【始まり編】1話

「タンタ~!!」

 その声は一面黄金色で広がっている小麦畑へと発せられた。そこには、少年が小麦を刈っていた。髪は短髪であり、日に焼け明るい茶色になっており、灰色の目を持っている。体付きはまだまだ幼いが、それなりに力はついていそうだった。

 頭にはベレー帽をかぶり、上はチュニック、下は長い布ズボン、腰にベルトを着けていた。足は靴下をはいておらず、直で布の靴を履いていた。

「!!どうしたの、パパ?」


 少年は声が聞こえた方に顔を向けた。男がそこに立っていた。短髪で、髪は少年と同じ明るい茶色、黒いがどこか希望を持っているような目だ。体付きはがっちりしており、一筋縄な攻撃では彼自身を転ばすことすらできなさそうだ。

 服装は少年タンタと同じく上はチュニック、下は長い布ズボン、腰にベルトを着けていた。足は靴下をはいておらず、直で布の靴を履いていた。違う点としては帽子の類を着けていないことだけだろう。


「そろそろ昼の時間になるから、区切りつけて家に戻ろう!」

 少年タンタはソラを見上げた。サンサンと自分たちを照らし続けている太陽フレイが天の真ん中に来ようとしていた。

「わ!?もう、そんな時間がたっていたの!?気づかなかった!」

「それぐらい、集中して小麦を刈っていたんだろ?褒められたものじゃねーか!」

 男はそう言い豪快に笑った。

「ほらほら!切りのいいところまで終わらせて、ママのおいしいお昼ご飯を食べようぜ!パパも手伝うからよ!」

「うん!」


 そして、少年タンタとその父親は区切りの良い所まで小麦を刈り、家路に着いたのだった。

 季節は初夏。少年の足元にできている大きな影は不気味にも、そして何か伝えようとゆらゆら揺れていた。

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