君と、○○と、現実の狭間で。
苺の子
その子。
その子は、不思議な雰囲気を纏っていた。
「あ"ー疲れたー」
やっと終わった、今週。いつものことながら机に突っ伏す。
金曜日、今週最後の授業が終わった。
ふと、左隣の席を見ると、その子は黙々と帰る準備をしていた。
♦︎♢♦︎
「外国のお人形さんみたいな転校生」
その子への私の印象だ。
ライトブラウンのまっすぐなロングヘアが印象的で、姿勢も崩れているところを見たことがない。物静かだけど話すと透き通った声でふわふわと話す。
クラスには馴染めているみたいだけど、私はその子とはすごく仲が良いわけでも悪いわけでもない。
ただ、帰り道が同じ。私の家からもっと進むとその子の家。同じ時間に学校を出ると、たまに話しかけるくらい。
♦︎♢♦︎
その日はすごく疲れていて、帰り道に誰かと話す気分ではなかった。友達の誘いをそれとなく断って、1人で帰っていた。
その子は私の前の方を歩いていた。
なんとなーく、ぼんやりとその子を視界に入れていつもの道を歩いていた。
夕暮れの、閑静な住宅街。
その子は突然立ち止まると右手を空に向かって伸ばした。一瞬、その空間に大きな水たまりのような物が見えた気がした。
『ヒュンッ』
その瞬間、風を切るような音と共に、その子は消えた。
♦︎♢♦︎
びっくりしてあの時は立ち尽くしていた。
けど、見間違いかもしれない。
無心で歩いていたし。
そう思ってあまり気にしないようにしていたけど、その子が前を歩いている時はなんとなく注目していた。
...でもやっぱり見間違いでは無さそうだ。
3回に1回くらい、同じ時間、同じ場所、あの住宅街の途中でその子はあの音と共に消えた。
それから、とても気になって、その子ともっともっと.......おこがましいかもしれないけれど、仲良くなりたい、知ってみたいと思って、なんとなく話してみたり、その子がたまに1人で移動教室している時に話しかけに行ったりしてみた。
「次は体育か〜」
「..たしか...ソフトボールって先生言ってたよね?...」
「ソフトボールか〜私暴投しちゃうんだよな〜」
「..私も...上手くはないけど...まあ楽しくやって...、この後のお昼ご飯を楽しみにしようよ!...」
そう言ってその子は微笑む。
見た目の通りと言っていいのか、その子はゆっくりのんびり話す人だった。
「明日小テストだ〜勉強した〜?」
「....少しだけ...帰ったら...ちゃんとやらないと...」
「私やってない..偉いな〜」
「小テスト終わったら...その後帰るだけだから...それを糧にしよう! ....」
どんな時でも、その後の楽しみを大切にする人だった。
そうして、だんだんと一緒にいる時間が長くなっていった。
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