認めます。うん、これはボクが作った薬のせいだね。それにしてもこれは異常事態だよ。とりあえず耳かきしながら原因を探ろう。とりあえず」
【短い間】
「コンピュータ。薬のデータを表示して」
SE:画面にデータが表示される系の電子音
「う〜ん、一体どこで間違えたんだろ? 材料表、制作過程、この部屋の温度、湿度、あとは・・・・・・汚染レベルとか?」
「放射線をまき散らすようなものは使ってないんだけど、念のためね、念のため・・・・・・むむむ」
「(やっぱり研究費をケチって庭にいたトカゲの尻尾を使ったのがいけなかったのか……でも、コモドドラゴンは輸入費とかで結構高かったし……)」小声
「それとも……」
「(いや、山で採ってきたクサウラベニタケが実はただのシメジだった可能性も……キノコって見分けるの大変だからなぁ……)」小声
「あ~、ダメだ。ダメだ。考えだしたらキリが無い。コンピュータ、全部調べといて」
SE:決定音
「これでそのうち分かるでしょ」
【間】
「にしてもまったく別の薬が完成したから助手君の体はどうなることやら……というかこれ、ちゃんと薬の効果は切れるのかな? (このまま耳垢が止まらなければ助手君の体は全部垢に……)」
「ん?何々?助手君どうしたの?ああ、急に黙ったから気になった? ごめん、ごめん少し考え事を・・・・・・ 全部口に出てた? ほんとに? あ、えーとね、違うよ。薬の効果はちゃんと……」
「(いや、でも研究者として憶測でものを言うのは……)」
【可愛い咳払い】
「大丈夫、ちゃんと効果は切れるはずだよ……(し、知らんけど)」タジタジ
【気まずい間】
「あっ! そうそう、当たり前だけど、反対の耳も耳垢が作られてるよね。そろそろ、そっちの耳垢が溢れる寸前だと思うんだ」
「だから、右耳を早く終わらせ・・・・・・助手君、その呆れたような目はやめてよ。心にグサッと来る」
「徹夜したから頭が回ってないんだ。ボクだって、頑張って作った薬がこんな結果になって悲しいんだよ」
「それに、少々強引に話題を逸らしたけど左耳が心配なのも本当だから、ちょっと急ごう。一気に奥まで入れるから痛かったら言ってね」
「慎重に、慎重に・・・・・・でも、早く」
【間】
「それにしてもこれは凄いね。耳の奥だと耳垢の増え方よくわかるよ。こう、ずももっ!って感じ、植物の成長動画を早回しで見てるみたい」
「ほんとに変なお薬作っちゃったな~。あっはっは・・・・・・はい、笑い事じゃないよね。だから、睨まないでって。じゃあ、もう少し、取ったら反対やろっか」
【間】
「よし、とりあえず一区切りかな。まだまだ、右も耳垢が増え続けてるから時間稼ぎだけど、その間に左耳をできる限り綺麗にしてそれが終わったら、また右耳をやろう。これを薬の効果切れまで繰り返す。うん、完璧な計画」
「さあ、助手君。こんどは左耳を上に向けて」
SE:布の擦れる音
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